2章ー22:それぞれの帰郷
カワミを出発してから半日後、僕とスラギア君はオリワの領土に入った。
昼に出発したからすっかり夜になってて、草むらから鳴き虫たちの声がする。
そっか・・・もう夏も後半戦だしな。
「ここがオリワ領か・・・」
岸にボートを停めたスラギア君が辺りを見回す。
自決の証拠として噛み千切った尻尾は、断面からちょびっと新しい尻尾が生えだしてきた。
意外と回復が速くてちょっとビックリする・・・。
「殺風景な国じゃのう」
ちょっ、初見の感想がソレ~!?
まぁ確かに、森より草原が多くてサバンナみがある土地だけど・・・。
「こっ、これから栄えてくんだからいいですよっ!!」
「そうじゃな。カワミとミーノが友誼を交わすことで、この国がどのように発展するのか見ものじゃ。それに・・・お主は独創的で良き目の付け所を持っておる。あっと驚くような策を持ってくるやもしれんのぅ~」
「えっ?そっ、そうっすか・・・?」
半分冗談気味に「君面白いね~」って言われて、僕は胸がほわほわする。
自己肯定感の低いうつ持ちは、他人の良くも悪くもな言葉に人より重めに捉えてしまうんだ。
「では、お主の生家まで案内してもらおうか?」
「はっ、はい!!じゃあこちらへっ!!」
スラギア君に褒められて、僕は声を嬉しく弾ませて彼を案内した。
道を進むごとに段々見慣れた景色が広がって、僕はノスタルジックになってきた。
僕は大阪出身で、新幹線で帰省をすると新大阪駅の隣の京都駅に停まった時に、なんとも表現できない気持ちになる。
「ああ、もうこんなところまで来てしまったなぁ~・・・」って。
まさに今そんな気持ちだ。
そしてとうとう、僕が生まれた城巣の前の町まで到着した。
門には篝火が焚いてあって、番兵二頭が警備していた。
帰ってきた・・・。
「むっ!そこの童達よ。こんな夜更けに何を出歩いておる?」
門に行こうとすると、気付いた番兵が近づいてきた。
「道にでも迷うたのか?お主、どこの子じゃ?」
近くまで寄った番兵たちは、僕と一緒のスラギア君にハッとした。
同じ四足歩行だったから、どうも地竜だと勘違いしたらしい。
「りっ、水竜!?どうしてこんなところに・・・。お主ら一体何者じゃ!?」
見慣れない別種の亜竜族を前に、二頭の番兵が一気にピリつきだした。
門の騒動を聞きつけて、町の住民たちもこっちを凝視しだした。
「詳しい話は後で!!とにかく今は父上に会わせて下さいっ!!大至急話したいことがあります!!」
「父上?一体何のことを言っておる!?」
「んっ?その赤い甲殻・・・。もっ、もしや!?」
二頭の内一頭が、目を凝らして僕を見た後、急いで『伏せ』の姿勢を取った。
「わっ、若様っ!!」
もう一頭の番兵も僕のことを思い出したらしく、同僚と同じ姿勢になった。
ふぅ、よかった。
これでやっと話が進む。
「わか、さま・・・?」
門から一頭の地竜がゆっくり出てきた。
僕と同い年で緑の甲殻を持った女の子。
この世界で僕に『一歩踏み出す勇気の大切さ』を教えてくれた、忘れられない大事な幼馴染・・・。
「ルビィ・・・」
「若様・・・!!」
ルビケットことルビィは僕の方に向かって走っていき、顔を擦り付け合いながら僕たちは半年ぶりの再会を喜び合った。
「ずっと・・・ずっと遠くから、お慕いしておりました・・・。またこうして会えるなんて・・・まるで夢のようです・・・」
「・・・・・・うん、ただいま」
不器用かな、泣いてる女の子にかけてあげる言葉が未だによく思いつかない。
そんな自分にムッとする・・・。
だけど、「ただいま」って言った僕に、ルビィは泣き腫らした笑顔で「お待ちしておりました・・・」って返した。
言葉選びが合ってたみたいで、僕はちょっと嬉しくなった。
「ほうほう~。ずいぶん女子に好かれてるようで隅に置けんな~」
背中越しに茶化すスラギア君に、僕はそっと「うっせ」って思った。
◇◇◇
遡ること数時間前。
早掛けでミーノ領へと戻ったレムアは、息を切らして金砂城巣の門まで辿り着いた。
「はぁ・・・!!はぁ・・・!!」
「なっ!?レムア!?」
疲労困憊のレムアのところへ、城の散策に出ていたティアスが近づいてきた。
「リオルとともにカワミへ出ていたのではないのか!?」
「ひっ、姫様・・・!!すっ、すぐに殿と奥方様のところへわたくしを・・・!!かっ、カワミが・・・カワミに危機が・・・!!」
只ならぬ予感がしたティアスは、近くの兵にレムアの介抱を命じ、ディブロとスディアの許へ一緒に向かった。




