決心
護衛の難易度は変化しやすい。問題なければ平和で終わり、問題があれば対応して解決する。対応は人によって違うだろうが、下手をすれば解決できない。
山道の先に三人の人影。いずれも武装し、こちらに気づいているようだ。敵と判断するには早いが、警戒しなくてはならないだろう。
「ミサナギ。警戒しろ、油断するな」
「はいッ」
油断とは想定していないこと。これをしていない者は、上手く対応できない。戦闘は先に攻撃した者が有利、これは先手必勝の考え方だ。
「…………」
怖れずに歩みを止めること無く、相手に近付いて会釈。相手も会釈を返し、無事に通りすぎて安堵する。
「……ラガクさん。知り合いですか?」
「知らないな」
彼女は不思議そうにラガクを見ていたが、周囲を警戒しながら進んで行く。行商人も背後を振り返り、通りすぎる三人もこちらを見ていた。
目的地の町に到着して行商人から報酬を受け取り、そこで行商人とは別れる。報酬は山分けにし、ミサナギに伝えなければならない。
「勝負しろ」
「え……どうしてですか?」
「バトルしたいからだ」
「そんな理由で……」
「不満か? なら、どうして俺を強いと思ったんだ?」
「それは……」
彼女には申し訳ないと感じる。戦闘できるように誘導し、自身の目的を叶えようとしていることに。
「格好や姿、見た目か? それとも戦闘技術か?」
動揺に戸惑い、そんな彼女を見ていると心が痛む。それでも、戦闘したいのだ。いや、既に戦闘は始まっている。
「…………」
「何も言えないか?」
これは言い合いだ。話術に優れる者は戦闘で有利であり、相手を牽制し、追い詰め、士気を混乱させる。隙をつくることもできれば、戦闘を回避することも可能だ。
「どうして……」
彼女の瞳は自身と同じく、潤んできていた。自身は好きな人を泣かせている。なんて、酷い奴でクソ野郎なんだ。
「……好きだからだ」
嫌われるだろう、それでも彼女とは戦わなければならない。強くなる為に、彼女の為に、自身の為に。
「武器を構えろ」
右腰にある刀剣を抜き、肩より上に両手で構えた。ミサナギは羽織を脱ぎ、襷を掛け直してこちら睨む。
「武器を持つ者は戦わなければならない」
武器は戦う為の道具であり、人を強くしてくれる。だが、武器を持つ者は覚悟しなくてはならない。決意しなくてはならない。意志を懐かなければならない。
「ミサナギ。志はあるか?」
自身は鋼志を決意し、背負い、自負する者。彼女が信じるのなら、その期待に応えて強くなければならない。




