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3章ー20:盛者必衰の理、しかして栄花の種残る

 翌週。いよいよ古巣谷のリフォームが始まる日がやってきた・・・ワケなのだけれど。


「女の人ばっかやん・・・」


 入口の前に集まったのは、現場監督兼精密作業担当の大工さん以外、みんな女性だった。


「男衆はどの家も狩りや採集出てしまってよぉ。お前の作った品々がもっと出回れりゃあ~話は変わったんだろうが・・・」


 ルータスが苦笑いをしながら教えてくれた。


 中には子連れのママさんもいるし、まるでペンギンじゃん。


 なんか、紅の豚の飛行艇修理シーンを思い出す。


「今日は頑張りましょうね、リオル様」


「男どもなんかにゃ~負けませんよっ!!」


「レムア!ルビィ!お前らも働くの?」


「初めて外に出た若様があたしと最初に遊んだ思い出の場所・・・。そこが新しい城巣になるのですから手伝わないワケにはいかないでしょう?」


「ちっ、力仕事に関してはミーノでもそれなりこなしてきましたから、ご心配なくっ!」


「なっ、ならいいんだけど・・・」


 幼馴染と意中の子も張り切って参加してくれてるんだ。


 こりゃ僕としても手ぇ抜いていらんねぇな・・・。


「それではリオル、皆に説明を」


 え、僕が?


 まぁ~僕が考えたんだからそれは当たり前か。


 新卒で入った施工管セコカンの仕事を思い出すな・・・。


「え~皆さん!今日は集まって頂いてありがとうございますっ!今日は砲弾や弓矢等、中の残骸を撤去する作業をしてもらいます!滑落や加積に気を付けて作業して下さいっ!!」


 入口を背にした僕はKY(危険予知)活動をした。


 前職と前々職じゃ毎日やってたことだから、これも懐かしい・・・。


「それでは皆さん、ご安全・・・に?」


 みんなが古巣谷の入口に向かって黙とうしだしたので、僕もゆっくりそれに倣う。


「かの地に眠りし偉大なるご先祖の皆々様。今日この時までかの地を守護して下さり御恩礼申し奉る」


「かの地に手を加えることを、どうかご容赦下さりませ」


 ルータスとハーリアがご先祖様に敬意ある祈りを捧げて、僕たちが深く頭を下げたその直後、大工さんが作業に当たる人達を連れて続々と中に入っていった。


「そっ、それじゃあ~皆さん・・・ご安全にっ!!」


 現場代理人として言うべきセリフを言って、僕もみんなの後に続いて作業を開始した。





 ◇◇◇





「ふぃ~!!結構キツイなぁ・・・」


 中に入って隅々まで探ってみると、砲弾の欠片や折れた矢、果ては大筒が丸々見つかってキリがない。


 なんかサイパン島にいるみたいだな。


 リアルじゃ行ったことないけど、あそこにも旧日本軍が使ってた兵器が錆び錆びでそこら中にあるって話だから、多分こんなカンジなんだろう。


 そう思うと、僕は今まさに戦争遺跡の中にいると実感して、なんだかしんみりする。


「ど~したんですか?若様っ」


 ノスタルジーに浸ってると、後ろからルビィが元気ハツラツな声で話しかけてきた。


 ほんのちょっとでもいいからその元気分けてほしいなぁ~・・・。


「なんですか?ジロジロみて」


「あっ!いや、その・・・!!」


「額に汗して働く女子おなごに発情されてるんですか?」


「なっ!?何言ってんねんっ!!ただその・・・僕たちって今、昔の戦場いくさばに来てるんだなって思ってさ。ほらこんなにも砲弾とか弓矢とかゴロゴロ出てくるから、さ」


 ルビィのおちゃらけた表情がだんだん真剣になってくる。


「確かにあたしも驚いてます。小さい頃に、単にいい遊び場だったここに、こんなにも戦の跡が残っていたなんて・・・」


「あの時、僕とルビィがここで鬼ごっこしてた何百年前には、オリワの存亡をかけた戦が幾度となく起きてたんだな・・・」


 僕とルビィは無性にしんみりしてしまって、古巣谷の抜けた天井を眺める。


 そしたら遠くの方で、レムアの呼ぶ声が聞こえてきて、僕たち二人は急いで向かった。





 ◇◇◇





「はぁ・・・!はぁ・・・!どうしたのさレムア!?」


 僕たちが向かったのは古巣谷の最奥部。


 子どもの頃には来た事のない場所だった。


「色々探検してて楽しくなっていたら、ここを見つけて・・・」


「全くもうあんたってばぁ~。仕事しなさいよしご、と・・・」


 むくれるルビィが息を飲んで、気になった僕が覗き込むと、そこには豪華絢爛な屏風に囲まれて、立派な甲冑が飾られてる大部屋があった。


 言っても部屋は砂と蜘蛛の巣まみれ、屏風の地竜ドレイクの絵は虫食いだらけ、甲冑も風化して錆びの塊がたくさん付着していた。


「古巣谷に、こんなところが、あったなんて・・・」


 小さい頃から遊び場にしてるルビィも、この部屋に来たのは初めてだった。


「恐らく、ここがこの城巣の天守だったのでしょう」


 古巣谷は平城タイプの城巣じゃないから、最上部じゃなく最奥部に天守を作ったってことか・・・。


 にしてもこの荒れ具合・・・。


「・・・・・・“盛者必衰の理”か」


 ポロっと口にした言葉に、レムアとルビィが反応した。


「なんです?それ」


「どんなに栄花を誇った場所や人でも、時代が来れば必ず衰退するっていう、()()()()()のことわざ。ここも昔は立派な部屋だったんだろうけど、こうも荒れちゃあさ・・・」


 どんなに栄えても結局は無くなってしまう・・・のか。


 僕が築こうとしてる平和なサンブロドも、いつか・・・。


「種は残りますよ」


「レムア?」


「植物が花を咲かせるのは、種を残し、次の時代に繋ぐためです。栄()も同じです。見るとここと、ここに来るまでの道中には、攻め込まれた痕跡が一切ない。この部屋と、オリワの血筋を絶やすまいと奮闘した先人たちの意志が、リオル様の、天下太平の世の()なのです」


 ・・・・・・『栄花は種を残す』か。


 そう思ったら、遠い未来への憂いは無くなるな。


 案外先の世も、そう悪くないかもしれない・・・。


「いいこと言うじゃん?レムア」


 僕が褒めると、レムアはポッと頬を赤らめた。


「でもね、仕事はちゃんとしなくちゃダメだよ?」


「ふぇ!?」


「「ふぇ!?」じゃないよぉ~!小さなことをコツコツ頑張んないと芽吹くモンも芽吹くかないでしょ~が!」


「そうだよレムア!分かったら、とっとと作業に戻るっ!」


「はぅ~!!すいませ~ん!」


「やれやれ。しょうがない子なんだから~」


 ・・・・・・・。


 ・・・・・・・。


 僕は部屋に向かって一礼すると、せわしないレムアとルビィの後を追いかけた。


 あなた達が残してくれた種、大切に育てていきます。

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