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5章ー18:オニガナシュの戦い(参)

 僕が見せた歩み寄りを、烈火の如き激情で拒否したピナース。


 集まってる武将たちが一気にピリつき始める。


 僕だって怖い。


 だけどそれ以上に、残念だ。


 ・・・・・・いや。


 最初(はな)っから分かってたことか・・・。


「ピナースあんた・・・。やはり、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のために、領土拡大の戦を仕掛けてたのか・・・」


「それがどうした!?」


 なんの躊躇もなく答えんのかよ・・・。


「一応聞くけどさ、なんで?」


 僕が質問すると、ピナースの威圧感が少し引いた。


「こう見えてな、わしは幼少の時分、まともに寝れなんだか。か弱い幼竜の身で孤児(みなしご)になり、弱肉強食のシノナの森に放り出された。あの頃は、突如聞こえてくる風や羽虫の音にさえ怯えて暮らしていた・・・。わしは・・・無我夢中で己が武を鍛え、強者が跳梁跋扈する大地を生き抜き、そして・・・!!治める者がいなかったこのシノナの主にまで上り詰めた!!当初は自分が平穏無事に生きる場所を作るためだったが、心の底から初めて()()というのを味わった時、思ったのだ。「わしの下々の者たちには、幼きわしのような思いなぞ決してさせぬ」と。『静かなる眠り』を妨げる奴腹どもは、全て潰せばよい。危機を掻き立てる者どもなど、消してしまえば何の問題もない・・・とな」


 ・・・・・・・。


 ・・・・・・・。


「じゃあトダン領を滅ぼしたのも、ミーノ領に攻め入ったのも、僕のオリワ領を乗っ取ろうとしたのも、()()()()()()()()だからって理由だったのか?」


「ああ。悪いか?」


 僕は立ってピナースの傍まで行った。


 家臣たちが慌てて止めようとしたが、ピナース自身が彼らを下がらせた。


「ピナース。あんたのやってきたことは・・・間違っている」


「ほう?そう言い切れる根拠が聞きたい」


「僕が前世で暮らしてた国もな昔、余所と戦争してたんだよ。『食い物のため』、『新しい働き口のため』、『国と民を守るため』・・・。ご大層な大義名分引っ提げて、他の国に喧嘩吹っ掛けて、そこに住んでた人から取れるモンは根こそぎ奪っていった。ふざけた話だろ?テメェの国の人は思いやんのに、異国の住民たちは軽んじて。その人らだって、自分らと同じで家族がいて、暇な時の楽しみがあって、安らげる家もあったのに・・・。いいかピナース。どれだけ自分んトコの民が大事でも!!どれだけ国民を想っての行為だとしても!!他の国の平和を壊して、そこから奪っていいなんてこと・・・絶対に許されないっ!!!お前が下々の者に与えてきた安寧は、罪のないたくさんの死体の上に成り立っているモンなんだよっ!!」


 ・・・・・・・。


 ・・・・・・・。


「これ以上の談義は時間の無駄だな」


 ピナースはそう吐き捨てると、陣笛係の飛竜(ワイバーン)に顎を『クイッ』とやった。


 次の瞬間、その飛竜(ワイバーン)がけたたましい声で鳴いた。


「おい今のはなんだ!?」


「くっくっくっ・・・。貴様、なぜこの陣に()()()()()()()()と思う?」


「えっ?まっ、まさか・・・!!!」


「そうじゃ。貴様らがこの陣の下の湿原に迫っていると情報はすでに掴んでおる。ゆえに・・・()()()()()()()()()()()。今頃ナルクルが率いる兵どもの奇襲を受けているであろう。混乱し、統制が取れなくなった陣形は瓦解。この戦・・・シノナ領(われら)の勝ちじゃ」


「そっ、そんな・・・そんな・・・」


 狼狽えて、崩れ落ちる僕を、シノナ領の武将たちが囲む。


「そう落ち込むな。すぐに貴様も後を追える。貴様には、兵と同盟者もろとも、永遠の眠りを与えてやろう。もう苦しまなくて、よいのだ」


「・・・・・・ちょっと、いいか?」


「なんだ?敵の手にかかるより、武竜らしく胸を貫きたいと申すか?」


「いや。そうじゃない。さっき話したことなんだけどさ・・・どこ情報ぉ~?」


「なに?」


 ガバっとニヤケ顔を見せる僕に、ピナースは怪訝な表情を見せる。


「伝令!!伝令にございますっ!!」


 空を巡回してたシノナ軍の兵が突然降りて来た。


「何事だ!?こんな時に・・・!!!」


「湿原に・・・敵兵が一切見られませんっ!!!」


 その場にいた全員が驚愕した。


「貴様・・・何をした?」


「“情報には兎角ガセが付き物”。特にこういう大事にはな。幸運にもウチには、そういうのを怪しまれずに流す、()()()()()がいるもんでね?」


「てっ、テメェ・・・!!!謀りやがったなぁ!!!」


「僕なんかに構ってる場合かゼクライ?ここの護り、早いトコ固めなくちゃなのに」


「なっ、何を言ってやがる!?」


「はっ・・・!!はっ・・・!!申し上げますっ!!!」


 別の伝令兵が慌てて飛び込んできた。


「今度は何だよ!?」


「オリワ軍とミーノ軍が・・・この陣の背後から、攻めてきましたっ!!!」


「なっ・・・?!」


 僕はクリック音を鳴らし、背中に隠れていた女王バチ達に合図を送る。


 その直後、潜伏してた数千匹の黒曜燕蜂(こくようつばめばち)が光りながら僕に群がる。


「さぁ!!しつこい眠気もぶっ飛ぶ大戦(おおいくさ)の開始だバカ野郎!!!」


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