3章ー1:今日も今日とてお仕事中
こんにちは、リオルです。
暑い日が続いておりますが、皆様いかがお過ごしでしょうか?
異世界は8月を迎えており日本と比べるとちょっと涼しく感じますが、それで汗をかきそうな暑さです。
もっとも、変温動物になっちゃったので汗腺はなく、汗はかかないんですけどね(笑)。
そうそう。
実は最近、五歳の誕生日を迎えました。
一歳の頃にミーノ領に人質として送り出されたので、かれこれこっちで四年過ごしたことになりますね。
月日が経つのは本当に早いですね。
28でこっちの世界に転生したので、魂だけはおっさんなんで一年があっという間です。
ホント、人間年は取りたくないものですね!僕は地竜ですけど。なははっ。
「・・・・・・って~誰に何の話をしてるんだ?」
山を越えた先の農道で、僕は自分自身にツッコんだ。
昔からあれこれ考えることが多く、独り言が出ちゃう性格だったが、うつがマシになってもこればっかりは治らないらしい。
もう個性として受け入れた方がいいのかなぁ・・・。
でもなぁ~。親から「ブツブツ言っててコワい・・・」ってよく言われたから治した方がいいのかも。
こっちのみんなにまで言われたらショックだからな~・・・。
なんてことを悶々と考え込んでる内に、今日の仕事先に着いた。
藁ぶきの屋根に、土で固めた壁の、すり鉢状の民家だ。
「建て替えは問題ないな、ヨシ!」
家の外観を確認した僕は、『トントン』と壁をノックした。
「へ~い・・・おおっ!これはこれはリオル様!」
暖簾から顔を出した家主は、僕の顔を見るなり慌てて応対しだした。
「こんにちは~。新築の出来具合の視察に来ました。どうですか調子は?」
「おかげさまで、日除けになって屋根は風通しがいいので快適に過ごしてやす!」
「奥さんと子ども、それから爺ちゃんには~・・・」
家の中を覗き込むと、家主の番と彼の父親の飛竜がそそくさと頭を下げ、パッチリお目目のオスの雛がペコリとお辞儀した。
「精の付くものを食べさせてるようですね」
「リオル様が持ってきてくれた“魚籠”って言うんですか?あれを川に仕掛けたら魚がいっぱい入ってて!!特にオオズンドウウナギがたくさん!」
「ああ、あの短い筒みたいな大きなウナギですか?アイツ等暗所を好みますから巣だと思って入っちゃうんでしょうね」
「あんなに身がぎっしり詰まったモノを食べたのは生まれて初めてで・・・!!おかげで女房子供とおっ父、すっかり元気になりました~!!」
涙ぐむ家主に僕はほっこりする。
やっぱいいな~。
住民の喜んでる顔を見るのは・・・。
「畑の様子は?」
「ああ、へへい!実は・・・」
ちょっと難しそうな顔をする家主に案内され、僕は家の裏の畑に通された。
「先週刈ったばかりですが、もうこんなに・・・」
切られて枯れたツル草の上から猫じゃらしみたいな植物が大量に生えている。
「あらら~すっかり元通りになってしまいましたね~」
「すいやせん・・・」
「この時期は雑草の成長が速いですからね~。こまめに刈ってくしかないですよ」
「リオル様これと同じのを見たことが?」
「え!?まっ、まぁ一応~・・・」
前世で働いてた養鶏場でだけど・・・。
「今から女房と刈るんでリオル様は休んでて下せぇ」
「僕も手伝いますよ!ちょうどこれを試したかったんで・・・」
そう言って僕が取り出したのは、足首にはめて使う腕輪型の草刈り鎌。
近づけるだけで装着でき、足に大きな振動を与えるだけで外れるドワーフの特注品だ。
両方の前足にはめて実演すると、家の者達から歓声が上がった。
「これなら爪を使うよりスパスパ切れるでしょう?お二人も足首に付けてみて下さい。ただち~とばかし切れ味が良すぎるんで離れてやった方がいいですね」
こうして僕たちは三人がかりで畑に生い茂った雑草を刈ることになった。
欲を言えばガソリン式の草刈り機や除草剤が欲しいところだけど、そんなぜいたく品はこの世界じゃ用意できない。
はぁ~暑い・・・。
でも風が気持ちいいなぁ~・・・。
これが今の僕のお役目、『ミーノ領の農民の生活水準向上』
今日も僕は、喜々として、だけどちょっと夏バテ気味にお仕事頑張ってます。




