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くよくよしない錬金術師、エリザ・シュターテット。  作者: 水乃ろか


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第21話 社交界と貴族

 フェルさんにもらった招待状を手に、私とメグは社交界へと向かった。


 まず、シシィさんが手配してくれた洋服店で、ドレスと装飾品を身につけた。

 どれもこれも、目がくらむような高級品ばかりだ。

 貸し出しで、しかも料金はかからないらしい。一体、どういう仕組みなのか、私にはさっぱりわからなかった。


 メグも華やかに着飾っていて、少し恥ずかしそうにしているのが、すごく可愛かった。

 

 そして、私たちはすぐに馬車に乗せられ、気づけば王城に到着していた。

 まさか、社交界がお城で開かれるなんて、想像もしていなかったので驚きだ。


「エリザ、あたしなんかがお城に入っても大丈夫? ……捕まったりしないよね?」

「だ、大丈夫だよ。……たぶん」


 そして、私とメグは、二人して緊張でビクビクしながら会場へと足を踏み入れた。


 お城の中といっても、こうした催しのためのに独立した、驚くほど広大な建物だった。

 

 中にはすでに大勢の人が集まっている。

 

 シシィさんも、この中にいるのだろうか?

 商業ギルドの人なんだし、どこかにいるのかもしれない。

 

 メグはきょろきょろとあたりを見回し、落ち着かない様子だ。

 やはり、メグのお目当ては、豪華な食事なのだろう。

 

 すると、会場の隅に、見たこともないような豪華な食事が並べられているのが見えた。

 どうやら立食形式のようだ。


「あれ……メグ? どこ?」


 私が気がついた時には、すでにメグのお皿には食事が山と積まれていた。


 すると、会場のお客さんたちが一斉に正面を向き直した。

 遠くの壇上で、何人かが立っていて誰かが挨拶をしているのが見える。


 後ろで聞こえてきた話し声で知ったのだけど、今前に立っているのは、王様や王子様たちらしい。

 見たこともない、この国で一番偉い人たち……思わず息を飲んだ。

 

「あれが王さまなんだー!? ねぇねぇエリザ! 見に行ってみようよ!」

「え? ちょ、ちょっと待って!」


 メグに手を引かれて、私たちは人の波をかき分けて前の方へと急いだ。

 だけど、人が多すぎるため、前で挨拶している人達が何回か入れ替わっていて、すでに終わりが近づいているようだった。


 やっと前方にたどり着くと、豪華な白い装束をまとった金色の髪の人が、何かを話し終えるところだった。

 とても若い。私と同じくらいの年齢だろうか。

 

 その声がかすかにと聞こえてきた時、聞き覚えのある声だと気づいた。

 

「あれ? ……フェルさん?」

 

 つい声に出してしまったけれど、そんなはずはない。

 だって、目の前にいる人は王子様だし、さらさらと金色の髪がなびいている。


「あれがフェリクス殿下か。お若いの聡明そうだ」


 誰かの声が聞こえる。『殿下』……王子様ってことだろうか。


「――では、みなさん、ぜひ楽しんで行ってほしい」


 フェリクス殿下という人がそう告げると、一斉に楽器が鳴り響き、音楽が始まった。


 途端に、周りはガヤガヤと賑やかになった。


「今のって、誰だったの?」

「たぶん、王子様だよ」

「へ~、あれがねぇ。なんか、どっかで見た事ある感じだよね」


 見た事ある感じ? ……確かに、私も見た事がある気がする。

 どこでだろう? いや、王子様なんて、今まで見る機会なんてあるはずがない。

 でも、メグも見た事があるって事は、王都のどこかで見た事があるのだろうか?

 うむむ……まったく思い出せない。


「んじゃ、ご飯食べに戻ろ~!」


 再び、私はメグに引っ張られて、その場を後にした。

 

 メグがお皿に盛る食事の量は山盛りで、周りの視線を独占していた。

 だけど、メグはそんな視線はおかまいなく、ガツガツと食べている。

 メグが美味しそうに食べているのを見ると、私まで幸せになるから不思議だ。


「おや、そこにいらっしゃるのはマーガレットさんに、エリザさんではありませんか?」

 

 突然、声を掛けられた。


 声の主は二人の美しい女性。華やかなドレスに加え、立ち姿が優雅で美しい。

 周りの人たちも、その二人に目を奪われているのがわかる。

 

 だけど……私は、そのお二人のことをまったく知らなかった。

 メグも突然、自分の名前を呼ばれ、動きが固まっている。


「あら? どうしたんです?」


 その女性は、私たちが呆然としているの見て、そう声を掛けてきた。


「あの……すみません。人違いではないでしょうか……?」

「いえ、そんなはずは無いと思いますが。ねぇ? マーガレットさん?」


 女性がにこりと微笑んだ。その笑顔に、周りの男性たちがうっとりしているのがわかった。

 いったい、誰なんだろう? メグの知り合いだろうか。


 メグも、口にくわえているお肉を食べるのを止め、必死に考えていそうだったけど、やはり心当たりはなさそうだった。

 その女性は、しびれを切らしたのか、近寄ってきて、こっそりと私たちに囁いた。


「おめえらなぁ、まさか俺がわからねぇとか言わないよなぁ?」

「……え、まさか!? イリスさん!?」

「何が『まさか!?』だよ!」


 お、驚いた……! 冒険者ギルドで見た時は、髪型もめちゃくちゃだったし、けだるそうな態度だったし、それにこの口調の差。

 そして目の前にいるのは、どこの高位貴族の令嬢かと見間違えるほどの、完璧な美女だ。この変わりようには、言葉も出ない。


「同志マーガレットよ、再び会えたことを嬉しく思うぞ」

「う、うん……いやぁ、驚いたぁ」


 メグの気の抜けた言葉に、呆れている様子のイリスさんが、じーっとメグを見ていた。

 

「まったく、失礼すぎだろ、お前ら。なぁ?」


 イリスさんは後ろに立っている女性に同意を求めていた。

 後ろにいる高身長の女性は、静かにこくりと頷いた。

 そして、イリスさんは私たちに続けて言った。

 

「そういや、こいつはどうだ? 役に立ってるか?」

「……こいつ、ですか? どなたのことを言っているのでしょうか?」


 私がイリスさんに聞き返した。

 

「はぁ? こいつだよ」


 イリスさんが後ろの女性を指をさした。

 

 ……いったい誰だろうか?

 

 私とメグの頭には、ただ疑問符が浮かぶばかりだった。


「嘘だろ? 俺の事も分からないのに、こいつの事も分からないのか? お前ら、大丈夫か?」


 えええ……? 誰なんだろう。こんなに美人な人、そうそういるはずがないのに。

 

 だけど、その女性をよく見ると、化粧で隠されていたけれど、顔にうっすらと無数の傷跡があった。

 

「……え、もしかして!?」

「ト、トランさん!?」


 私とメグの声が同時に出た。

 そう、イリスさんの後ろに立っている美女は、いつもお店の護衛をしてくれているトランさんだったのだ。

 

 女性だったなんて……


 いや、ちょっと待って。

 メグって、トランさんの事が好きだったんじゃ……


 メグの方を見ると、メグがぐるぐると目を回していた。顔が真っ青だ。

 

「メ、メグ!? 大丈夫!?」

「お、おい! 同志! 大丈夫か!?」

 

 メグが気を失って、倒れそうになった。

 しかし、トランさんがメグの身体をしっかりと受け止めてくれていた。

 

 そして、その後、トランさんがメグをお姫様抱っこで、医務室まで運んでくれる、という事でお願いすることになった。

 私も付き添おうとしたけど、イリスさんが『商会の代表者が二人とも居ないのはまずい』と止めたので、トランさんがメグの様子を見てくれるということになった。


 メグ、目を覚ました後に、また気絶してしまうんじゃとも思ったけど、大丈夫だろうか。


 それにしても、二回も立て続けに驚くことになるなんて思いもしなかった。


 それから、私はイリスさんと会場を回ったが、イリスさんはたくさんの人に声を掛けられて忙しそうだった。

 だから、私はイリスさんに挨拶して別れを告げ、一人で会場を見て回ることにした。


 だけど……何をすればいいのか、さっぱり分からない。

 色々な人が楽しそうに話しているけど、みんな知り合い同士なのだろうか。

 私は場違いな気がしてならない。


 ……いやだめだ、私は商会の代表として来ているのだ。

 この社交界で、少しでも商会のために何かきっかけを作らなければ!

 

 私の心に火が灯った、その時だった。


 会場に流れている音楽が急に変わった。

 そして、会場にいる人たちが、部屋の隅へと移動しだした。


 すると、部屋の中央で男女が踊りだした。舞踏会が始まったようだ。

 みんな、とても優雅に踊っている。


 時折、男性や女性が、誰かと交代したり、新たなダンス相手を誘ったりしている。


 私も、こういう舞踏会に行かされていたのを思い出す。

 正直なところ、あまり良い思い出ではない。

 心から楽しめたことなんて一度もなかった。


 会場の人たちが楽しそうにダンスをしているのを見つつ、私は昔を思い出さないように努めた。

 私が今日ここに来たのは、商会代表という使命があるからだ。


 よし、頑張ろう! と思ったその時、背後から聞き覚えのある声が聞こえた。

 

「そこに居るのは、エリザか?」


 名前を呼ばれ、反射的に振り返った。

 

 そこには、白い歯を輝かせている男性が立っていた。


 忘れもしない。


 私の元婚約者、ジョッシュ・アンハワーが――そこにいた。


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