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零ノ八 俺×夢=ただいま迷走中


 投稿が遅れてしまいました。伝助です。


 この話しは前回の翌日にあたります。



 それではどうぞ~






 またあの夢の中。


 夢の中の俺はいつも同じ行動をとる。


 何も考えずに足を動かし、


 何も感じずに手を伸ばし、


 何も変わらずに夢の終わりを迎える。


 でも、その時は違った。


 どこか反抗心にも似た感情を覚えた俺は、


 成長する大樹を前にしても、


 実る果実を確認しても、


 何のモーションも起こさなかった。


 しばらく樹を眺めていた俺は声をかけられた。


 何故?、と。


 俺は声の主を知るため振り向いた。


 いつもそこで終わる夢。


 けれど今回のは例外のようで、


 相手の顔を確認することができた。


 相手の顔をはっきり見れた俺に驚きはない。


 その人はある意味――俺に一番近い人だったから。


 その人は俺に向かって手を伸ばす。


 俺も手を伸ばして二人の手を合わせる。


 俺の手はとても小さかった。




「おはよう、兄さん。今日はずいぶんとギリギリな時間に起きたね」


 起床してから顔を洗い、リビングに向かうと食パンをかじっていた(こよみ)と遭遇した。


「おう、おはよう。悪いな、今日は朝飯を作ってやれなくて」

「別に大丈夫だよ」

「そうか。ならなんで俺の視界が捕らえているフライパンは真っ黒なんだ? まるで炭化したかのように暗黒色なんだが」

「た、たまにはフライパンも燃え上がる恋がしたいって言うから、私は恋する乙女として助力しただけなんだよ」

「なにも身を焦がすほどのアドバイスしなくてもいいだろうよ。てか本当になんでフライパンがあんなに焦げんだよ」


 食べたら間違いなくガンになってしまうだろう。もちろん食べないが。


「あ、でも目玉焼きは結構うまくできてない? 全然焦げてないよ」


 焦げてはないが……。


「なぜフライパンが焦げるほど火力で黄身が半熟で済んでるだよ」


 フライパンがこの有り様なので今日は朝ごはん抜きかと思ったが、どうやら嬉しい誤算だったようだ。

 納得いかない部分はあるが、ここはせっかくだし素直にいただこう。朝からツッコミで疲れたくないし。

 暦がじっと俺を見つめる中、向かい側のいつもの定位置に座る。

 両手を揃え二人で言う『いただきま~す』を合図に箸をとる。

 が、暦は箸を手に膠着したままだ。

 なるほど、俺が食べるのを待ってるのか。

 見た目は美味しいそうだがあの(・・)暦が作ったもの。食べたら最後、寝込んでしまう可能性は大いにある。

 駄菓子、菓子。

 食材を無駄にするべからずがモットーである俺は、ここで引き下がるわけにはいかない。

 断腸の思いでウィンナーを一口。

 …………あ、意外に美味しいぞ、これ。

 ちゃんと味が着いているし、中までちゃんと火が通ってはいるし焦げてもいない。

 しょっちゅう塩と砂糖と変なものを入れていた頃に比べたらすごい変化だ。


「思ったよりも悪くないじゃないか。美味いよこれ」

「ほ、本当!? 嘘じゃないよねっ」

「料理のことに関しては嘘言わないって」

「いやー、そこまで言われたら朝早くから兄さんの為に作ったかいがあったよ。うん、いろいろアドバイスしてくれた(あきら)には感謝しなきゃね」


 どうやら料理下手な暦に助言をしてくれた人がいるようだ。でも玲という名前は俺達のクラスに覚えがないな。


「誰なんだ? その玲って人は」

「玲は隣のD組の料理部なんだ。とっても仲がいいんだから」


 なるほど、部活仲間か。


「うーん、本当は玲オススメの『食事に血を入れて愛する人に食べてもらう』ってのもやりたかったんだけどなー……」

「ちょっと待て。なんだその『某学校の日々』に登場するキャラクターがしそうな奇行は」


 俺は暦からポロッと出た衝撃発言を聞いて箸を止められずにはいられなかった。


「玲が教えてくれたんだ。『どんなに思い人との距離が近くても他人は他人。なら、少しでも自分の一部を食べてもらって一緒になりたくない?』 ……私感動しちゃった、玲に好きな人がいるのは知ってたけどここまで愛が深いとは思わなかったから。同じ一年だけど玲はメキメキと料理の腕を磨いてるし、想い人ともうまくやってるみたいだし……。私も玲に負けないように頑張らなくちゃ」

「できればその玲って人は反面教師にしてくれ、料理以外のことで」


 そんなやり取りがありつつ、朝の支度を終えて家を出る。

 俺が玄関の戸締まりをし、数メートル先で待ってる暦と合流し学校へ向かう。

 ……正直どうして俺を玄関近くで待たず、わざとちょっとした距離を先行したのか。俺にはわからない。

 暦曰く、この少し待ち合わせしてる感が堪らないらしい。

 …………うん、やっぱりわからん。

 そんないつも通りの登校風景の中、道の途中で壁に背中を預ける人影が。

 感のいい人ならもうおわかりだろう。

 時任(ときとう)先輩が俺達を待っていたのである。


「おはよう、零樹(れき)くん。今日も気持ちのいい朝だね」


 俺達が近付いてきたことがわかると、時任先輩は小走りで向かってきて朝一番の笑顔で挨拶をしてきた。

 当然の如く俺は挨拶を返す。


「おはようございます。どうしたんですか今日は」


 切り出したのは俺ではなく先ほどまでニコニコしていた暦だ。

 暦も先輩を視認したと同時に視線を若干下に向け、両者はまた睨み合うように対峙する。

 あーあ、朝っぱらから天敵同士が出会っちゃった。俺知ーらない!


「今日は『偶然』朝早く起きたの。それで『偶然』いつもよりも早めに家を出て、気持ちのいい朝だなぁって思ってたら『偶然』あなた達、兄妹に出会ったの。いやー、『偶然』ってすごいね」


 確かにすごい。

 今日一日分の『偶然』を使ったのではないのだろうか。

 それも『偶然』なんだろうけど。


「なにが『偶然』よ!! 朝早くに起きて家を出たまではいいとして、どうしてわざわざ私達の通学路にまでやってきて待ち伏せしてるわけ!?」


 先輩のわざとらしい言い方に対する憤怒を隠そうともしない剣幕で怒鳴る義妹。


「そんなに怖い顔しちゃダメだよ、美人が台無しになっちゃうよ? それにあなたは勘違いしてるかもしれないけどこの道は私の通学路でもあるんだよ」

「え?」


 そう言えば暦には時任先輩の家がわりかし近所(徒歩数十分で行ける距離)だって言ってなかったな。

 いや、俺だってこんなめんどうなことになるって知ってたら言ってたよ。 そう言えば暦には時任先輩の家がわりかし近所(徒歩数十分で行ける距離)だって言ってなかったな。

 いや、俺だってこんなめんどうなことになるって知ってたら言ってたよ。


「だから部活終わりはいつも零樹くんと一緒に帰ってるの。ねー」


 かわいらしく俺に同意を求めないでください。暦がめっちゃ睨んでるじゃないですか。


「ぶ、部活の後はそうだとしても、今は別に揃って登校する必要はないですよね? だったら私達は先に行くので、それじゃ」


 早口にそう言うと暦は俺の手を引いて早足に歩き出した。ちょっと待て引っ張るな。


「そんなに急がなくてもいいんじゃないかな~」


 すれ違い様に空いてる方の腕をとる先輩。

 あの、力強いです。腕が痛いです。笑顔だけどひきつってて若干怖いです。


「私達は学校に行かなけばいけないので、先輩はそこでのほほんと空を見てたらどうですか?」

「別にいいじゃない。あなたはいつも零樹くんと毎朝通ってるんでしょう。だったら今日ぐらい私が零樹くんと一緒に登校してもいいと思うんだけどなー」

「嫌です」

「独占欲の強い女の子は嫌われちゃうよ?」

「しつこい女性も嫌われやすいみたいですよ?」


 頼むから二人とも。俺を挟んでビリビリした視線を送り会うのは止めてくれ!!



 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆



「あー、疲れた」


 辛い。なんで朝からあんな目にあわないかんのだ。

 あの後は結局双方退くことはなく、まさに両手に花状態で登校したのだった。俺に向けられた負の視線もすごかったが…………。


「よー、色男。朝から見せつけてくれんなー」


 俺の低いテンションを吹き飛ばすような明るい(うざったい)声の主――西戸(にしど)砦羽(さいば)は一つ前の席に座るクラスメイトだ。


「うるさい。こっちは授業が始まる前から精神攻撃を受けてるんだ。ちょっとは休ませろよ」

「そんなこと言うなって、暦ちゃんを見てみろよ。疲れとか全然感じてなさそうだぜ」


 そりゃあいつは加害者サイドだからな!

 ゴールデンウィーク前に行われた席変えによって俺から離れたところにある暦の席。そこには女子生徒が群がっていて、暦に今朝の俺達に着いて質問している。

 ……女子って好きだよな、こういうの。

 先輩も教室で頭の触覚を揺らしながら質疑応答しているのだろうか。だとしたら学校中に広まるのも時間の問題だな。


「何が気に食わないんだよ? 男が一度は憧れるシチュエーションじゃん」

「俺も憧れたままでいたかったよ。そうだったら現実を知らずにすんだからな」

「もういっそのこと付き合っちまえよ」

「だからどこの世界に義妹とくっつく奴がいるんだ」

「じゃあ、噂の美人先輩とか?」


 西戸、お前わざとやってんのか?

 この会話クラスにだだ漏れだぞ。暦(とその友人達)がいかにも『私気にしてませんよ~』みたいな感じで聞き耳たててるけど!


「せ、先輩にはお世話になってるけどそういうのじゃねえって」


 部活の奴らや暦にも勘ぐられるが、俺は先輩に恋愛感情なんて持ってない。

 先輩・歳上に対する憧れはあっても、それ以上には興味がない。

 むしろこの距離を維持したいぐらいだ。

 一緒に部活してたまに二人で帰って、弁当のことで話しが弾んだり、相談にのったりのってくれたり――


 でも、


 (なんで先輩は急にあんなことを……)


 昨日の別れ際に言ったあの言葉。


『零樹くんは――』

『――本当のご両親にお会いしたい?』


 単純な好奇心からだろうか。

 それならば別に構わない。誰だってそういうことは考えるだろう。身近な人なら特に。

 加えて先輩は世話焼きだから、心配になって尋ねてくれたのかもしれない。

 それならいい、問題はない。

 けれどそうじゃくて、もっと別の意味だったら――


「おーい、零樹」


 呼ばれた俺の名前。

 沈みこんでいった意識が教室に戻される。


「お前大丈夫か? 急にボーッとして」

「あー、いや、大丈夫だ。問題ない」

「そうか? なら別にいいけどよ」


 そういって西戸はなら話すことはないと言わんばかりに自分の席に座るった。


 (あ、そういやお弁当作るの忘れてた)


 暦と俺の分は購買で買うとして、先輩のはどうしようか。

 言い出したのはこっちなのに悪いことしたなと思っていると、担任が入ってきた。





 読んでいただきありがとうございました。伝助です。



 長くなりそうなのでお昼休みは次の投稿で書きたいと思います。



 それでは失礼します。

 さようなら~



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