壱
診察室の中も、矢張り真っ白だった。
壁、ベッド、機材。何もかもが白い。
白い部屋で、僕と医者――この場合は探偵と呼ぶべきだろうか――は向き合う形で座っている。
「さて――見た感じは健康そうですが。病気じゃなくて、怪我ですか?学生さんは部活とかあるから、病気よりも怪我のほうが多いんですよ」
穏やかに、しかしまくし立てるように医者は言った。
見た目はどこか不健康そうである。目が隠れる程度の前髪、白い肌、おまけにどちらかというと細身で、何か持病でもあるのかと心配してしまう。しかし目は生き生きとしていて、そのギャップがどことなく不思議な感じの人だ。
そして例の田中さんに負けず劣らずの美形である。田中さんは日本人らしくない格好良さだが、この人は爽やか好青年といった感じの格好良さである。これだけ美形なら高校生とかおばさんの間で有名になっても良さそうだが、どうも人の出入りは少なそうだ。
胸の名札には折原と書いてある。田中さんの言っていた医者兼探偵――究極の変人――は、この人で間違いないようだ。とてもそうは見えないが。
「でも骨折もしていないようですしねえ。歩き方も普通でしたし。もしかして精神的なものですか」
カウンセラーの資格は持っていないんだけどなぁ、と折原さんは困ったように笑った。大人っぽい笑顔だ。
「ええと、違うんです。実は、探偵事務所の方に――」
僕がそう言うと、探偵事務所のドアは左側なんですが――と田中さんと同じ反応――尤も田中さんのように眉を顰めはしなかったが――を見せた。
「左と右とで、何か違うんですか」
音がね、違うんですよ――折原さんは言った。
「音?」
「入ったとき、カランと鳴ったでしょう。右側のドアから入ると鳴りません。あれで患者さんと依頼人を区別してるんです。一応僕の本業は医者ですからね、患者さん優先です」
そう言って折原さんは笑った。
白衣のせいか、探偵よりも医者の似合う人である。
それで――折原さんは僕に問いかけた。
「今日はどんな御用です?」
僕は問いかけに対して問いかけで答えた。
「あの――幽霊って、いると思いますか?」
「いますよ」
即答だった。
「え?あ、いるんですか?」
僕はいると思いますけどねえ、見たことはないけれど――笑いながら答える。
正直言って、僕は医者という職業に就く人たちは科学の塊だというイメージがあった。
だからてっきり、そんな非科学的なモノいるわけないと怪訝な顔をされると思ったのだ。
僕がそう言うと折原さんは、
「いえ別に、非科学的なものは信じてませんよ?医者という職業は科学の上に成り立ってますから」
と言った。
「でも、幽霊だってその、科学的じゃありませんよね?」
「そんなことはないですよ」
そう言った折原さんは矢張り笑っている。先程よりも楽しそうだ。
「そもそもね、この世界に非科学的なものなんか一つもないんです。人類はまだ進化の途中ですからね。今の科学じゃ説明できないからって、数百年後の科学で証明できないとは限らない」
「はぁ、そんなもんでしょうか」
「だってそんな非科学的なものだったら、この世にあるはずないでしょう。この世にないのなら、現代まで残ってるっていうのはおかしい。霊能力者やらも絶滅していませんしね。だったら今の科学じゃ説明できないだけで、死人が再び現れるというのはちゃんとした現象なのかもしれないでしょう。幽霊だけじゃない。現在まで語り継がれていることは、個人の見た幻だとか幻聴だとか、そう言うのでは簡単には片付けられないんですよ。だから僕は幽霊だけじゃなく、世の中で起こると言われていることは大抵信じちゃってるわけです」
何となくわかる気もする。
「でも――死人が生き返るなんて、難しいんじゃないですか。心臓も脳も、一度止まったら後は腐っていくでしょう。まぁ心臓は奇跡的に再起能することもあるみたいですけど、そういう人は奇跡の生還とか言って幽霊なんて呼ばれないし。心肺停止イコール死亡。それは今の科学でわかっていることです。それを覆すのは無理じゃないですか。死人が生き返るなんてことは、時間が戻りでもしない限り有り得ないですよ」
そんなことはないですよ――折原さんは目を細めた。
「僕は先程科学で証明するなんて言いましたけどね、そもそも『科学』という存在だって証明なんかできないんです。事実と真実はイコールじゃない。科学は事実であって、真実ではない。だから――医者が言うのも変ですけどね、科学と言うのは、世の中の『不思議』をわかったような気になるための一つの記号なんです」
「はぁ」
僕は間抜けな声を出した。
「事実と言うのは永続的なものではありません。その瞬間だけの結果を事実と呼ぶのです。だから覆されることもある。我々が常識だと思っている事実は、実は大した根拠もないんですよ。例えば――」
折原さんは腕を組んだ。
上目遣いで天井を見る。何かを考えているようだ。
「――例えば、≪死んだ人間は生きている≫のかもしれない」
「へ?」
そんな矛盾したことがあるものか。
思わず間抜け面になった僕には目もくれず、折原さんは考え続けている。
「だとしたら――そうだな、≪認識しないことが必要≫なのかな」
ますますわからない。
少しの間折原さんは考え込んでいたが、ああすいません話が脱線しました、と無理矢理話を元に戻した。
「で――今回の依頼は、幽霊がらみなんですか」
「ええ、まぁ。僕がそう思ってるだけですけど、多分凄く典型的な心霊現象です」
典型的な心霊現象と言うのもなんだろう。まるで心霊現象が日常茶飯事のような言い方である。
そんなことを考えながら、僕は依頼の内容を吶々と語り始めた。
その心霊現象が起こり始めたのは、二週間前の土曜日のことである。
毎週土曜日は午前二時から一時間ほど見たいテレビがあるので、僕は三時頃まで起きている。そんなもの録画すれば良いだろうという話だけど、正直面倒くさい。起きていた方が楽なのだ。
その日もいつも通り、一人でテレビを見ていた。時々夜中にも拘らず笑い声を上げることもあったけれど、僕は一階の一番右端の部屋で、隣も上も、と言うか僕以外誰も住んでいないからあまり気にしていなかった。
番組が終わるまではいつも通りだった。
一時間して、ちょうど番組が終わったところである。さあ寝るか、とテレビを消した時、音が聞こえた。
音、と言うよりは呻き声と言った方がいいかもしれない。
うう、と男の人のくぐもった声だ。どうも隣から聞こえているようだった。
意外と現実主義者な僕は、最初は泥棒かと思った。
そこで大家さんに電話して、その後隣の部屋の前で泥棒が逃げないようじっと待っていた。声が聞こえなくなってからも暫く突っ立っていた。
十分ほどして大家さんが走って来た。どこに家があるのかは知らないが、意外と近いようである。
大家さんはじゃらじゃらとした鍵束を取り出し、鍵を差し込んだ。
僕は確認しなかったのだけれど、ちゃんと鍵は掛かっていたようである。
僕らは顔を見合わせてから、恐る恐るドアを開けた。
中には誰もいなかった。
よく考えたら、空き部屋なのである。何か盗ろうと思っても、電球くらいしか取れないのだ。空き部屋だとわかって長居する泥棒なんていないだろう。
そもそも泥棒が盗みに入った部屋で呻き声をあげるというのも不自然である。
つまり、あの呻き声の正体は泥棒――人間ではなかったわけである。
大家さんは本当に聞いたんですか、と僕を疑った。僕は思わず、すいません、自信ないですと謝った。それを聞いた大家さんは、きっと風の音か何かでしょう、と笑った。その言葉に大いに納得した僕は、謝りながら大家さんと別れた。
でも――
家に戻ってから、矢張り風ではなかったような気がしてきた。
聞き間違い、ではないと思う。くぐもってはいたものの、はっきりと聞こえたのだ。
それに、正直な話、入居したときからなんだか≪いる≫ような気はしていたのだ。
部屋の中に僕以外の誰かが≪いる≫ような――そう、ちょうどこの診療所に来た時のような――気持ち悪い違和感。
僕は幽霊というやつに会ったことはないが、心霊スポットなんかに行くとしょっちゅう気持ち悪くなる。どうもそういう空気に敏感らしい。その時と同じような感じだった。
それでも気のせいかもしれないと思い、大家さんには悪いことしたなぁなんて考えながら眠った。
それから一週間、呻き声が聞こえることはなかった。
しかし、先週の土曜日。
再び聞こえたのだ。
僕は大家さんを呼ぶか迷った。迷った挙げ句、電話した。
大家さんは前よりも早く来てくれた。困ったような顔だった。
矢張り部屋の中には誰もいなかった。
僕は呆れられる前に、本当にすいません、と謝った。
しかし大家さんは呆れるどころか顔をしかめ、実はね、と小声で言った。
――先週、ここから帰ってから思い出したんですけどね?三ヶ月前にも、不気味な声が聞こえたって出てった人がいるんですよ。
その人は隣の部屋に住んでいたらしい。男二人組だったそうだ。
そして、もう一つ教えてくれた。
――儂ンとこの婆さんが言ってたんだけど。
――七年前に、隣の部屋で人が消えてるんですよ。
そこまで聞いて、折原さんはなるほど――と眉を顰めた。
「どうでしょう。こういうのってやっぱり、心霊現象なんでしょうか」
「そうですねぇ。貴方は――ええと」
「高野です」
「高野さん。高野さんは、幽霊とか信じているんですか」
「いえ、どちらかと言えば信じてませんけど、何て言うんですかね。心霊スポットとかに行くと気持ち悪くなっちゃう方です。思い込みなんでしょうけれども」
そうですか、と呟いて折原さんは黙ってしまった。
暫しの沈黙。
どうも折原さんは何かを考え込んでいるようだ。話しかけ難い。
何だか気まずいので、僕も考え込むことにした。
心霊現象――なのだろうか、矢張り。
誰もいないのに声が聞こえるというのは、世間一般の常識に照らし合わせてもおかしいことだろう。他の部屋から聞こえているわけではないだろうし、もしそうだとしても今現在このアパートに住んでいるのは僕だけの筈だから、矢張りおかしいことなのだ。
それに――もし心霊現象ではないのなら、誰かの嫌がらせということになる。でも、それは有り得ないだろう。
部屋には鍵が掛かっている。まあ本物の泥棒ならピッキングなんて簡単にやってのけるのだろうが、その後――僕らが入った時には消えていなけらばならないのである。余程有名な奇術師でもなければ、そんなことはできないだろう。
そもそも隣は空き部屋である。入ったって盗るものもない。いったい何のためにどんな人が入るというのか。僕に恨みを抱いている人――心当たりは全くないが――が嫌がらせをしているのだとしても、何故隣に忍び込んで毎週壁にくっついて呻き声を上げるなどという馬鹿馬鹿しいことをしなければいけないのか。
わからない。
そこまで考えたところで、高野さん――と漸く折原さんが口を開いた。
「その、一回目に呻き声を聞いたときのですね」
「何か不審な点でも?」
不審と言えば不審なんですがねぇ――折原さんは頬を擦る。
「その時大家さんに掛けた電話の内容って覚えてます?」
「え?ええ、確か――」
何だか隣に泥棒が居るみたいなんです。
――泥棒?隣って空き部屋でしょう?それに鍵は掛かってる筈なんですが。
そうなんですけど――
――とりあえず、今から行きますから。
「――だけですね」
「だけですか。じゃあ大家さんと部屋を確認した後の会話は?」
「部屋を確認した後――ですか?」
――本当に聞いたんですか?
いや、その――すいません、自信ないです。聞き間違いかもしれません。
――この建物はいろんなとこを風が通りますからね。それと聞き間違えたんじゃ?
ああ、そうかもしれません。いや、わざわざ来ていただいたのにごめんなさい。
――別に良いですよ。大家ですからね、これくらいのことはしなくちゃあ。
本当にすいません。ありがとうございました。
――いえいえ、じゃあお休みなさい。
「――だったかな」
なる程――再び折原さんは眉を顰める。
何かが納得行かないようだ。
「もう一つだけ。隣の部屋は、入口側に窓ってあります?」
「ありますよ。大きな窓が。どの部屋にも一つ、玄関の横に大きな窓があるんです」
「そうですか」
「あの――何かおかしいですか?」
ううん、と折原さんは首を捻る。
そしてポツリと呟いた。
「どうして大家さんは――本当に聞いたのか?なんて尋ねたんでしょう」
「え?」
折原さんは真直ぐに僕を見た。
矢張り生き生きした目だ。
「だって、大家さんが駆けつけた時貴方は外に居たのでしょう。だったら先ずは窓から何か見えたのかと、そう思いませんか」
「それはそうですね。でも――泥棒と言えば物音でしょう?ゴソゴソとか。そう思ったんじゃないですか」
「でも、ゴソゴソとかそう言う泥棒が立てるような物音を、風の音と勘違いしますかねぇ?」
「それは――」
しない――かもしれない。
「風の音と勘違いするのは――どんな音でしょう」
折原さんは僕をチラリと見た。
「どんな――音ですかね」
「そうだなぁ、口笛、薬罐、釜の湯が沸く音は茶の湯用語で松風なんていいますし、それから――」
そこで区切り、折原さんは唇の端をつり上げた。
「呻き声――とかね」
「そ、そんな!それじゃあ――」
それじゃあ、大家さんは――
「――大家さんは、呻き声のことを知っていたということになるじゃないですか!」
「知っていたんでしょう」
折原さんはさらりと言ってのけた。
「だって、三ヶ月前に出て行った人が居るんですから。その102号室から呻き声が聞こえると言うことは知っていた筈です」
「そ、そうですね。じゃあ、別におかしくも何とも――」
――ん?
――今の折原さんの発言は、何かがおかしかった。
「おかしいですよ」
折原さんは笑った。
「よく考えてくださいよ、高野さん。その話は帰ってから思い出したと、大家さん本人が言ったのでしょう?つまり貴方が一回目の呻き声を聞いた時点では、大家さんは呻き声が聞こえるということを忘れていたんです」
「あ――そうか。じゃあやっぱりおかしいじゃないですか。何で大家さんは、隣の部屋から声が聞こえることを――」
――あれ?
「――お、折原さん?」
「はい?」
「僕は、隣が102号室だとお話ししましたか?」
「されてませんねぇ」
――そうだ、おかしいと感じたのは、折原さんが隣の部屋の番号を知っていたからだ。
「どうして知ってるんです?」
「もっと知ってますよ。そのアパートの名前は『藤花荘』。戦後すぐに建てられたためかなり古く、一階の畳の下は地面で冬場はよく冷える。そして貴方の住んでいるアパートは一階101号室、隣の部屋は102号室――大体あってるでしょう」
大正解である。
「何で知ってるんですか?僕は此処に連絡も無しに来たわけだから、事前調査も何もしてないでしょう?なのに、何で――まさか超能力、ってわけでもないですよね」
ふふ、と折原さんは笑った。
悪戯が成功した子供のような、楽しそうな笑みである。
「そうだと良いんですがねぇ――僕にそんな力はありません」
「じゃあ、何で?」
聞いたんですよ――折原さんは種明かしをした。
「先程、貴方の前にいらしてた女性に。その女性が、そのアパートに住んでいたんです」
「そ――そうなんですか」
女性とは、僕が田中さんと話しているときに見た、あの――どこかで見た気のする女性のことだろう。
「その人、名前は何て言うんです?」
「名前ですか?ううん、言っていいのかなぁ」
守秘義務というものがありますし、と折原さんは腕を組んだ。
「でもまあ、名前くらいはいいかな。佐藤さんです。佐藤都子さん」
「佐藤都子――さん」
矢張りどこかで聞いたような名だ。何処で聞いたのだったか。
「彼女は――何の依頼をしに来たんです」
やけに知りたがりますねぇ、と折原さんは驚いたような表情を見せてから、ううん、と考えた。
「まあ、貴方の依頼と無関係というわけでもなさそうですし――」
他言無用ですよ、と折原さんは人差し指を唇に当てた。
「彼女はね、貴方のアパートで七年前に失踪した男の、恋人なんですよ」
「恋人――ですか」
違う。
≪その彼女≫を知っているわけではない。
もっと違う、別の≪彼女≫を僕は知っている。
「今日いらしたのはね、その七年前に失踪した男を捜してほしいと、そういうわけで」
「捜す?七年経った今更ですか?」
「七年経った――正確には七年経つから、ですよ」
「はぁ」
どういう意味だろう。わからない。
僕の思考を読み取ったのか、折原さんが説明してくれた。
「民法第三十条に『失踪宣告』というものがありまして。これは行方不明者が七年間見つからないときに失踪の宣言が出来ると言うものです。そして民法第三十一条は『失踪宣告の効力』と言うんですが、前条の期間満了――つまり七年経ったときに、その行方不明者を死亡とみなすっていう法律があるんですよ」
「つまり行方不明者は、七年経てば死亡にすることができる?」
「そうです。で、彼女――佐藤さんは、失踪宣告をする気なんですよ。七年連絡が取れないから、きっと死んでいるだろう。だったらせめて葬式をしたい。だから死んだことにする――とそういうわけです」
「成る程――それでどうして、この診りょ――じゃなくて事務所に来たんですか」
診療所も探偵事務所も一緒ですよ、と折原さんは笑った。
「あと一ヶ月でちょうど七年なんだそうです。だからそれまでに、捜すだけ捜して見てくれないかと。もし生きていたなら嬉しいし、死んでいたとしても、死体のない葬式よりはマシだから――だそうです」
そんな――ものなのだろうか。
おや、また話が脱線した――折原さんは話を戻す。
「で、大家さんの話ですよ。怪しいですね」
「つまり、あの呻き声は大家さんの仕業だと言うことですか?」
そうとは限りません、と折原さんはやんわりと否定する。
「大家さんは呻き声のことを初めから知っていたのだけれど、わけあって貴方に話せなかった。しかし二回目のときは状況が変わって、貴方に打ち明けた――というのも有り得る」
「どちらにしても――大家さんは何かを隠してるってことですか」
「そうですねぇ」
何かを隠している――。
僕は何だかわけのわからない不安を覚えた。
あのアパートには、僕の知らない何かがあるのだ。
何か――そう、何かは起きている。
失踪事件。
三ヶ月前の呻き声。
僕の部屋に居る何か。
そして土曜日に聴こえる呻き声――。
それらは繋がっているのか。
そう考えると何だか怖い。
今あのアパートに住んでいるのは僕だけなのだ。
何が起ころうと、僕以外知ることはできないのだ。
さて――折原さんは立ち上がった。
「行きましょうか」
「い、行くって――何処へです?」
「何処へって――大家さんのところですよ」
折原さんは何を聞くんだ、という顔で僕を見た。
「行ってどうするんです」
「話を聞くんです」
「何の話を」
「勿論、七年前のことです」
「な、七年前のことは僕の依頼と関係あるでしょうか」
「さあ――」
それは後々わかるでしょう、と折原さんは笑った。
今更だが――
何だかよくわからない人である。
探偵、折原暦。
とりあえず僕は、彼についていくことにした。