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【13】デンドロン皇国



真っ赤に実ったそれは、地球のリンゴとまるで変わらない。公爵邸にいた頃はとてもじゃないが、手が出なかったが……。


「魔王城に……果樹園」

シルヴァンから自由に食べていいとは言われたけども。


「なかなか美味しいぞ、ティル」

シャーナがはむはむと食べている。うん……なら、俺も……。


「はむっ。……ん、甘酸っぱくて美味しい」


【【因みに地底種は種を植えれば芽が出る】】


「え……このまま?本当に出るの……?」

「そうだぞ」

シャーナまで!?

【【ほら、一緒にやってみ】】

そう言われるのならば。


シャーナと一緒に食べ終わったリンゴの種を地面に植えてみれば……。


本当に一瞬で2本の木に成長し、そして真っ赤なリンゴが実る。

「地底種……すご」

「ふふ……っ、そうだろう?」

シャーナが得意気に笑う。

世界最強と言われているのは単なる力の面だけじゃない。こう言った脅威的な力まで持つのだ。


「だから原生の荒野もこうして緑に溢れているのか……」

【【プラス俺の加護な】】

ふむ……。


「あれ……待って……?もしもヒト族が獣人族やエルフ族に間借りばかりを願ったり、地底種たち魔族の土地を自分たちのものにしようとしたりするんじゃなくて……他種族の力を借りていれば……痩せた土地だって、荒れた土地だって……荒野の開墾だって、できたのでは……?」

少なくとも地底種がいれば、こうして種を芽吹かせることができたのだ。


【【それに気が付いたのがデンドロン皇国だな】】

あぁ、だからデンドロン皇国は境界にあり、人類の土地だと言うのに緑に溢れている。

魔王国は多種族が協力し合って暮らしているから緑に溢れて肥沃な大地となったのだ。


【あぁ、魔族は荒野に追いやられ、そうせざるを得なかった】

そしてこの原生の荒野を開墾したのだ。アルベロはそうは教えなかったのか……?

【教えたところで、神の名の元にやらせればそれは神が無理矢理やらせていることにもなりかねない】

創世神が望んだ人類の進化や発展は神が創るものではない。人類自ら考え、気付かなくてはならなかった。

勇者が呼ばれたのも、もしかしたらそれを気付かせるひとつのヒントにするためだったのではないだろうか……?結果は最悪な結末に陥った。

人類は……ヒト族たちは自らの進化と発展、開墾に手を貸してもらうべきだった地底種たちを魔族として人類の中から追い出し、魔界に追いやってしまった。


でもデンドロン皇国と魔王国は気が付いている。


それが唯一の希望だろうか。

俺や母さんはデンドロン皇国のエルフ領からは見放されているが。


「母さんやアリスたちにも持って帰ろう」

「うむ」

シャーナと一緒にリンゴを収穫していれば……不意に。


「ティル」

アベルがサッと姿を現す。


「どうしたの?アベル」

「不味いことになった」

不味いこと……?


「デンドロン皇国に駐在している俺の分身が伝えに来た」

デンドロン皇国にまでいるのか、分身。しかも互いに意志疎通のが自由自在……と言うのはともかく、何を伝えてきたんだ……?


「デンドロン皇国には皇国の召喚勇者がいる」

レナードだけではなく召喚者までいるのか……!

【【あれはあれで召喚を担当した光の女神がいらないと捨てたがな】】

はい……っ!?


「アルベロさまの仰る通り。召喚してみたら顔が気に入らなかったらしく、勇者はヒト族の国であるグロリアス王国ではなく、境界に打ち捨てられたんだ」

「ひどい話だな」

シャーナも眉をひそめる。ほんとあの光の女神は面食いだな。


「運良くデンドロン皇国の者に見付けられて保護された。光の女神は創世神から怒られることを恐れてギフトだけは渡したが、ジョブは勇者で、スキルはなしだった」

あれ、二度目だったのか、あの女神。よくやるわ。

「じゃぁ、スキルはないまま……?」


「海の女神が代理で付与した。だから彼のスキルは+2つ。合計3つだけど、ひとつはないに等しいので、例外的に創世神から認められた」

「まさかとは思うけど……レナードにスキルを3つも与えたのは……」

【【前例があるからと言うことなんだろう】】

そもそもそれは光の女神がちゃんと仕事をしなかったせいであり、デンドロン皇国の勇者には実質2つしかスキルはないのに。

【状況がまるで違うから、創世神からも怒られる】

そりゃぁそうだろうな。そもそもの原因は女神自身だし。


「それで、そのデンドロン皇国の召喚勇者がどうしたんだ……?」

「デンドロン皇国に唐突にグロリアス王国の使者が来たらしい。勇者レナードを連れて……な」

な……、レナードが……っ!?


「どうして急に……」

「何でも、デンドロン皇国の勇者を巻き込んで、魔界に侵攻しようとしているようだ」


「アベルの分身がいるって言うのに、それにも気付かず……?」

「平然と言ってのけたようだ。中立のデンドロンを引き込む気なのだろう」

は……?中立……?


「デンドロン皇国は中立ではなく、立派な魔族側だぞ……?」

シャーナが言うことが正しいのだろう。アベルもこくんと頷く。


「とにかくレナードが何かする気なら……俺、確かめに行くよ」

「そう言うと思っていた」

アベルが頷く。


「私も行くぞ」

「シャーナも……?」

「私とて、半分は地底種だ」

それは確かに。


「それにアリスのためにも、私が行く」

それは……っ。


《お兄ちゃん》

脳内にアリスの念話が届く。


「ごめん、アリス……アリスを連れていくことはできない」

【今度アリスに擦り傷ひとつでもつけてみろ。皇国外の人類の土地を海に沈めてやる】

アルベロえっげつな……っ!でも……俺だって同じ気持ちだ。


「だから、待ってて。アリス。ちゃんと終わらせてくるよ」

少なくともアイツに、アリスの顔を見せたくない。あの淀んだ魂を見せたくない。


《そうね。アリスちゃんのことは私たちに任せて》

「レティシア……!うん、頼んだよ」


「こちらはぼくたちに任せてね」

いつの間にかそこにいたシルヴァンに頷き返し、俺たちは飛行スキルで急ぎデンドロン皇国へと向かった。


なお、シャーナだが……。


「す、済まない」

「大丈夫だよ」

俺がお姫さまだっこして飛翔することになった。シャーナは地底種の血が濃く飛べないのだ。アベルはアルベロの眷属神で、自らも冥界の神だから重力制御もお手の物だった。




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