2章ー20:焼け焦げた友情
その顔からして、「やっぱり・・・」と内心どこかで思ってたけど・・・。
思ってたけど、やっぱり・・・やっぱり・・・。
「・・・・・・嫌だ」
ボソッと呟いた僕に、スラギア君は眉一つ動かさなかった。
「スラギア様・・・。待って、下さい・・・。絶対僕がいい案を考えますから・・・。カワミ軍が一発逆転できる方法考えますからっ!!」
「舌先三寸の貴様から聞くことは何もない。我が領土、我が民のため、喜んで犠牲になるがよい」
よろよろと近づく僕を、スラギア君は容赦なく突っぱねた。
「ぼっ、僕たち・・・!!同じ志を持った友達ですよね!?サンブロドに天下太平の世を築こうと誓い合った仲ですよねぇ!!?」
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「忘れたわいそんな些事。厄介者を抱える身にもなれ」
ゴキブリでも見るかのような目で言い放つスラギア君。
それで、僕の中の何かが切れて、ドス黒い感情が溢れ出た。
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「お前も僕をそんな目で見んのかよっ!!?僕すっごく嬉しかったねんぞっ!!同じ夢持ってる男の子と仲良うできてっ!!腫れモンになったらポイ捨てかコルァ!!!なんで・・・!!なんで僕ばっかこんな目に遭わなアカンねん・・・!!!」
スラギアに掴みかかった瞬間、『バチッ!!』とした強烈な痛みが全身に走ったと思ったら、力が一気に抜けた。
スラギアの背中が光ってるのを見るに、どうやらスタンガンみたく感電させられたらしい。
「リオル様っ!?おっ、お前ええええええええええええええええええええ!!!はぐぅ・・・?!」
怒りを剥き出しにスラギアに向かってったレムアも、同じく感電させられ気絶した。
「縛れ。トーウミトの陣地までわしが運ぶ」
そう聞いたのを最後に、僕の意識は遠のいていった。
◇◇◇
「うっ・・・ううん・・・」
目が覚めると僕は、レムアと一緒にボートに乗せられていた。
引っ張ってるのは・・・スラギアだ。
「レム、ア・・・おいレムア・・・!!」
「うっ・・・!リオル、様・・・」
電撃で気絶させられて、頭がボーっとする。
それはレムアも同じらしい。
僕たちは今、スラギアが言ったようにトーウミト領に差し出されようとしている。
逃げようにも足は四本とも前手で縛られるし、そもそも海の上だから逃げようがない。
「申し訳ございませんリオル様・・・。わたくしが力及ばないせいで・・・」
「レムアのせいじゃないよ。運がなかったんだよ。僕の・・・」
そう。
“運がなかった”だけ・・・。
いっつもそうだ・・・。
「仲良くなれたぁ~♪」って思っても、結局は一方通行。
素を見せたり誤解があったりしたら、すぐ離れてしまう・・・。
今回だってそうだ。
ゲレドがシノナ軍を率いて軍事介入なんかしなかったら、きっと僕はスラギアと、なあなあでも仲良くできてたんだ・・・。
毎度のことながらバカみたい。
勝手に親友認定して、勝手に「裏切られた」って思って・・・。
同年代とはいえスラギアは・・・スラギア君は一国の殿様なんだ。
そんなお偉いさんが、僕みたいな、まぐれで旗本に成り上がった奴に、友情なんか感じるはずないんだ・・・。
背負ってる物が、僕とは違い過ぎる。
でも、こんな形で終わるなんて・・・。
「・・・・・・もう嫌や。どうせ殺されるんならここで死にたい・・・」
「リオル、様・・・」
縛られたままゴロゴロ転がって、海に身投げのが頭をよぎった、その時だった。
スラギア君が泳ぎながらヒレ状の尻尾で僕の縄を手馴れた・・・いや、尾慣れた仕草で・・・切った。
一瞬戸惑ったが、僕はさっき冷たく突き放された怨みで後ろからスラギア君の首を両腕で締め上げた。
「うぐっ・・・!?」
「さっきはよくもあんなことを・・・!!!」
「きっ、気持ちは分かるがリオルよ落ち着け!!」
「今更「落ち着け」って言われても無理やろうがっ!!!」
「とっ、とにかくわしの話を聞けぇ・・・!!」
「聞けるかボケがっ!!!」
絞め殺す勢いで押さえ込んでると、また『バチッ!!』と電流が走って、僕はボートの上で倒れた。
だけどさっきと比べると低威力で、気絶せずに済んだ。
横たわる僕をボートにブロックする格好で、スラギア君が上に乗っかってきた。
「リオルっ!!!」
「何だよっ!!?」
「・・・・・・母上が言っておったじゃろう?「心に身を任せよ」と。これがそうじゃ・・・!!」
「・・・・・・スラギア君?」
僕を甲板に押さえるスラギア君は、さっきの冷たい眼差しとは打って変わって、若干怒ってるような真剣な目をしていた。
「さっきのは・・・芝居じゃ」
「しっ、芝居・・・?」
僕からどいてレムアの縄もほどいてくれたスラギア君は、どっと疲れて僕の隣でゴロンとなった。
「ロアードルまで騙すのは初めてじゃったから、心の臓が胸を裂くほど緊張した・・・」
「スラギア、君・・・」
「すまぬことをした。どうか、許してくれ・・・!!」
起き上がって、頭を深々と下げたスラギア君は泣きながら謝ってきた。
「スラギア様、どうして・・・」
「そっ、そうだよ!なんでそこまで・・・」
スラギア君は長い首をゆっくりと持ち上げて、泣きながら歯を食いしばった顔を見せた。
「わしは最後まで戦う・・・。友と引き換えの安寧など糞くらえじゃっ!!!」




