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12/12

【12】親友



――――おい、アルベロ。これは一体どういうことだ。


【朝っぱらからどうした。ちゃんとベッドの上に運んでやっただろう……?】

それはそうだが、だからって何で異世界ファンタジーなラノベのハーレム主人公のベッドみたいになってんだ……!

俺の右にはアリス!そして左にはシャーナっ!


【お前が寝ている間に見たけど……地球の人間の男はそう言うのが好きなのだろう?】

ひとによるわっ!!

少なくとも俺は……。


【妹との添い寝は可だろう?あと、シャーナはお前の嫁だ。寝ても何も不思議じゃない】

それはそうだけどおぉっ!?


「ん……お兄ちゃん……」

眠たげに眼を擦る妹は……かわいらしいけども。

【シスコン】

うっさいわっ!


「ふぁ~~。朝だな……」

そしてシャーナも起きたのか。


「あの……ごめん」

「何故謝る」


「その、何か俺真ん中で寝てるし」

「ベストポジションではないか?私も嫁としてティルの隣には寝たいが、仲の良いティルとアリスも見たいのだ」

シャーナとアリスの仲の良さは……やはり一度同じ身体を共有したからだろうか。魂同士の共鳴がだいぶ合っているんだな……。


「それより、朝ごはんの準備だ」

「アリスも手伝うよ」

アリスはシャーナにだいぶ懐いているな……。あれ、何か寂しい……?妹のお兄ちゃん離れ……っ!?いやいや、まだアリスもお兄ちゃんに甘えたいはず……っ!


【やっぱりシスコンじゃねぇか、お前】

うぐ……っ。完敗である。


「あぁ、俺も手伝う」

「今日はダメだ」

「何で!?」

何で即答なのシャーナさぁんっ!!?


「今日はアリスが取って置きの朝ごはんを用意するのだ。サプライズだからな」

「そうなの……!お母さんに教えてもらうんだ!」

がはぁ……っ!!

≫ティルダお兄ちゃんは致命傷を負った


――――そんなわけで。シャーナと笑顔で厨房に向かうアリスを、俺はひとり見送る以外の選択肢はなかったわけだが……。


「そこにいるのか、アベル」

眷属神の居場所は常に分かるようになっているが、それ以上にアベルとの結び付きは強い。何せ地の底の門の先を任せるために産み出されたのだから。つまりはアベルもまた、俺たちの一部であり、兄弟神と言える。


「はい、ティルさま」

そして当たり前のように目の前に現れる。今はあの巨腕は出していない。あれを出すのは本当に、冥界の神としての側面……つまりあの時、アベルは本気であの地底種の元王を地獄……いや、冥界に引きずり込もうとしていたのだ。むしろアベルはキレるとマジで冥界に引きずり込もうとしてくる爽やかな微笑みを浮かべるヤンデレちゃんな気がするな……?


「アベルも地球で俺といてくれたんだな」

「思い出されたのですね」

俺は家柄こそ立派だったけれど、外では麗人と比較されることが多かった。麗人と近付きたくて俺にすり寄って来る者は多かったが……いつの間にか来なくなるのは……やはり麗人が影で追い払っていたからだろうか。

そんな中でもアベルの前世は俺と一緒にいてくれた。互いに離れられない関係だから、アベルも魂の一部を地球に届けてくれたのかも知れないが。何せアベルって魂……9個あるんだぞ……?ほんと……何のためにそんなにあるんだよ。

冥界を治めるものから、魔王国でシルヴァンの仕事を手伝っているもの、眷属神としてギフト付与を代行するものなど様々。で、本体は常に俺といる地上用と冥界用の2つと言うわけだ。そんな感じで魂ごとに魔鋼で分身体まで造れる。いわゆるヒト型……いや、魔鋼種型ゴーレムである。


地球ではわざわざ肉体に宿るところから始めたんだろうけど……そのお陰で会えた。そして俺と一緒にいてくれたのだが。


「ごめんな……俺と一緒にいたから……」

アベルの魂の一部は肉体を喪い、先にこの世界に戻ってきたのだ。


「いえ、こうしてまたティルさまの傍らに控えていられる歓びがあれば、何のその。ですが俺の肉体を機能停止させたあのガキは……許しません」

やっぱりアベルの地球での肉体を殺したのも……麗人か、麗人に命じられた親派かな。


「それに、何か勇者として転生したんだよね。グロリアス王国の公爵令息のレナードとして」

アルベロと情報共有しているから、知ってるだろうけど。


「次、ティルさまの視界に入ったら、殺していいですか?いや、冥界に引きずり込みます」

「……いや……その、今生でも許されないことをしたらね」

考えなくもない。もうあれは罰を与えられれば済む次元を超えているだろう。今度こそ魂の救済……いや、地球への逃亡など許さず、冥界の牢に閉じ込め裁判を受けさせるべきだ。


「もう十分したでしょう……?ティルさまのことを……」

ものっそい凶悪な真顔なんですけどーっ!?


「評価はこれからつけるから」

「しかし……」


「その代わり、アリスやシャーナ……俺たちの家族に手を出したら容赦しなくていい」

「お任せください」

ひいぃっ。めちゃくちゃ殺る気満々なんだけども……でもそれも俺のことを考えてくれてるんだもんなぁ。


「あと、アベル」

「はい」


「あの……やっぱりその【さま】はいらないし、敬語もいらないよ……?地球ではそうだったろ?」

「それは……地球に渡った魂が記憶を封じられていて……あまつさえご友人などと言う立場に……」

どうやらこちらに地球の記憶を持って来られても、こちらの記憶は地球に持ち込めないらしい。まぁ、まぁ持ち込めたら今頃地球では魔法のこととかヒト族以外の種族の話題で大騒ぎだ。

「でも俺は嬉しかったんだ。前世ではアベルくらいしか友だちがいなかったし……。俺は親友だと思ってるよ」

守ってあげることはできなかったが……。

【こっちじゃぁ俺の次くらいにやべぇやつだぞ】

まぁ……何せ冥界を管理する神だもんなぁ……。


「だから、またアベルと友だちになりたい……ってのは……ダメ、かな……?」

「ティルさま……」


「その、アベル」

「……分かりました……いや、分かった。ティル」

「うん……!」

そうしてアベルと共に、ダイニングへと向かっていれば。


「やぁ、おはよう我が主。そしてアベル」


「おはよう、シルヴァン」

シルヴァンとも遭遇した。そしてアベルは……。


「よう、シルヴァン。今俺、主のことティルって呼んでるから。地球時代と同じように、友に戻ったんだ」

ニッコオオオォォォ――――――っ!!!ヒイイイィィ――――っ!?何その輝くスマイルううぅっ!?


「へぇ……ひとり抜け駆けしたってのに、いい度胸だ」

にへらっと口元に笑みを浮かべるシルヴァンも……目が嗤ってねえええぇっ!てか抜け駆けって……地球に魂をひとつ渡らせてくれたことか……?それは創世神の手配でもあり、俺とアベルがその役割の都合上互いに離れられない兄弟神でもあったから……なのだが。まぁ、2人ともアリスのことは争いの渦中に入れていないのは……優しさだろうな。

入れてたらさすがに俺も怒る。

【さすがにそれは拳骨だ】

アルベロまで……。まぁそうだよな。アリスは今も前世も、そして古代だって大切な妹なのだから。けど……。


「いや、その……シルヴァンもティルでいいよ……?」

「ティル……っ」

何でそんなショッキングな表情浮かべるの、アベル!?


「ふふふ、なら遠慮なく。ティル」

「ぐぬぬ……っ」

得意気な表情のシルヴァンに悔しげな表情を向けるアベル。


「あら、そんなところにいたの……?喧嘩してないで来なさいよ。今、焼き立てだから」

そうひょっこり顔を出したのは……レティシア!?

それに焼き立てって……。

レティシアに招かれるまま、食堂に入れば……。


「お兄ちゃん!パンケーキ、焼いたんだよ!」

そう言って焼き立てのパンケーキを見せてくれるアリスは……めちゃくちゃかわいかった。


シルヴァンとアベルが不毛な喧嘩を一時休戦したのは、言うまでもない。


もちろんアリスが焼いてくれたパンケーキは……今まで食べた中でも最高に……旨かった。


【やっぱシスコンだろ。ま、旨いがな】

そう言うアルベロも……シスコンじゃないはずないと思うのだが。


何たって俺たちは……ふたつでひと()なのだから。




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