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1章ー27:うつ持ち二人の反撃

 レムアが・・・ここにいる。


 僕が守り爪を渡して、サブいぼが立つくらいイキったセリフを言って、一方的に別れを告げたレムアが・・・僕に覆いかぶさっている。


 こっちが心配になってしまいそうになるくらい、大粒の涙を流して・・・。


「レムア、さん・・・?危ない、ですよ・・・?」


 ちょっとボーっとするくらいになるまで段々とはっきりしてきた頭で、僕はレムアに「今更?」ってツッコまれそうになることを言った。


 そうだな・・・。


 寝ぼけて夢と現実の区別がつかず、自覚した状態で寝言を言ってる、アレと似ている。


「今になって言うことですかぁ・・・?それ・・・」


 泣き腫らした顔で、レムアは僕が思った通りのツッコみを入れた。


「まぁ、そうだわな・・・って!?ちょっと!!!」


 ようやく三半規管が治った僕は、レムアがこの場にいる状況を理解して、彼女を突き飛ばしてガバっと起き上がった。


「レムアさんなんでここに!?逃げたはずじゃ・・・!!」


「そうですね。リオル様と別れた後、わたくしは言われたようにオリワ領を目指しました。リオル様の口利きなら、食と住には困らないと考えて・・・」


「だったらなんで・・・!!戻ってきたんだよ?」


「・・・・・・リオル様は、ずるいです」


「へ・・・?」


「仰いましたよね?「自分も逃げてばかりだった」って。あの時のリオル様、すごく物悲しいお顔をしておりました。その時のわたくし、鏡を見ている気分になったのです。その時思ったのです。「リオル様とわたくしは似た者どうしだ」って・・・。同じ恐怖と雪辱を味わったからこそ、わたくしに優しくしてくれる・・・。そのようなお方が、恐怖を隠さず、向き合う姿勢を見せたら、引くに引けなくなってしまうじゃないですか。何よりわたくしに、寄り添って、奮い立たせてくれる守り爪まで下さるなんて・・・」


 レムアは僕が上げた守り爪を、優しく撫でる。


「だからわたくしがここにいるのは、リオル様のせいですっ!!」


 満面の笑みで「僕のせい」って言ってくるレムアに、僕は耳らへんが一気にカーっと熱くなるのを感じた。


「誰かと思うたら、随分懐かしい顔に会うたではないか」


 僕とレムアはハッとして、ガラルガの方を見た。


 そうだ!!


 コイツとレムアを会わせるワケにはいかない!!


 だってガラルガは、レムアの故郷を滅ぼして、家族を・・・!!


「あなたが此度の戦の敵将ですね?わたくしをご存じで?」


「その勇猛さ溢れる眼・・・。お前の父オレイも、わしに討ち取られるまでそのような眼をしておった。兄のライオは・・・情けのう泣きっ面だったか?」


「・・・・・・お前が、父上と兄上を!!!」


 案の定レムアは、家族の仇だと知ったガラルガに、激しい憎悪と殺意を向けた。


「わしが憎いか?トダンのかつての姫君よ。じゃがどうした?足がすくんでおるぞ?」


 レムアの足はガクガクと震え、とても立ち向かえるようには見えない。


「わっ、私は・・・」


 さっきまでの怒りが徐々に冷めていき、代わりに恐怖を露わにするレムアに、ガラルガはニヤリと笑った。


「そうとも。恐れるだろう。地竜ドレイクの分際で、しかも女子おなごの身で、どうやって飛竜ワイバーンの軍勢を率いる大将に立ち向かえる?」


「うっ、ううっ・・・」


 怯えたレムアは、嘲笑うガラルガに反論できないでいた。


「同種のわっぱを身一つで助けたその雄姿は褒めて遣わす。その時点で、貴様の闘志の灯火は燃え尽きたと知れ!貴様一人では、一族の仇は取れまいて」


「・・・・・・一人じゃないぜ」


 レムアと肩を並べる僕に、ガラルガは微かに目を見開いた。


「ほう?まだやる気か?その身体で」


「当然だ。なんせ僕には、心強い味方がいるからな」


「味方?その女子おなごか?」


「ああ。教えてやるよガラルガ。うつ病持ちがどういう時に前向きになって、勇気を振り絞れるかを。それはな・・・同じ痛みを知ってる誰かが傍にいてくれた時だ。僕は前の人生じゃ、そんな人には会えなかった・・・。でも、今は違う。僕の傍には、僕以上の苦しみをした人がいる。そんな人が命を救ってくれて、震えるほど怖いのに家族の仇と向き合ってるんだ。だったらズタボロの身体にムチ打ってまでも、立ち上がるしかないじゃねぇか」


 ・・・・・・何言ってるか分からんって顔してんな。


 そりゃそうだ。


 この世界にはうつ病も、異世界転生っつう概念もないんやから。


「リオル、様・・・」


 感慨深そうに僕を見つめるレムアに、僕は笑いかけた。


「ぶっちゃけ今でも、勝てるかどうか分からない。だけどさ、いっぺん手合わせしてみて、もしかしたらイケんじゃないかって思えるトコまできてんだ。だからレムアさんの恐怖、僕に分けてくれないかな?二人でビビったらちょっとは気持ち楽になると思うよ?気持ちが後ろに引っ張られた時、誰かがそれを負担してくれたら、少しくらい前に進めるって僕は思ってる」


 ・・・・・・・。


 ・・・・・・・。


「最後まで、付き合ってくれますか?」


「望むトコだよ」


 一緒に頑張ろう。


 同じうつ持ちどうし・・・さ。

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