2章ーEND:友に贈る言葉
同盟が結ばれてからはトントン拍子に話が進んだ。
まず、カワミ領に支配されることになったトーウミト領はロアードルに与えられ、中枢を担っていた武将たちは全員流刑になった。
本来なら穿心が言い渡されるところだが、スラギア君が温情をかけてくれて命までは取らないことになった。
彼らしい優しい判断だ。
それより下の者たちはロアードルの家臣となってこれまで通り武将として働くことが許された。
敗軍の身としては前代未聞の好待遇だったので、みんな喜んで受け入れたという。
これもスラギア君の知略か、あるいは単なる温情か・・・。
ミーノ領とでは、当初の約束通り最新式の武器と水産物の交易が決まり、オリワ領とでは海岸線を守るため、カワミ側から派兵することが約束された。
一見オリワ領からはリターンがないように思えるが、これにはオリワ領が西からの攻撃が来た場合の防波堤の役割をしてもらうという意味が込められており、派兵はその戦力増強のためだ。
持ちつ持たれつ・・・あくまでギブアンドテイクな関係を築くのが目的だ。
まぁこっちも、貰いっぱなしってのは申し訳ないから・・・。
とまぁ~そんなこんなで諸々決まって、バケットガップ海峡の戦いから一週間後、役目を終えた僕たちがカワミ領を出立する日が来た。
見送りにはスラギア君、クルラさん、ウナトゥ、ロアードル、ガブナチャが来てくれた。
「色々あったけど、お世話になりました!」
「何を言う~!世話になったのはむしろこっちの方じゃ!今度はゆるりと羽を伸ばしに来るがいいぞ」
「はいっ!そうさせて頂きます。また飲み合いましょうね!イネウミブドウ酒」
「ははっ!そうじゃな!」
笑い合う僕らの横で、ウナトゥはレムアに何か渡していた。
手のひらサイズの盆栽みたいな、だけどまるで、水色のイソギンチャクが陸に咲いてるようなとっても綺麗な物を・・・。
「これは、生け水花・・・」
「あなたを思い浮かべて生けてみました。どうかお受け取り下さいまし」
「あっ、ありがとうございます!」
へぇ~あの二人そんなに仲良くなったんだぁ・・・。
「おっとそうじゃ。これ、返しておかないとな。ゴタゴタで忘れておった」
スラギア君は僕に、バケットガップ海峡の戦いの戦いからずっと借りっぱなしだった守り爪を返した。
「どうです~?めっちゃ効いたでしょ?それ」
「そうじゃな・・・」
また救われちまったな・・・。
ありがとな、僕の初めての男友達、守ってくれて・・・。
自分の指にはめ直しながら、僕は守り爪に感謝した。
「そっ、そうじゃ!最後にこれだけは言っとかんとなっ」
しめっぽい雰囲気を払拭しようと、スラギア君は僕と、どういうことかレムアを並べた。
「なっ、何でしょうか・・・?」
「友として助言してやろう。『恋は急げ』!!ご両人、がっつくのも時に必要じゃぞ?」
「っ!!?」
僕は『かぁ~!!!』と顔が熱くなるのを感じた。
「なんだなんだ?何の話だ?」
「ふふっ。ルータス様、初孫の顔を見るのはそう遠くないと思いますよ?」
クルラさんまで何言ってんの!!?
「とっ、殿と父上もさぞお疲れなため!!これでお暇させて頂きますっ!!」
めちゃくちゃ恥ずかしくなった僕は、ディブロとルータスに急いで帰るように促した。
「達者でのぉ~!!」
後ろから聞こえるスラギア君の声に、僕は振り向かずに手をブンブン振った。
◇◇◇
「愉快な男であったな、スラギア」
「そっ、そうでしたねっ!」
聞いてくるルータスに、僕は引きつった笑顔を見せた。
なんで最後にあんなこと言い出したんやろ?
おかげでエモい空気が台無しになっちまったやんか~・・・。
「れっ、レムアびっくりしたよね~!?いきなりあんなこと言われてさぁ~?」
「・・・・・・・。」
なんでそっぽ向いたままなんだよ~・・・?
「りっ、リオル様・・・」
「なっ、なに!?」
やっと口をきいてくれたレムアに、僕はホッとした。
「お帰りになる頃には夜になります。夕餉は何にいたしましょうか?」
「そっ、そうだな~・・・!二足牛の水炊き鍋かなぁ~?最近ちょっと寒くなってきたし。ポン酢でキュッといきたいよね~♪」
「・・・・・・承知いたしました///」
「うっ、うん。ありがと・・・」
・・・・・・なんだ?
なんだこの、今までにない空気は・・・。
レムアと並んで歩く僕は、心臓をくすぐられるような、これまで感じたことのない気持ちを味わっている。
「『恋は急げ』か・・・」
「ん?なんか、言った?」
「いいえ。なんでも、ござりませぬ///」




