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零ノ一 義妹+婚姻届け=ピンチ!!!


※この物語は短編『プリンとブラコンと握るその手の温もりと』の続編であり、長編『あなたは科学を信じますか?』の世界感とリンクしていますが、この話しだけでも読めるように執筆しています



 それではどうぞ~



 俺は廊下を走る。

 何故って?

 愚問だな。逃げるためだ。

 追っ手はスピードこそ速いとは言えないが、確実に俺との距離を詰め追い込もうとしている。

 強大な敵には変わりないが、あいつとは何年も交戦しているのだ。そう易々と捕まるわけにはいかない。なんとしても逃げ伸びてやる。

 だが敵は俺が思っているよりもずっと、狡猾で――


「見つけたわよ」

「なっ、お前いつの間にっ?」


 長い廊下の門を曲がると、俺の目の前に逃走劇を繰り広げるきっかけとなったエネミーが腕を組み仁王立ちしていた。


「甘かったわね。確かに単純な追いかけっこをすれば私は負けてしまうわ。でもそれなら、話しは簡単。あなたの行動パターン等を分析すれば、おのずと道は開けてくるわ」


 相変わらずの頭脳明晰ぶり。もし敵という立場でなかったら賞賛ものだが、あいにく決着がまだの状況で敵に塩を送るようなマネはしない。周囲にあまり賢いとは思われてない俺だが、ちゃんと学習するのだ。

 だが向こうも諦めていないようで、こっちをギラギラした目で見ながら、ゆっくりとポケットへ手を差し込む。そして中から取り出したのは、全ての元凶にして俺を悩ます最悪のアイテム――


「さあ、早くこの婚姻届けにサインと判を押しなさい!」

「だから無理って言ってるだろ!」

「なんでよ? 今は無理でもあと二年もたてば兄さんも18歳になって結婚できるようになるじゃない」

「俺は年齢のことを言ってるんじゃなくて、妹のお前とは結婚できないって言ってるんだ!!」


 そう。

 俺こと、有里(ありさと)零樹(れき)は結婚などとおかしなことを言ってくる妹――(こよみ)から逃げていたのだ。

 今日最後の授業が終わると同時に、妹は俺に判子を握らせようとして来たのだ。もちろん妹と結婚する気はミジンコ一匹分もない俺は、この歳にもなって事実上の鬼ごっこをするはめになったのだ。


「なんでそんなにかたくたなの? いい加減素直になってよ」

「待て。それだと俺が『本当は結婚したいけど、恥ずかしいから素直に妹の求婚を受け入れられない』というふうに聞こえるんだが」

「え、違うの?」

「違うわ!!」

「なんでよ。こんな美少女を目の前にして、結婚どころか押し倒したいほどムラムラしてるくせに」

「妹に欲情するほど堕ちてねぇ!」

「なんだ、そんな些細なこと」

「些細でもねえよ。特に、俺にとっては」

「でも、私達――」


 そこで暦は含みのある、それでいてとても楽しそうな笑顔を浮かべて言い放った。


「――血は繋がってないから平気でしょう?」


 そこなんだよな~。

 つい最近まで、俺達兄妹は自分らに血縁上の繋がりがないことを知らなかった。そのことを両親から突然知らされたのだ。

 ……うん、自分でも『あり得ない』とは思ってるよ。思春期の男子にありがちな妄想だが、現実なんだから仕方がない。はぁ、何で現実になっちまったんだろう。


「つうか血が繋がってても戸籍が一緒ならだめだろ!」

「ねぇ、兄さん。こんな言葉を聞いたことはある?」


 暦は意味ありげに微笑むと、


「恋は障害が多い方が萌える!!!」

「言うと思ったよ! てか最後の方は字が違う気がする」

「違ってないよ。現に私は今の禁断の関係(シチュエーション)には興奮してるから」

「…………」


 暦のアホさかげんにドン引きの俺。

 頭はめちゃくちゃいいのに、どうしてこういうところはダメなのだろうか。


「とにかく、二人とも一歩も引かないということね」

「ああ、引いてたまるか」

「なら仕方ないわね」

「その割にはニヤニヤしてんぞ、お前」

「いやー、この後の私と兄さんのイチャラブタイム(展開)を考えたらなんだか興奮しちゃって……。ジュルリ」


 今マジで身の危険とすさまじい悪寒を感じだぞ!

 絶対に逃げなくては。


 俺は体の力を一瞬抜いて、全身に神経を集中させる。もちろん全力疾走して、暦を振り切るためだ。

 暦もそんな俺の気配を察知したのか、締まりの無かった顔をキュッと引き締めた。

 うーん、やっぱり暦のやつも充分美少女なんだから終始こういう表情をして欲しい。いくら美少女だからって、ニヤケ顔は見ていてなんだか虚しなってくる。それが自分の妹ならなおさらだ。

 まるで俺をその眼光で射ぬかんとするほど、力強い眼差しで見つめてくる暦に怯みそうになるも真っ向から受け止める。

 睨み会って、

 睨み会って、

 睨み会って、

 睨み会って、

 睨み会って、

 睨み会って、

 睨み会って――


「うぅっ、目が」

「今だ!」


 暦が睨み合いの末、まばたきを忘れて乾燥した目を閉じた瞬間にUターンしてその場を離脱する。

 ちなみに俺はちゃんとまばたきしてました。


「さらばだっ」

「こら卑怯者! 待ちなさい!」


 距離が離れた俺に追い付こうと暦も遅れて足を動かすが、


 ――ずてんっ

「ふぎゅっ」


 段差も溝も何も無い廊下で転んでしまった。それはもう、床を頭にぶつける勢いで。

 暦は良く言ってドジっ子、悪く言って不器用(?)なのだ。

 頭の回転は速いがいらんところでドジを踏んでしまい、体力は平均的なのに運動が不得意と来ている。

 簡単な例を上げれば、さっきみたいに『何もないところ』で転ぶ。それもしょっちゅう。

 転んだ暦を助け起こすのは昔から俺の役目だが、今そんなことをしてしまえば捕まることはわかりきっているので割愛させていただく。


「逃げるなーっ、臆病者のチキン野郎」


 なんとでも言え。


「このシスコン!!」

「違ぇよ! 勝手に人を貶めるな!」


 そこは断固否定させてもらう。

 俺に対してシスコンなんてあらぬ疑いだ。暦に世話を焼くのは家族だからであって、それ以上でもそれ以下でもない。

 なのにクラスメイトや友人達は俺と暦の仲睦まじい姿――正確には暦が俺に一方的にじゃれついてるだけ――を見て兄妹揃ってシスコン・ブラコンと認識されている。暦はこの事実を誇っていたが。

 だから他の生徒にまで『有里の兄の方はシスコン』という考えを植え付けないで欲しい。

 今もなお俺のことを『シスコンシスコン』と罵る暦の口を無理やりにでも閉じてやりたいが、俺はその衝動を押さえ足を前に動かす。

 願わくは、暦のシスコンコールを聞いた生徒が、戯れ言だと思うことを……





 読んでいただきありがとうございましたm(_ _)m


 次は先輩に登場してもらう予定ですので、やっと三角関係になります


 それでは失礼します。さようなら~

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