表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/209

1章ー13:狂気に立ち向かう子ら

 牢に入れられてから三日後の朝。


 いよいよレムアの『千切り首』執行の時がやってきた。


 処刑されるのはレムアだけのはずなのに、何故か僕まで連行された。


 考えるに・・・デモンストレーションのつもりなんだろう。


「次やらかしたらこうなるぞ」って言いたいらしい。


 番兵に連れて行かれ、僕とレムアはお白州の場へとやってきた。


 時代劇で裁判や拷問、そして処刑が行われる、アレだ。


 舞台の上にはディブロが座っていた。


 殿様というよりは、お奉行様といったような出で立ちだ。


 ディブロが顎を『くいっ』とやると、レムアがお白州の場に引っ立てられた。


 番兵に足で押さえられ、レムアは強制的に『伏せ』の姿勢を取らされる。


「下女レムアよ。貴様は我が妻スディアの嫁入り道具である叔父上の御骨ごこつを誤って割り、あまつさえそれを共に勤めをしていた侍女に擦り付けようとした」


 ディブロが睨みを利かせ、レムアの罪状を述べた。


 曇り空が一瞬ピカっと光って、『ゴロゴロ・・・』と響く音がした。


「何か申し開きがあれば言ってみよ」


 ・・・・・・・。


 ・・・・・・・。


「御骨を割ったのはアケス様でござりまする。わたくしではありません」


 いつものような平坦・・・いや。どこかめんどくさそうにレムアは主張を変えなかった。


 まるで、「早く殺して下さい」と言ってるかのように・・・。


 必死に弁明しないレムアに、ディブロは深い鼻息をした。


「残念じゃ。せっかく助かった命をかように粗末にするようなど。父母と兄も、さぞあの世で嘆いていることじゃろう・・・」


「お気遣い痛み入りまする。ですがご安心を。身内を見捨て、おめおめと生き永らえたわたくしは、地獄の業火に焼かれることでしょう。全ての咎は、そこで苦痛とともに清められまする」


「・・・・・・・。」


 ディブロは脇に控えていた処刑人に、レムアの刑を命じた。


 レムアの顔に、白い布がかけられようとした、その時だった。


「父上!お待ちをっ!!」


 ティアスがお白州の場に飛び込んできて、レムアの前に立ち塞がった。


「ティアス!何をしておるのじゃ!?」


 娘の突然の来訪に、さすがのディブロも驚きを隠せないでいる。


「子どものお前には見せられぬ場じゃ!早々に立ち去れっ!!」


「いいえできませぬ!!詮議も満足に致しておらぬのに、千切り首に処すなど狂気の沙汰でござりますっ!!」


「っ・・・!」


 娘にきっぱりと言われ、ディブロは「ぐっ・・・!」と口をつぐんだ。


「レムア聞いてくれっ!」


 父親にド正論をかましたティアスは、レムアの方を向いた。


「其方が戦で一人生き残ってしまった重責の念・・・わらわにはその全てを理解することなどできぬ。じゃが其方が死ぬことで何の解決になろうか!?わらわにはそっちの方がさっぱり分からぬっ!!かような愚かなマネをして、血筋を絶やさんと護ってくれた父上と母上、そして兄上が浮かばれるのか!?断じて・・・!!断じてそのようなことなどないぞっ!!!」


 搾り出した声で、ティアスはレムアに断言した。


 姉妹同然に育ってきた二人だ。


 死んでほしくないと心から思うのは、間違ってない。


「姫様。姫様がわたくしの身を案じて下さること、心より嬉しゅう思います。侍女として、これほどまでに誇りに思うことはございません」


「でっ、では・・・!!」


「でもご安心を」


「え・・・?」


「・・・・・・わたくしなんかより、もっと良い侍女が傍付きになってくれますよ」


 とても作り笑いではない晴々とした笑顔で、レムアはティアスに言った。


「っ・・・!!こっ、この不孝者がぁ!!!」


 殴りかかろうとしたティアスを、ディブロが召喚した番兵が取り押さえた。


「姫様!どうかお退き下されっ!!」


「いやじゃ!!レムアの大馬鹿者がぁ!!!」


 怒って泣き喚くティアスを、番兵が必死になだめる。


 その間に、レムアの顔に布がかけられ、処刑人がレムアの首に噛み付き、胴体と頭をがっちり押さえる。


 頭と胴体を引っ張りながら、首を思いっきり引き千切るつもりなんだ・・・。


 ・・・・・・・。


 ・・・・・・・。


「おっ、お待ちをっ!!」


 怖くて堪らなくなった僕は、声を張り上げてレムアに行なわれる処刑を制止した。


「なんじゃリオル?お主も何か言いたいのか?」


「えっ、ええっ!!ありますよ!!姫様の仰る通り、ロクに真偽も確かめず、刑を下そうなどと、一国の主にあるまじき所業でございますっ!!どうかここは、もう一度事の真相をお調べになってから沙汰を下すべきではないでしょうか!?」


「オリワ領の者であるお主に、我がミーノの問題に口だしされては困る。これは我が領土で起きた問題なのじゃ」


「・・・・・・か弱い女子おなごを無実の罪で処刑する狂気の国に、未来などありましょうかっ!?」


「・・・・・・なんじゃと?」


 ディブロの目つきが一気に鋭くなった。


 だけどここで負けたら、レムアは・・・。


 ・・・・・・一歩踏み出せ。


 怖くて怖くてしょうがなくても・・・!!!


「一国の主であれば残酷で、義を通さなければならない決断をしなければならないでしょう。ですが・・・領主の前に、武将の前に・・・ただ一匹の竜として、大切にしなければならないことがあると、私は考えます!命を重んじ、弱き者を守り、自分以外の誰かに優しくすべきであるとっ!!地竜ドレイクだとか、オリワからのよそ者であるとか、そんなの大した話じゃないですかっ!!私は・・・僕はこのサンブロドに生まれた一匹の竜として、ディブロ様。あなた様の行ないを非難します!あなたのしようとしていることは・・・間違っているっ!!!」


 ・・・・・・・。


 ・・・・・・・。


「言いたいことは全て済んだかの?リオル。お主にはもうひと月ほど、牢でおとなしくしてもらうぞ」


 そんな・・・。


 無茶苦茶だ・・・。


「やれ」


 レムアの首に噛み付く処刑人にぐっと力が入る。


「おいちょっと待て・・・。ちょっと待てよぉ!!!」


 止めようとする僕を、番兵ががっしりと押さえつける。


 結局・・・結局勇気出したところで、全部無駄になっちまうのかよ・・・?


 だったら僕・・・何のためにこの世界に生まれ変わったんだよ!?


「レムア!!レムアぁ!!!」


 ・・・・・・・。


 ・・・・・・・。


「リオル様・・・ありがとう。御免・・・」


 布に隠れたレムアが微かに言った。


 最後の最後に庇ってくれた、僕への感謝の言葉。


 そして・・・今生の別れの挨拶を。


「やっ、やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」


 ・・・・・・・。


 ・・・・・・・。


「申し上げますっ!!」


 刑が下される寸でのところで、飛竜ワイバーンの武将が空からやってきた。


「何じゃ?今取り込み中じゃ。後にせよ」


「殿!すぐに兵を整え、ご出立の準備を!!」


「なに?」


「シノナ領の軍勢が・・・攻めてきましたっ!!!」


「何じゃと!?」


 ディブロは血相を変えて立ち上がった。


「刑は直ちに取りやめよっ!!者どもを呼び出せっ!!戦の支度じゃっ!!!」


「ははっ!!」


 番兵や処刑人は、慌ててお白州を後にした。


「レムアさんっ!!大丈夫!?」


「レムア!!」


 刑が取りやめになったので、僕とティアスは急いでレムアの下に駆け付けた。


「良かった・・・!良かったのぅ~・・・」


 ティアスは泣きながらレムアに抱きついた。


「もう大丈夫ですからねっ!」


 僕はレムアの顔にかけられた布を取ってあげた。


 処刑が取りやめになったのに、レムアは喜んでいなかった。


 むしろその逆だった。


「シノナ・・・シノナ・・・」


 歯をガチガチ鳴らしながら、レムアは青ざめた顔ですごく怯えていた。


「ひっ、姫様・・・!」


「ああ・・・!!」


 処刑が中止になった喜びで頭からすっぽ抜けていたが、僕は改めて戦慄した。


 かつてレムアの故郷であるトダン領を攻め滅ぼした、飛竜ワイバーンの大国・シノナ領。


 それがここ、ミーノ領に攻め込んできたのだ。


 転生して初めて、僕はサンブロドの、亜竜族サーペントの戦に巻き込まれるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ