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零ノ十 俺×先輩=カフェオレの黄金比


 みなさまお久しぶりです。

 伝助です。



 長い間開けてしまった割には短いですがどうぞ読んで行ってください。



 それではどうぞ~。





 部活が終わってから、俺と時任(ときとう)先輩は学校近くで経営している喫茶店に足を運んだ。

 先輩がこれからする話しは部室や学校よりも、他の場所を選んだ方がいいと提案したからだ。


 俺としても他人に聞かれるのはちょっと恥ずかしいし、何かと苦労をかける先輩にお茶の一杯でもごちそうせねばと思っていたし。

 学生がちらほらといる店内で俺はホットコーヒーを、先輩はカフェオレを注文した。

 メニューをテーブルの隅に置いて、店の様子を眺める。

 どこか昔の雰囲気を漂わせる店内で、俺らの学校だけでなく他校の生徒も人を待ったり雑談に花を咲かせている。


「いいところですね。先輩はよく来るんですか?」

「うん、友達とたまにね。あ、男の人と来たのは零樹(れき)くんが初めてだよ」


 かわいらしくウィンクをした先輩を見て、体の熱が顔に集まった気がした。

 ちょっとだけ顔を背ける。


「それで、夢のこと占えました?」

「うん、ばっちりだよっ。ここらで有名な占い三姉妹にも占い方のアドバイスしてもらったし完璧っ」

「あれ、先輩が占ったんじゃないんですか」

「違う違う。私はあくまでアドバイスをもらっただけだってば。私自身の力量はたかが知れてるから、その道の先輩に話しを聞いたのよ」


 なるほど。

 なんだか、余計な手間までかけてしまったようで申し訳ない。やはり今日は先輩がなんと言おうと奢らせてもらおう。 占い三姉妹と言えば、女子や噂好きのやつじゃなくても耳にしたことある占い師のことだ。

 その存在は半ば都市伝説のようになっており、数十年前から同じ姿でいるとか三姉妹は全て人形で他の場所から操っているとか。



「――それで、どうだったんですか? 占いの結果は」


 自分でもアホなことを聞いてるとは思う。

 けど俺は知りたかった。この頃、もはや偶然では片付けられないほど何回も見る夢。

 もしこの夢に理由があるのなら、俺は知らなくちゃいけないと思った。


「ねぇ、零樹くん。話す前に一つ、聞いてもいいかな?」

「すみません、今日はできるだけ早く帰りたいので、それはまた後日でいいですか」

「零樹くんはそんなに『夢』のことが知りたいの?」

「はい。だからお願いします」

「そう急かさないで」


 そう言って先輩はちょうどウェイターが運んできた飲み物で、まるでお嬢様のように優雅に喉を潤す。

 俺はそんな先輩を真正面から見ながら、自分の中で渦巻く不安に疑問を持っていた。

 さっきまでなんともなかったのに、この胸を圧迫する黒い塊はなんなのだろうか。


「その夢はね――零樹くんの願望なの」

「願望?」

「そう。自分が無意識に望んでいることを、知らず知らずの内に夢という形で体感しようとしてるの」

「そう、ですか……。それで、俺が無意識に持ってるっていう願望というのはなんなんですか?」


 先輩は俺の問いかけに答えることはなく、ニコリと俺に笑いかけた。

 まただ。

 笑顔だけれど、あらゆる感情が欠落したかのような、面を被ったような顔。


「それは――零樹くんが一番わかってるんじゃないの?」


 そんなのはわからない。

 わからないから、先輩に聞いているのに。

 俺は何も知らないのに。


「俺は、別に何かが欲しいとか、特に考えてはいません」

「そう」


 先輩は俺のあやふやな意見に気分を害することなく、にこやかな笑顔で頷いてくれた。


 見てて安心するような笑みだけど、今の俺には怖く思えた。

 まるで俺の全てを見透かされているようで……。


「……私が占えたのはここまでね。力になれなくてごめんね」

「いえ、頼んだのは俺ですし、気にしないでください」


 そう、気にしない。

 俺は無意識下の願望なんて、そんなの気にしない。


「フフフ、ありがとう」

「いや、礼を言うのは俺の方ですよ」


 それもそうだね、と先輩は笑い、こう続けた。


「ねぇ、零樹くんは『運命』って信じる?」


 この流れでそういう質問来ますか……。


「信じる信じないと言うより――信じれない、ですね。

 運命の赤い糸だって実際見えないわけですし、俺は全てのカップルが赤い糸で繋がってとは思えません」

「なるほどね。

 でも私は信じるわ」


 先輩の目。

 その目は強い光を宿し、眼前にいる俺が認識できていないように思えた。


「もし『運命』で――赤い糸なんかよりも遥かに強い絆で結ばれた二人が、一つのイタズラで離れ離れになってしまったら、

 私はどんなことをしても自分の『運命』を取り戻すわ」


 周りの喧騒が遠くなるような感覚。

 俺の肩や頭には得体のしれない重圧がのしかかり、先輩をただ見ていることしかできなかった。


 なんなのだろうか。

 最近感じるようになった、先輩が時折発する感情は。


「ごめんね、ちょっと熱くなっちゃった。

 フフ、さっきから私謝ってばかりだね」


 そう言って先輩は笑みを浮かべ、カフェオレを口にした。

 途端に見えない締め付けが緩まり、俺はばれないように深呼吸をした。


「ねぇ、せっかくだし零樹くんの昔の頃のこと、聞かせて?」

「ええ、いいですよ」


 さすがに暦が俺になつく前のことは話さなかったが、それ以外は思い出せる限り全部のことを話した。

 先輩も俺の話しを笑いながら聞き、話しの間には自分のエピソードなんかも話題にでてそれでまた二人で盛り上がった。


 ふと窓の外を見れば太陽が沈みかけて いたので、今日はお開きとなった。

 俺は二人分出すと言ったのだが、結局先輩を言い負かせず割り勘となった。

 レジを打つ店員は俺を見て苦笑し、とてもいたたまれなかった。



 帰り道も途中まで一緒に歩き、楽しい時間が過ぎて行った。

 別れ道にさしかかり、先輩に手を降ってさよならを告げる。


「それじゃあ、先輩また明日、です」

「うん、暦ちゃんにもよろしくね」


 いつの間にちゃん付けするようになったのか、それよりもよろしく言ったら俺に被害が来るとかそんなことを思い、俺は暦の待つ自宅へと足を進める。


 家に着くといつもね習慣で郵便受けをチェック。

 一通の便箋があり、手に取ると親父からでしかも俺宛てだ。


「なんだ、親父のやつ。通信(コール)で済ませばいいのに」


 俺はその場で封を切ろうとするが、自宅から『バタバタッ、ゴンッ、バタバタバタバタッ』と、何者かが走るも転びそれにもめげずに走りながら玄関に近付く音が。

 何者というか義妹だけど。

 ていうか何故俺がいることを察知した。


 俺がどう義妹を宥めようと思案し始めたところで、義妹が勢い良く扉を開けた。





 ――そして俺は何故か腹の虫の居どころが悪い暦のご機嫌を取るのに必死で、鞄の奥に突っ込んだ手紙の存在をすっかり忘れてしまったていた。



 読んでいただきありがとうございました。


 今回は久々にも関わらず暦ちゃんの出番がほぼゼロ(汗)


 先輩か暦ちゃん、どっちかの絡みが強くなってしまいますね。

 気を着けます。



 次の投稿も遅くなると思いますが、頑張らせていただきます。


 伝助でした。さようなら~



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