表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/6

その2

「これに、お前の声を録音してくれ!」と、私は言った。

「これ、何?」と、妻が言った。

「説明しても、お前には分からない」

 私はいら立って言った。私は無駄な時間を過ごす余裕などない。それも、これもこの愚かな妻のためだ。「お前は、お前の声を録音してくれればいいのだ・・・!」


 私は、企業や大学、研究所等の組織に属さず、個人で発明活動を行っている「個人発明家」だ。

 特許を利用して収入を得る方法としては、主として、特許を使った製品を自分で生産・販売する方法(自己実施)と、他者に特許を実施させてライセンス料を得る方法とがある。個人発明家は、通常、生産設備を持っていないので、ライセンスによって収入を得る場合が多く、私もそうである。(*)


「分かったわ・・・」と、妻が言った。

 一瞬、妻の顔が歪んだような気がした。それに、妻の体が、いつの間にか引き締まったような気がした。

 でも、私はそれを否定した。

 そんな事はあり得ない。 妻は私の言いなりにするしか生きて行けない愚かな女で、本人も充分それを理解しているはずだ・・・。


「これ、どうすればいいの?」妻は、私の最高傑作“愛のドップラー効果測定器”を手にしたまま、まごついていた。

 本当に愚かな女だ!

 私は肩をすくめ、妻の手から“愛のドップラー効果測定器”から取り上げ、録音ボタンを押してから、手近にあった新聞記事を示した。


 妻が新聞記事を読み終えると、私は“愛のドップラー効果測定器”を取り上げ、録音停止ボタンを押し、その後詳細を設定をした。


 “愛のドップラー効果測定器”のディスプレーには、

“対象1および対象2の声紋を記録し、詳細設定が終了しました。

 測定開始:1 一時中断:2”と表示されていた。

 私は「1」を押した。

 ディスプレーに“システムが始動しました!”と表示され、五秒後に“システム作動中”と表示された。


 私はそれを確認して、“愛のドップラー効果測定器”を何時も持ち歩いているバック(財布や免許証、携帯電話や思いついたアイデアを書きとめるメモを入れておく)に放り込んだ。


 そして、私は迂闊にもこの作動状態の“愛のドップラー効果測定器”の事を忘れてしまった・・・。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ