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おにぎり屋ふくふく

おにぎり屋ふくふく|春のにおい

作者: 絵宮 芳緒
掲載日:2026/05/06

ある日。


ふくふくの前の通りに、

やわらかな風が吹きました。


「なんだか、いいにおいするね!」

トラが、ぴょんと顔を上げます。


ミケも気づきました。

「ほんとだ」


シロは、ふっと微笑みます。

「春よ」


通りの向こうに、桜の木が咲きはじめていました。


お客さんたちも、どこか楽しそうです。


「お花見しながら食べたいねぇ」


「外で食べるのもいいわね」


ふくさんは、にっこり。

「じゃあ、今日は少し多めに握ろうかねぇ」


クロたちは、外へ出ます。


風が、やさしく吹きます。


桜の花びらが、ひらり。


トラが追いかけて、

まぐろが笑って、

ミケが「落ち着きなさいよ」って言って、

シロが静かに見守ります。


クロは――

その中にいました。


ふと、空を見上げます。


ひらひらと舞う花びら。

あたたかい光。


「にゃ」


その声は、軽やかでした。

もう、あの夜の影はありません。


おにぎりを持った人たちが、桜の下で笑っています。


「おいしいね」


「なんだか、うれしくなるね」


その声が、風に乗ります。


クロは、しっぽをふわりと揺らしました。


ふくふくの前で、ふくさんが見ています。


「いい季節だねぇ」 


その声に、クロは振り向いて――

ゆっくりと、店の方へ歩いていきました。


その背中は、もう迷っていませんでした。


春のにおいの中で、ふくふくは今日も、やさしく続いていきます。

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