5章ー19:オニガナシュの戦い(肆)
「どういうことだ!?なぜ敵軍がどこにもいない!?」
湿地で敵の背後に回り込み、奇襲を仕掛けるつもりだったが、肝心の敵が一頭もいないことに激しく動揺するナルクル。
「いかが、いたしましょうか?」
「くっ・・・!」
部下か指示を仰がれ、ナルクルの焦りが加速する。
「敵に先手を打たれたやもしれん。陣を組んで周囲を警戒しろ」
「はっ!各々固まって攻撃に備え・・・ぐはっ?!」
指示を受けた一頭の指揮官の頭に、突如として風穴が開いて倒れる。
「何が起こった!?」
「分かりませぬ!!突然どこからか・・・ゔっ?!」
次々と死んでいくナルクルの率いる四足歩行型飛竜隊。
一体何事かと思い、姿無き襲撃者を探り当てようと、ナルクルは辺りを必死に見回した。
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「あれかぁ・・・!!!」
ナルクルは見つけた。
シノナ軍の陣の反対側の山に並び、二足で立って衝爆銃を構える地竜達を・・・。
「あそこに敵軍の狙撃手がいる!!総員かかれぇ!!!」
地竜の鉄砲隊に気付いたナルクルは早急に潰すべく兵を向かわせた。
それを沼に潜んで、見張る者達が・・・。
「勘づかれたか・・・」
「想定内。ここから先は我らの役回りですな。義父上」
「フッ、そうだな。一番槍は譲ってやる。スラギア」
「かたじけのうございます」
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「“カワミ流竜術・廻々雷王”!!!」
兵を率いて鉄砲隊に向かっていくナルクルに、雷属性を帯びて回転突進するスラギアが激突した。
「がはぁ・・・!?きっ、貴様は・・・!!カワミ領領主・スラギア!!!」
「悪いがこの先は通さんよ。“迅将”殿?」
湿地に溜まった水が震えだし、高く茂った草むらからカワミ・ガルス領の水竜軍が飛び出してきた。
「水辺こそ水竜の本領。貴様ら全員、ただの獲物なりぃ!!!」
放電で周囲の水を沸騰させながら、スラギアは天を仰いで、荒々しく吠えた。
◇◇◇
沼地の方で雷撃が・・・。
スラギア君とトゥナズさんらが会敵したか。
「殿!!湿地の方でただならぬ騒乱が!!もしや・・・!!!」
「ナルクルがこの場に向かってない水竜どもに・・・。そうであろうリオル?」
「正解。数じゃこっちが僅かに劣るからな。だから分断させてもらったよ」
戦が始まる一週間前から、トビカケ衆に偽の作戦を流布させ、こちらの軍が現地に着いた瞬間に本当の作戦を全員に伝達して、僕が話し合いに出向いてる時に準備させる。
奇襲を任せられるのはスピード自慢のナルクルしかいないと思って、空からの攻撃は無いか控えめにするだろうと想定し、水辺に地の利がある水竜達を配置したが、どうやら運は僕に味方してくれたようだ。
ナルクルら地上攻撃が主の四足タイプの飛竜は水竜と、向かいの山に配置した衝爆銃隊に任せ、僕たちでシノナ軍の本陣を一斉攻撃。
ここまでは順調だ。
あとは分断できてる間に、双方とピナースを討ち取れるかどうかの、タイムアタックか・・・。
「ゼクライ」
「は、はっ!!」
「指揮を執りこちらに向かってる敵軍を迎え撃て。一頭足りとて通すな」
「殿は!?」
「わしはここに残る。大将どうし、一対一の勝負の元、叩く」
「承知いたしました!お前らぁ!!オレに続けぇ!!!」
ご自慢の電冠をへし折ったオドロガンとリターンマッチができると知り嬉しそうなゼクライ。
すんごくめんどくさいケンカ大好き小僧が、お前と戦いがたっていると知らないで・・・。
「さて・・・。では始めようか?」
二人っきりになり、ピナースが僕をジッと見据える。
「正直言って、お前とやり合うことに、まだ少し踏ん切りが着かない。だけど・・・」
集まってきたツバメバチから闇属性を受け取り、僕は超帯闇形態に移行した。
「僕には譲れない夢がある。だから同じ志を持つ者として、敬意を以って本気で行かせてもらうっ!!!」
僕の宣言を、ピナースはゆっくり瞬きして聞き入れる。
「ならばわしはそれに応え・・・出だしからとっておきを見せるとしよう」
ピナースは下を向いて大きく息を吸い、口を起点に全身の血管が浮き出て、身体が熱を帯びる。
っっっ!!!
直感で分かる。
これは・・・ヤバい!!!
「“シノナ流竜術奥義・烈火繚爆”!!」
飛び上がると同時にピナースはチャージブレスを放ち、その刹那シノナ軍の陣は爆炎に包まれた。
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「骨のある若造だ。あれをかいくぐるとは」
ピナースは滞空する高みから僕を見下ろし称賛する。
じょっ、冗談じゃない!!
咄嗟に爆破範囲内から逃げれたからいいものを、ほんの少し逃げるのが遅かったら確実に死んでた・・・。
初手から奥義撃ってくるなんてアリかよ?!
しかもこのジュクジュクに溶けてるクレーター・・・。
炎だけじゃなく強酸性の状態異常までおまけで付いてやがるなっ!!!
「わしの眠気を失せさせるなどと大口を叩いた以上、せいぜい楽しませてもらうぞ?」
燃え盛る炎の中、ピナースは舞い降り、笑いながら僕を値踏みした。




