2章ー37:三竜の訓
バケットガップ湾でのトーウミト・シノナ連合軍との戦いで勝利を収めた僕たちは、同盟を結ぶための正式な手続きをするために、巻牙城巣に集まっていた。
「此度は、我が国の窮地を救うために馳せ参じてくれて感謝の限りじゃ。本当にかたじけない・・・!」
スラギア君、クルラさん、ロアードル、ガブナチャの四名のカワミ領の代表は僕、レムア、ルータス、ディブロに深々と頭を下げた。
「いいってことよ!これから付き合っていくご近所さん同士だぜ?助け合うのはあたりめぇだろ?」
畏まったスラギア君に対し、ルータスは朗らかに答えた。
「カワミにとって目の上のたんこぶであったトーウミトを滅ぼすことができ、中部に我らの団結の力を見せつけられて上々に思う。ただ、心残りはあの愚か者を取り逃がしたことじゃ・・・」
バナデウスが討たれた後、ゲレドは毒ブレスをまき散らしてディブロ達がひるんだ隙に逃げたという。
ホント往生際が悪ぃなアイツ・・・。
「そう気にすることはありませんよ、ディブロ殿。自分の立てた策が、かえって裏目に出たのですからゲレドはシノナに逃げ帰っても処断されるでしょう」
「そうか・・・。じゃが、諦めが悪い彼奴のこと、また何か仕掛けてくるやもしれん。特にこの場に揃った全員を恨んでおろう・・・。警戒するのに越したことはなかろうて」
ディブロの注意にルータスはちょっと緊張した顔になって、僕もハラハラした。
性根が腐ってるアイツが、何かしらの報復をしてくる可能性は十分あり得る。
とにかく、用心はしたほうがいいな・・・。
「おっ、おほん・・・!でっ、では改めて!我が国とミーノ、そしてオリワの同盟をここで正式に結ぼうではないかっ!」
スラギア君がそう言うと、ルータスが部屋の真ん中に条文が書かれた石板を持ってきた。
最後のところには既にスラギア君の名前が爪で彫ってある。
あとはディブロとルータスの名前を書けば同盟成立だ。
「では御両名の名を刻む前に、リオル」
え?
僕?
「この同盟の発起人として、何か景気づけをしてくれまいか?」
「ええっ!!?」
僕は慌てて立ち上がった。
だって張り詰めた場の空気を良くするためにスピーチやってくれっていうんだから・・・。
「お願いしますっ!リオル様♪」
「まっ、まぁ~ウチの息子が言い出さなかったら俺達がここに来ることもなかったしな!」
「重い役回りじゃな。しかし言い出した者が詞を述べることも、またケジメ・・・」
えっ、え~・・・。
逃げらんないなぁ~・・・。
何かいいスピーチはないかぁ~・・・?
ん~・・・《《三頭の竜》》、《《三頭の殿様》》・・・。
あっ!そうだ!!
閃いた僕は庭に飛び出し、そこらへんに落ちてた枝を拾ってきた。
「ここに、一本の枝がありますね?一本だと・・・ふん!簡単に折れてしまいます。ところがこれが三本になると・・・絶対に折れません」
「おお・・・!」とスラギア君とレムアから称賛の声が上がる。
「つまりこの枝は、我ら三国の結束を示しておるのか?」
「それだけではありません、ディブロ様」
「他に意味があると?」
「ええ。この枝、よく見ると三本ともに長さが違いましょう?地竜も、水竜も、飛竜と一緒です。三者三葉・・・みな姿形や住んでる場所は違います。だけど団結することで、絶対に折れず、どんな危機にも折れず、逆に弾いてしまえる。今回の戦いがそれを物語っております。つまり、僕たちの未来はそんなに悪くない・・・っていうことです」
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「・・・・・・ふっ。そうじゃな」
「さすがですリオル様!!三つの竜の結束の力を、長さの違う枝で表すとは!!」
「見ない内に随分口が達者になったな~」
「どっ、どうも~・・・」
何とか乗り越えることができた。
僕がみんなに見せたのは、団結を表わすのにポピュラーな『三本の矢』。
奇しくもここに集まったのは亜竜族の三種に三国の殿様。
だったらこれ以上にピッタリな例えは他にないだろう。
ちょっと僕流にアレンジ加えてみたけど・・・。
「リオル」
「はい、スラギア様」
「・・・・・・深い詞であり、教えじゃった。おかげで気も引き締まり前向きになれた。ありがとう」
「いっ、いえいえ!」
感謝は僕にじゃなくて毛利元就にしてほしいな~戦国武将の。
確かあの人が息子らに言ったのが元ネタだったよな?
「ではディブロ殿、ルータス殿。石板に署名を」
ディブロとルータスが石板に爪で署名を彫った。
「我らの結束を大いに祝おう!!」
僕たちの部屋にお女中さん達がお酒と料理を持ってきて、そのまま戦勝会に突入した。
こうして『シノナ南部包囲網』の先駆けとなる『三竜同盟』が結ばれたのだった。




