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5章ー13:別世界の夢物語

 シノナ領領主ピナース殿。


 僕からの突然の文、誠に驚いたことと思う。


 ひと月もすれば、雌雄を決する敵方の大将がいきなり何をほざいているかと不快に感じているだろうが、どうかご容赦願いたい。


 とまぁ、堅苦しい挨拶はこれくらいにして、ここからは砕けたカンジでいかせてもらう。


 単刀直入に言うと僕には、前世の記憶がある。


「いきなり何言ってんの?」ってなってるだろうけど、短くするから最後まで読んでほしい。


 実は僕は、元々は人族(じんぞく)


 つまりは人間だった。


 生きてたのは、形が似てるだけの、こことは全く違う世界。


『日本』っていう国だった。


 そこでは戦なんか起きてないし、身分の差もない、すごく平和な世界。


 寝て起きて、仕事に行って、あったかいご飯と酒を飲んで、また寝る・・・その繰り返し。


 実を言うと僕は、その繰り返しの毎日に退屈していた。


「なんかでっかい事でも起きないかなぁ~」って思ってたけど、この世界に生まれ変わって思い知った。


 そんなの、とってもバカげた考えだって。


 同じことの繰り返しの退屈な日々こそ、『平和』って呼べる世界なんだって痛感した。


 僕は自分の生きてた世界と、同じにできるように、天下太平を志した。


 ピナース。


 僕の生きてた世界じゃ、みんなお昼になるととっても眠たそう。


 僕だって、何もない日のお昼は、日差しを浴びながら居眠りしてた。


 お前はそんな国を作りたかったんじゃないのか?


 誰でも日がな一日居眠りすることができる、そんな国を。


 僕はお前と、お前の国がしてきたことを、決して肯定なんかしない。


 だけど、同じ夢を持つ者どうし、気持ちを伝えられないまま一方を殺すことは、どうしてもできない。


 お前にその気があるのなら、戦の前に、会って話さないか?


 僕はお前の本心を聞きたいし、僕も自分の本心をお前に伝えたい。


「いい返事を」となんてわがままは言わないが、せめて返事だけでも送ってほしい。


 僕の生きてた世界には、“既読スルー”なんて言葉があってね、送られた言葉には返事を返さないといけない暗黙の掟みたいなのがあるんだ。


 とにかく、了承するにしても拒否するにしても、お前からの文、待ってます。


 地竜(ドレイク)の領主に生まれ変わってしまった臆病な元人間より。


 追伸. 返事はこの手紙を持ってきた僕の眷族に渡して下さい。





 ◇◇◇





 ピナースに手紙を送ってから五日。


 未だ返事は届いてない。


 やっぱ転生者カミングアウトは無理があったか・・・。


 あんなこと書いても信じてはくれないやろうけどさぁ~、説得力持たせるにはアリだと思ったんだよなぁ~・・・。


「はぁ~。書き直してもう一回送るか・・・」


 そう言った直後、レムアが慌て気味で離れにやってきた。


 手に小さな石板を持って。


「リオル様!黒曜燕蜂(こくようつばめばち)が返事を持って参りましたっ」


「貸して!!」


 半ば強引にレムアから石板を受け取る僕。


 そこに書かれたのは、ほんの一文だけ。


 “ミーノ領との境、オニガナシュの地にて待つ。”


「これって・・・」


「話し合いと、合戦の地が決まったな。ディブロ様に報せてくるっ!!」


「あの・・・!!どういった文をお送りになったのでしょうか?」


 ・・・・・・・。


 ・・・・・・・。


「なんてことない、()()()の夢物語だよ」


 僕の言葉にレムアは首を傾げる。


 気が向いたら、レムアにも話すのもいいかもしれない。


 ・・・・・・信じちゃもらえないやろうけどさ。

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