5章ー14:最後の追い込み
オリワ領、平谷城巣。
城門の近くに作った射撃訓練場では、レムアが“トダン流竜術”を応用した新しい衝爆銃の撃ち方を指導していた。
「よろしいですか!?丹田を起点に後ろ足を地面に固定する意識を忘れないで下さいっ!!では、撃ち方はじめぇ!!」
鉄砲隊に任ぜられたオリワ軍の兵士が続々と的に新型衝爆銃を撃つ。
ミーノ領の岩髭に作らせた、前足の指で引き金を引くタイプだ。
「撃ったら最後列へ!!次列と速やかに交代して下さいっ!!」
撃つ→下がる→火薬と弾の装填のスピードが、最初の頃と比べるとかなりスムーズになった。
ピナースに手紙を出してから二十日・・・。
僕たちは刻一刻と迫る、シノナ領との戦いに向けての、最後の大詰めを迎えていた。
「よし!じゃあ始めるか!」
城巣からしばらく歩いた平原にやってきた僕は、軽くジャンプして身体をほぐす。
そして「ふぅ~・・・!!」と拳法みたいに深呼吸して、新鮮な空気を取り入れて、肺から全身に流す。
「来い!!ハチ達よっ!!!」
その言葉を合図に、至るところから黒曜燕蜂の大群が押し寄せ、あっという間に『超帯闇形態』に変化する。
よし。
外部エネルギーによる形態変化の簡略化はクリアした。
あとはハチ達の、攻撃への転用だ。
これまでの修練から、この日光から闇属性を生成する環境生物を上手く活用するには主従関係の明確化より、シンクロ率がモノを言うことが分かった。
要は、ハチの塊を、手足のように知覚することが重要なのだ。
シンクロ率が高いほど、ハチ達の意志を読み取ることができ、更には飛び道具として活用できる。
しかし限られた時間で数千匹のハチの大群と意思統一をすることはできない。
だから、真社会性昆虫の特性を利用させてもらう。
目を閉じ、無数に近い数のハチの中から、限られた数匹に意識を照らし合わせる。
そう、女王だ。
「用意はいい?みんな」
(はい。我ら一同、準備は整っておりまする)
(何なりとご命令を)
(ともに一つとなりましょうぞ)
頭の中に思念が直接流れ込んでくる。
ここまでの修練により、元はトダン領に住んでいた黒曜燕蜂の五匹の女王と相利共生の関係となった。
彼らがグンタイアリみたいに、特定の巣を持たない種族で良かった。
おまけに闇属性をエネルギー源とするため、環境適応力も高い。
今は平谷城巣の近くを棲み処とし、鍛練の度に集まってきてくれる。
「じゃあ・・・始めるよ」
頭の中に一斉に女王五匹分の五感がなだれ込む。
パシフィックリムのイェーガーってこんなカンジなのかも・・・。
毎度のことながら、慣れないなぁ~・・・。
「それじゃ、前の続きから。行くよ?」
頭の中に「御意!!」とか「よし来い!!」とかいう声が同時に入ってきて騒々しい。
前世と同じく頭痛持ちだったら耐えらんないね。
「ふぅぅ・・・!!“ヒノモト流竜術・黒蟲の守玉”!!!」
身体を捻ってジャンプすると、黒く発光するハチの群れで形成された玉が四つ形成される。
「四つか・・・」
前回の修行では三つだった。
数は増えてきてるけどペースが遅い。
戦いの日までに、六つは作っておきたいが・・・。
「・・・・・・この際、悠長に構えてらんない」
次のステップ、この作った蜂玉の飛び道具化に入ろう。
前に一回飛ばしたことはあるが、その時は的に当たる前に霧散してしまった。
「主導権の感度を前より強めるぞ。準備はいいか?」
女王達から了承をもらい、意識の波長を増幅する。
ぐっ・・・!!
やっぱ強くした分、各コロニーのハチ達の意識まで流れ込んできたか・・・!!
これを上手い事避けながら、意識を囲んでる蜂玉に流し込み・・・。
「・・・・・・くはぁ!!!」
何とかいけたか・・・!!
数千匹は無理でも、周囲を囲んでる数百匹なら波長を合わせられる。
あとはこれを・・・飛ばすだけ!!!
「・・・・・“ヒノモト流竜術・光黒燕砲”!!!」
四つの光る蜂の玉が、的に見立てた岩に向かって剛速球で向かった。
そして・・・。
「はぁ~・・・!!一個ダメだったかぁ~・・・」
岩に当たる直前で、四つの内一つだけが霧散してしまった。
だけど、ホーミング性能は完璧だった。
威力も申し分なく、的の岩の表面が焦げている。
よし。
この要領でやればハチ達の飛び道具化はできるな。
あとは手順のスピードアップと、意思統一のより長い持続か・・・。
「ん?」
遠方に飛ばしていたハチ達が、四枚の紙を持ってきた。
“ティアスとギガレクスの修行申し分なく。挙兵の用意も九分五厘まで済み。ミーノ領ディブロ”
“兵達の勢い右肩上がり。鬨を心待ちに。ガルス領トゥナズ”
“対飛竜用の弩弓完成。量産体制も盤石。カワミ領スラギア”
“二足式衝爆銃、兵士全てに手配完了。オドロガン”
届いたのは、各地の味方の指揮官からの手紙だった。
みんなも、戦いの準備の大詰めに入ったみたいだ。
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「こっちも負けてらんない!!」
手紙を雑にしまい込んだ僕は、レムアが作ってくれた握り飯を頬張って水で流し込む。
そして再び精神統一・・・。
「ほぉ~・・・!!うしっ!!みんな、もう一度!!気合い入れていくで!!!」




