3章ー19:思い出の地・大リフォーム計画
「お~お~お~!!すごいやこりゃ!!口で引くだけで土耕せられりゃ~!!」
オリワ領に帰ってからおよそ二週間後。
僕が開発した『竜動式耕運機』をミーノ領から持ってきてもらい、オリワ領の地竜に試運転してもらった。
今まで採集や狩猟に頼っていたこの人にとって、簡単に土を耕せるこの装置は目から鱗らしくて、かなりの高評価を頂いた。
「ご満足してもらって何よりです!ここに季節ごとに旬となる農作物と、その栽培方法とかも書いてますんでよかったら」
「ありがとうね~若様。これで生まれたばっかの孫にひもじい思いをさせないで済みますじゃ~」
耕運機を試運転してる人の奥さんのばあちゃんに手を握られながらお辞儀され、僕はほわほわした気持ちになった。
お年寄りの手ってシワだらけだけど、とってもあったかいんだな・・・。
子どもの頃、母親の実家に遊びに行った時、散歩がてらおばあちゃんと近所のコンビニに買い物に連れて行ってもらった時のことを思い出す・・・。
あの時、手を繋いだ感触が、甦ってくる。
「・・・・・・喜んでもらって何よりです。お身体に気を付けて、元気にお過ごし下さい。今度また何か、持ってきますからっ!」
笑顔でそう言う僕に、ばあちゃん地竜は何も言わずニコニコしていた。
「リオル様・・・」
「・・・・・・一歩前進♪」
付いてきたレムアの方を振り返って、僕はイイねサインをしながら返事をした。
◇◇◇
「へぇ~。あそこの老夫婦喜んでくれたんだ?良かったなリオルっ!」
城巣に帰った僕は、ルータスに開発した耕運機の試運転を報告していた。
「あとの課題は村々に必要台数を配置すること・・・ですね。技術者と原材料の木が乏しいですから、しばらくはミーノからの輸入に頼ることになりそうですが・・・」
「そうだよな~・・・。ディブロ殿にはいつまでも苦労をかけるワケにはいかぬし・・・」
僕もそれには同意見だ。
せっかく独り立ちすることになったのに、ミーノ領にいつまでもおんぶは面目が立たないからな・・・。
「・・・・・・いま向こうで知り合ったドワ・・・岩髭の職人さん達と文のやり取りをしてて、鉱石で代用できないか相談中です。これなら林がほとんどないオリワ領でも工房が作れますし、何より木造よりも長持ちです。こっちに送る新しい人材育成についても、目下相談中です」
「行動が早急で何よりだ。それまでの辛抱・・・ってことだな?」
「はい!」
一日一秒でも早く、オリワの生活水準を他の国に負けないくらいに向上させなきゃな!
「民の暮らしについては方針が固まったが、時に・・・国の護りについてはどうか?」
「国の、護り・・・」
「お前も知っての通り、このオリワは小国。今は安泰でも、ひとたび戦を仕掛けられれば、すぐに存続が危ぶまれる。来るその時に備えなければ・・・」
不安そうな表情をするルータスとは正反対に、僕は不敵な笑みを「フッ・・・」と浮かべた。
「もちろん、そのことについては思案しておりますともぉ!!!」
僕はルータスに向かって、紙に書いた図面を叩きつけた。
「これは?」
「新しい城巣の案です。大まかではありますが」
「新しい城巣だと?まさかこれから作るのか!?さすがにそれは無理はあるだろう~!何年かかると思ってるんだ?」
「新しく作る必要なんかございません。すでにおあつらえ向きな場所があるじゃないですか!」
「なに?」
「その図面・・・よくご覧下さい」
ルータスは図面を手に取って目を凝らす。
そしてそこに書かれているモノの正体に気付き、目を見開いた。
「お前、これって・・・!!」
「そう!古巣谷ですっ!!!」
この世界で外に初めて出た僕はルビィと遊んだ場所・・・古巣谷。
思い返せば、あそこには昔の戦の砲弾やらがゴロゴロ転がってたが、落盤や攻撃による破損箇所はほとんどなかった。
それはそれだけ、頑丈であるという証拠。
おまけにアリの巣を立体にしたみたいに、幾本もの石柱が縦横無尽に張り巡らされている。
防衛と、侵入した際に備えての敵の混乱という面を考えれば、あそこより最適な場所はない。
だったら整備して、もう一度使うしかないって!!
「このオリワ領が存続できているのも、あの谷がご先祖様方を守ってくれたおかげ!ならばそのお力を、再び使う時ではありませんかっ!?」
ルータスは図面を見ながら熟考し、「ふぅ・・・!」と決意したような深い吐息をして床にそっと置いた。
「・・・・・・腕の良い大工を片っ端からかき集める。お前の持ってきた考えだ。責任を持って纏め上げろ、リオル」
「あっ、ありがとうございますっ!!!」
ルータスからゴーサインが出たことで、僕が主導となる『古巣谷・大リフォーム計画』が始まった。




