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ちょっとありそうな恋の唄  作者: 祥眞 遊汰
2/10

告白論



「好きです、付き合ってください」


「無理です」


彼はいつも、告白を数秒たたないうちに断ります。



「また断った。何人斬りだよ、大野の奴」

「女の敵だね、女の敵!!」


そういいながらもきっとみんな大野のこと嫌いじゃない。

どっちかっていうとほっとしてる女子のほうが多いんじゃないかな。

だって大野、モテるし。

他校だろうと年上、年下だろうと関係なしにモテる。

昔、女子と間違って告白してた男子もいたっけな?

まあ、老若男女、誰にでもモテる彼は一回も告白をokしたことがないらしい。

なんでだろう?

別に大野には興味ないけどそこは気になる。

だってそこそこ可愛い子や綺麗な人までみーんな告白にくるのに、全て考える間もなく断るんだもん。

自信過剰なのかな?

それとも好きな子でもいるのかな?

よくある設定で幼馴染とか、近所の人とかに片思い、とか?

でも、アイツの近くにそれらしき人は居ないらしい。

だったらなんなんだろう。


「やば、大野、帰ってくるよ!!」


さっき陰口叩いていた女子があわてる。

まあ、こういうのって女子っぽいよね。


「涼くん」

「んー?」


大野は帰ってくるなり私の名前を呼んだ。

因みに、私、男ではないよ?

大野が勝手に涼くんって呼んでるだけ。

なんか雄々しいんだって、私。大野から見ると、だけどね


「放課後、委員の仕事だって」

「えー、あー、一緒だったっけ?」

「酷いなー、覚えてないの?」

「知らないよ、私、手上げるの最初だったし」

「それもそうだね」


大野はよく分からないけど納得した様子で席に戻っていった。

男子に冷やかされつつ。


「ねぇーね、大野って涼のこと好きなのかな?」

「んなわけないじゃん。アイツには私は雄々しく写ってるんだから」

「そうかな?なんか大野って涼だけ色々特別扱いだよねー」

「色々ってなんだよ」

「それはねー?」

「ねぇー?」

「もう、いいよ。めんどくさいからそういうことにしといてくださいっ!」


めんどくさくなって会話を放棄した私につまらなそうに友達が色々話す。

委員てなんの委員だったっけ?

確か地味な委員だった気がする。

早く帰りたくてあげたし、活動もあんまりしないからなんの委員だったかいまいち覚えていない。

まあ、放課後なにかすることには変わりないから別にいいか。

そんなことを考えていると教室にはいってくる教師の声が聞こえた。


「はい、仕事」


大野が山積みのプリントを2つくっつけた机の真ん中に置いた。


「これ全部?」


見上げながら私がいうと、「そう、全部」となぜか少し楽しげに笑う大野がさっそく作業を始めた。

しばらく沈黙が続いた後、「そういえば」と気になっていたことを大野に聞いてみることにした。


「大野ってなんであんな考えもしないで告白断るの?」

「え、だって告白って自分勝手じゃない?」

「は?どこが?」

「俺だって、好きな人はいますか?とかだったら少し考えて答えないでもないよ」

「会話、繋がってなくない?」

「十分なくらい繋がってんじゃん。涼くんはどうして俺が即断るかを知りたいんでしょ?」

「うん」

「だから、告白って自分勝手なんだよ」

「だから、なんでってば!!」

「だって、ほら、考えてもみなよ。最初は好きでいるだけでよかったわけでしょ?」

「まあね」

「でもその次は好きだけじゃ足りなくなるんだ。自分が愛してる分だけ相手にも愛してほしくなる。だから、告白する」

「普通じゃない?」

「でも、それってさ自分が好きだから俺にも自分のこと好きになってくださいっていってるようなもんじゃない?もしくは、自分はこんなに好きなのになんで俺は振り向いてくれないの?みたいな」

「え、そうじゃないでしょ?」

「そう思って告白してなくてもさ、結局はそういうことでしょ?だって、好きでいるだけでいいんなら告白なんて元々しなくてもいいんだよ。それなのに、その分だけ愛してもらおうなんて思うからおかしくなる」

「そんなもんなの?」

「まあ、俺の告白論でしかないけどね。でも、俺が即告白を断る理由はこれにある」

「へぇ」


なんかすごくスッキリした気分だ。

ずっと解けなかった難問が解けたときの爽快感。

なんか気持ちいい。


「だから、俺、涼くん好きだよ」

「は?」


いきなり発せられた言葉は告白に近い言葉だった。

が、放った張本人は何事もなかったのように作業をしている。


「サバサバしててさ、あんまり物に執着ってものもなくて。それに涼くんて、あんまり人に好かれようとか、愛した分だけ愛してほしいとか思わないでしょ?」

「うん、あんまり」

「だから好き。涼くんと俺、結構似てると思うんだ。そういうとことか」


それってあんまり嬉しくない。

そんなとこ似てたってなんの得にもならないし。


「だから俺、涼くんは特別だよ」

「うん。で、それはなんの意味があるの?」


よくわからない同じ意味の会話に少し飽き飽きしながら私が聞くと、大野はまた笑った。


「俺、告白論唱えておきながら両思いに憧れる健気な少年だったりすんだよね」


いや、決して健気ではない。

少なくとも今は。

なんかふわっと薄黒いオーラが見える。


「だからさ、聞いてもいい?」

「なにを?」


私が首を傾げると、大野はまた楽しげににこっと笑った。


「好きな人、居ますか?」


誰も居ない放課後の委員会は、

不思議な少年と共に

一刻、一刻と迫ってくるようです。

色々と。



誤字脱字があれば知らせていただけると助かります。

感想お待ちしております。

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