2章ー2:旗本の受難
「ただいまぁ~・・・」
中庭での和歌の詠み合いが終わった僕は、レムアと一緒に屋敷に帰ってきた。
スディアからの褒美のウタガラスを持って。
「お風呂になさいますか?それともご夕食を?」
結婚したての夫婦のテンプレなやり取りを転生先でやるとは・・・。
だがレムアとは飽くまでも屋敷の主人と侍女の関係・・・。
いちいちのぼせてどうするっ!
「先にご飯にするよ。お腹空いちゃってさぁ~」
「かしこまりました。ではすぐお持ちいたしますね」
ここキッチンがないから、料理する度に城に行かなきゃだから不便だよな~・・・。
でもレムアは、30分もしない内にご飯持ってくるからすごいよな~!
「お待たせいたしましたっ!」
ほら今日も!
ものの20分くらいで天ぷら盛り合わせ持ってきたよっ!
一体どこにそんなバイタリティを隠してるんだ?
「どうかなさいましたか?」
「あっいや別に!ポン酢作るの上手くなったなぁ~って」
「はい!リオル様に教えて頂いた調合法を基に鍛練を積みましたからっ!」
こないだレムアにポン酢の作り方・・・といっても結構テキトーなレシピを教えたら、レムアはメキメキと腕を上げていった。
今となっては僕が前世で味わってきたものとほとんど変わんない。
ポン酢は僕にとってのオールマイティアイテム。
天ぷらにも、お刺身にも、お鍋にも、ご飯にだってかけられる。
レムアがポン酢作りの腕を上げていってるのは、すごく嬉しい。
いつもと同じようにレムアと向かい合って、「いただきます!」って言うと僕達は夕飯を食べ始める。
「それで、いかがでしたか?軍議の方は」
「全っ然まとまんなかった・・・」
僕がミーノ領の旗本に任命されてから半年が経ち、今のミーノの急務の課題になってるのは・・・『シノナ領への対応について』だ。
前回の戦ではとりあえずの勝利を収めたが、領土拡大を狙うシノナが、またいつ攻めて来るか分からない。
今ミーノでは、シノナに対して先制攻撃を仕掛けるか、守りを固めるかで意見が真っ二つに割れている。
そして不運なことに旗本としての僕の仕事は・・・もしシノナ領が再侵攻してきた時の対応策を立てること。
最初の内は張り切ったものの、やはり余所者の地竜が急に旗本に成り上がったことに、他の家臣は面白くないらしい。
何か意見を言おうものなら、却下されるか遮られるかなんてことはしょっちゅう。
とりあえず今は、ディブロの右腕で、僕のお目付け役に命じられたボロスさんの仲立ちで、『ミーノ領とシノナ領との国境の見張りを倍増する』という形で家臣のみんなを納得させているが、それでは問題を先延ばしにしてるだけに過ぎない。
はっきり言って、今回スディアが主催した短歌の詠み合わせも、イマイチ一枚岩になってない家臣の緊張を緩和するためのものだったと思ってる。
「やっぱり僕には、旗本なんて務まらなかったんかなぁ~・・・」
「そんなことないですよっ!リオル様は姫様を捨て身でお救いし、ひいてはミーノをお救いした立役者。だからお館様はリオル様を旗本に取り立てて下さったのですっ!」
「でもさぁ~・・・僕ってアレじゃん?外様だよ?おまけに地竜だし・・・」
「外様だとか地竜だとか関係ありませんっ!リオル様には若輩ながら秀でた才能がおありです。それはわたくしが、一番よく存じております。だからドン!っと構えて下さいっ!」
「・・・・・・ありがと」
あの一件以来、レムアはすっかりイエスマンになって、僕のやることにノーとは言わなくなった。
だけど僕がウジウジしてると、ケツを蹴り上げるように僕を励ましてくれる。
だから僕は、「頑張ろう・・・!」って思うことができる。
レムアにとって、僕は英雄なんだ。
家族の仇を倒して、生きる意味と希望を見出してくれた・・・。
自分でこんなこと思うのは自画自賛過ぎてどうかと思うけど、それでもレムアが僕に期待してくれているのはすごく伝わってくる。
だったら僕も・・・それに応えなくちゃ。
「僕も、いつまでも家臣どうしが意見のぶつかり合いでいがみ合って、シノナへの対応策がまとまらないのはダメだと思う。だから、自分なりにどうすればいいかザックリとだけど案はあるんだ」
「そうなんですか?それは一体どのような?」
僕は深く息を吸って、レムアに僕が立てた作戦を発表する。
「・・・・・・『連合軍による牽制』だよ」




