3章ー9:モジモジする夜
お互い無言のまま夕食が終わって、そっからも一言も交わすことなく僕とレムアは寝る支度をした。
テーブルを片付けて布団を敷き、ロウソクの火を消す。
横に並んで寝てるのに、僕たちは互いに背中を向けてる。
外からはコオロギだろうか?
『リンリン・・・』だか『コロコロ・・・』だか、どっちにも聞こえる虫の鳴き声が窓から入ってくる。
黙り合う僕たちとは、正反対に・・・。
・・・・・・寝れない。
そりゃそうだ。
時間的にまだ20時半くらいなんだから、こんな早くに寝付けるワケがない。
小学生じゃあるまいし・・・。
いやでも年は5歳で小1くらいだから、ある意味合ってん・・・のか?
って、何が合ってんだよ?
あ~・・・どうでもいいことばっか考えて余計寝れなくなっちまうっ!
「リオル様?」
背中越しにレムアの声が聞こえてドキっとした。
「まだ、起きていますか?」
「うっ、うん。ジメっとしてて、寝れないや・・・」
「わたくしもです」
「だっ、だよね~!早く秋になってほしいってカンジ?あはは・・・」
「・・・・・・・。」
また無言・・・。
一体何だったんだ?
「そういえば・・・たてがみ、生えてきましたね?」
またレムアが喋ってきた。
ってか、たてがみ?
ああ、そういえば首の上からルータスに生えてるのと同じ毛がちょろっと生えてきてたな。
「あ、うん。そうなんだ。にっ、似合う?」
「ええ。大人っぽさが感じられて格好良いと思いまする」
「そっ、そうかな~///」
格好いいというワードに、僕は照れる。
「月日が経つのはあっという間ですね。あと五年で、リオル様も元服ですから」
そうだった。
こっちじゃ日本より8年早く10歳で元服・・・つまり成人になるんだった。
「そっ、そだね~・・・。そん時になったらさ、なんかお祝いくれる?」
冗談っぽく聞いたら、背中越しにレムアの悩む声が聞こえてくる。
「何が欲しいですか?」
欲しい物・・・かぁ。
前世はお祝い金としてじいちゃんばあちゃんから10万貰って、父親方のおばちゃんからブランドもんの財布プレゼントされたっけ。
確か昔の日本じゃ、成人した男子には具足とか刀とか、戦道具を贈るのが慣例じゃなかったっけか?
あ~でも、そういうのって結構お高いイメージがするから、レムアに揃えてもらうのは止した方がいいか・・・。
「なんでもいいよ。レムアがくれるものなら、なんでも嬉しいし・・・」
そう遠くない未来でも、そんな先々のことを聞かれてもすぐには答えらんないから、こう答えるのが無難だろう。
「んんっ・・・。むぅん・・・」
え?なに?
なんかモジモジしたカンジの声がレムアからするんだけど・・・。
「どっ、どした・・・?」
「・・・・・・わたくしでは、いけませんか?」
え~っとぉ~・・・。
それはつまり・・・「プレゼントは、わ・た・し♡」的なこと言ってんの?
・・・・・・シャレ?
シャレで言ってんの?
そんな冗談言う子だったっけ?
もしかして、気まずいこの空気をちょっとでも和ませようと?
だとしたら、こっちもそれなりの返しをしなくちゃ・・・!!
「・・・・・・すっ、すっごいご褒美ダネ!!」
「っ!?・・・・・・・。」
すっ、スベった!!?
なんにも言ってくんないやけど!!?
関西人の身としては、スベんのは遺伝子レベルで許されないタブーなんやけどっ!!!
やから冗談言うの気が引けんねんっ!!
「ふふっ・・・」
「なっ、何よ・・・!?」
「嬉しいこと、言ってくれますね///」
背中を指先で『ちょん・・・』となぞりながら言われて、今度は僕がモジモジしちゃった。
そっから僕は、背中に寄りかかるレムアの鱗と温もりを感じて、中々寝付くことができなかった。
このままじゃ、明日寝不足になっちまうな・・・。
でも不思議かな。
心なしかレムアから、勇気出したようなオーラを感じたのは何故だろう・・・?
◇◇◇
「失礼いたします殿。オリワ領のルータス殿から書簡が届きました」
家臣から受け取った石板にディブロは目を通す。
「そうか・・・」
『ゴトン・・・』と石板を置いたディブロは寂しそうな表情を浮かべた。
「お前様、どうしたのです?」
「ルータス殿から、件の相談ごとの返事が届いた。向こうも呑むそうだ」
「そうですか・・・」
ディブロの言葉を聞き、スディアまでもが寂しげな顔をする。
「最初はただのみすぼらしい地竜の小童だと思うておりましたが、いなくなるとなると、寂しゅうなりますね」
「それだけ奴の存在が大きくなったということじゃろう。だがこの方が、今後の奴のためになる・・・」
感傷に耽るのを止めたディブロは、キリっとスディアの方を見て言い放つ。
「取り決めは済んだ。リオルを人質としての役目を解き、オリワに返上する」




