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【8】再会



――――母さんとシルヴァンの再婚、そして俺はシャーナと結婚することになった。シャーナはとてもイイコである。

今も母さんと一緒に仲良く調理に加わっている。……ここ、魔王城なのにいいのだろうか?まぁシルヴァン的にははいいようなのでいいが。


「俺も手伝いを……」

家事なら前世からやってるし……。


【まぁ、いいぞ。必要なことはこの後だ。今、アベルがシルヴァンと記憶を共有しているところだろう】

必要なこと……?

そしてアベルはシルヴァンと記憶を共有できるのか。

【俺の力でも容易に分かるぞ?スキルに付けてやろうか】

いや、それどんなスキル。

【神眼】

何か仰々しい名前のものが出てきた……っ!?そんなの人間に付けて大丈夫なの!?

【確かにただのヒトには過ぎたものだ。下手すれば精神と肉体が崩壊するだろう。だが俺たちは元々はひとつだったときにもヒト族の肉体で常に機能していた。問題はないが、見えすぎるとそれはそれで精神負担がかかるかもしれないな……?】

ダメじゃん、それ。


【だから暫くは俺が調整してやる】

結局付くのか……?

【何かと便利だぞ……?】

便利だからってあれば済むものでは……。


アルベロと脳内で会話しつつも、母さんたちの手伝いをこなしていれば……。


《記憶の共有が完了しました》

これは……アベルの声。念話ってやつか。


【ほら、行くぞ。呼ばれてる】

うん、場所は不思議と分かる。

【俺たちの眷属神だからな】

俺の身体で一度会ったからか、それが分かるようになったらしい。

母さんたちにシルヴァンとアベルが呼んでいるからと伝えれば、気にせず行ってらっしゃいと言われ、2柱(ふたり)がいる場所に急ぐ。


「……お待たせ?」

アベルとシルヴァンの姿を捉えれば、シルヴァンが一瞬眉をひそめていたようだが……すぐにいつものにへらっとした表情に戻る。


「ようこそ、我が主」

そう言って……また手の甲に口付けって……おいいいぃぃっ!!?


「ちょ……毎回やらなくても……っ!?」

そう言うもんなのか!?アルベロ。


【さぁ……?どうだったか。俺らが肉体に収まったからやりたいんじゃね?】

そんな適当な……。

そしてそれを肯定するようににこりと笑みながら見上げてくるシルヴァン。


「いいから……その、ずっと跪いていられても……」


「そう?それじゃぁ、ティルさまも座って……?」

サッと立ち上がったシルヴァンに連れられて、上品な白いテーブルの周りに用意された椅子へと、シルヴァンやアベルと共に腰掛ける。


「さて、ティル。ここへ来る間に立ちよった地底種地区のこと、アベルと記憶共有をしたよ」

「あぁ……うん」


「やれやれ……とんでもないことをしてくれたね。ぼくの愛する番のレベッカや我が主の番にまで」

番ってのは……その、シャーナのことだよな?


「それに我が主を貶すとは……その命、惜しくないようだ」

シルヴァンの笑みがかつてない程に黒い。


「しかし我が主の意思を最大限尊重し、アレには恥辱にまみれた罰を与えてやりましょう」

にっこりと笑みながら頷くシルヴァン。


「地底種と言うのは元々、強い種族であるがゆえ、4つの派閥に分かれていてね。その4つの派閥の中から10年おきに王を選ぶんだ」

そんな仕組みがあったとは。人類側にいては知ることもなかったな。


「あの王はもちろん王の座を剥奪。我が主を貶した不敬、我が主の番を苛んだ罪、魔王の妃への許されざる行い。それから魔王の怒りを買った罪で、一生塀の中で生きることとなる。そして牢番は派閥の地底種たち。そしてその派閥は今後半世紀、王が選ばれることはない」

半世紀ってことは……50年。魔族にとっては早いのか、それとも長いのか。少なくとも他の3つの派閥が王の座を巡らせる中、彼らはただ見ていることしかできない。

大地の神と魔王の怒りを買った愚かな王のせいで。一族から恨まれるのは言うまでもないだろう。


「せいぜい生き恥を晒すがいいさ。もちろん、それじゃぁ甘いってんなら、定期的にお仕置きを加えよう」

え……お仕置きか。


「あの、反省してくれるなら」

それで許されるわけではないだろうが。


「ティルさまは優しいんだねぇ」

シルヴァンが含みがちに笑む。


「そんな、ことは……っ」


「ま、その分ぼくたちが厳しく当たるからね」

それはそれでどうなんだろう……?


「だが……シルヴァン」

「どうした、アベル」


「俺たちは個人的に拷問を加えてもいいと思わないか……?」

おいおいおい、アベル――――っ!?

「それはそうだな、アベル!ぼくたちの愛するティルさまを貶したのだ。見せつけてやらなくては……!」

「いやいや、何乗り気になってんの!?」

【【庇い立てする義理があるのか?】】

アルベロが問うてくる。

「ない、かもな……?」


「では、好きにやっても……?」

まぁ、シルヴァンも母さんに手を出されたことは怒っているのだし。

【お前をバカにされたこともな?】

それは……別に俺のことはいいんだけど。

【そう放っておくやつらでもないぞ】

うぐ……っ。


「任せるよ」

魔族のことならば、魔族の長であるシルヴァンが一番分かっているだろうから。


【誰にでも優しくある必要なんてねぇんだよ】

それは……どうしてか前世の俺に突き刺さるような言葉だった。


――――俺が、そうじゃなかったら、亜璃子を守れたのか……?

【それは……】

アルベロが口ごもる。しかし、その時。


「おっと……ティルさま。残りの眷属神たちが来たようです」

そうシルヴァンが告げる。残りの眷属神って……。


【あと2柱いるんだ。でもあいつはこっちに置いてきたんだ】

あいつって……。しかしその疑問はすぐに晴れた。


「アルベロさま、そしてティルさま。お帰りになられて嬉しいわ」

そう告げた美女は青いロングヘアーに金色の瞳をしており、蕾のついた蔓のようなものを纏っている。そして彼女と手を繋いでやって来た少女に釘付けになる。

淡い桃色の髪に、瞳は赤。色は違うのに、その顔は行方不明になった14歳のあの頃のまま。


「亜璃子……?」

そんなはずはない。


「ごめん……っ、妹に、似てたから」

慌てて彼女に向かい手を振れば。


「アリスだよ。お兄ちゃん。私はアリス」

「……は?」

そんなはずは……。


【魂を見れば、同じだと分かるはずだ】

アルベロが俺に付けたスキル神眼が、勝手にと言うか、多分アルベロの調節によって、それが正しいと判別してくるのだ。


「どうして……」

「まずはそのお話からしましょうか。あぁ、私はレティシエラ。レティシアとお呼びください。我が主」

レティシアの提案に、追加で椅子が用意され、レティシアとアリスが腰掛けた。

一体何がどうなってるんだ。しかし分かるのは、目の前の少女は亜璃子であり、間違いなく俺とアルベロの眷属神だと言うことだ。

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