2章ー10:交渉の結果
ディブロ直筆の書状を受け取ったスラギア君は、驚きつつも文を目で追う。
「どっ、同盟じゃと!?ミーノ領とでか!?」
ロアードルが身を乗り出して質問する。
興味をそそられたのか、あるいは・・・。
「リオル・・・殿」
「はい。何でしょうスラギア様?」
「ディブロ殿は・・・シノナ領と事を構えるつもりか?」
「まさか。ただ聞き及んでいるかもしれませぬが、半年前、我が国はシノナに攻め込まれました。トダンを滅ぼし、我がミーノにまで攻め入った以上、シノナがサンブロドの東側を治めようとしていることは明白です。最早これは、蛮行としか言い様がありません。事ここに及んだ以上、他国どうしでつまらない小競り合いはせず、手と手を取り合い、シノナを牽制しようというのが我が殿のお考えにございます。どうか、前向きにご検討して頂けないでしょうか?」
ぶっちゃけ僕は、軍事的な交渉が何たるかは知らない。
だって政治家はおろか、営業職にも就いたことがないんだから・・・。
だけどざっくりとした流れは知ってると思ってる。
まずは単刀直入に切りこんで、相手の出方を窺う。
「う~む・・・」
提示された用件に、スラギア君は頭を捻る。
やっぱり僕とほぼ同い年で殿様になった身としては、こんな大きな決断パッとできないか・・・。
「どうにも解せません」
クルラさん?
「どこが解せないというのですか?」
「ミーノ領はこれまで他国と同盟を結ぶことに消極的でした。なのに急に、中央南部の諸国と同盟を結ぶことに積極的になられた・・・。何か心変わりするきっかけでもおありだったので?」
舐めるような視線を送るクルラさんに、僕は「ゴク・・・!」と固唾を飲む。
母親として、家督を継いだばかりのスラギア君を支えてるだけのことはある。
侮れない・・・。
「それについては、わたくしから」
レムアが手を挙げた。
「ここにおられるリオル様は、シノナとの戦の際に敵将を討ち取って、その功績として人質から旗本に召し抱えられたお方です。実は・・・書状にある同盟によるシノナ領の牽制は、このリオル様が殿にご提案されたものでござります。リオル様の案に、殿はご賛同の意を示して下さり、わたくし達はここに馳せ参じた次第でございます」
「人質・・・。ではあなたがオリワ領の・・・」
クルラさんが言わんとしてることに、僕はコクっと頷いた。
「なるほど・・・。でしたら興味深いものです」
「はっ、はい?」
「同盟を担保するはずだった人質が旗本に任ぜられ、あまつさえ他国への使者として遣わせた・・・。あなたには、あの角石頭を心変わりさせるだけの何かがあるということかしら?」
『角石頭』って・・・。
まぁちょっと頭固いトコはあるけれど・・・。
「いえ~僕にはそんな魅力なんて!!ただ戦の際に敵に捕らわれた姫を救いに単騎で敵の陣地に乗り込んだけなのに・・・」
「それで敵将を討ち取ったというのか!?」
僕の功績に、スラギア君がものすごく食いついてきた。
「えっ、ええ。三日も寝込むくらいボロボロになってしまいましたけど・・・へへっ」
「そうか・・・」
スラギア君は何か考え込むように俯いて、キリっとした顔で僕の方を見てきた。
「此度の同盟の件・・・一旦預からせてはもらえんだろうか?」
「えっ・・・!?お気に召さなかったでしょうか!?」
「いや、そうではないのだ。リオル・・・お主のことをもっと知りたい」
「は?え?」
「今夜わしと、サシで夕餉に付きおうてはくれぬだろうか?その席で、色々と語りたい」
「わっ、分かりました・・・」
他国の殿様と1対1で晩ごはんかぁ~・・・。
なんかすごいことになったな・・・。




