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告られ彼女の守り方 ~偽装から始まる、距離感ゼロの恋物語~  作者: 鶴時舞
6章 夏休み後半

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第99話 深夜のテンション~ストッパー不在

 日付が変わる直前の静寂に、再び熱が差し込んだ。真桜の部屋で、撮影会が再開される――ゆっくりと、濃密な時間が動き出す。

 真桜が用意してくれた湯上がりの部屋着は、旅館で着るような浴衣だった。3人で揃って袖を通すと、まるでどこか旅先にでもいるような気分になる。深夜のテンションも相まって、開放感がじわじわと胸に広がっていく――そんな感覚があった。


 ――ピピッパシャ!


 無機質なシャッター音が部屋に響く。火照る表情が何とも艶めかしい二人の少女。

 

 俺も風呂場の件もあってか、より大胆なポーズを要求することに躊躇いがなかった。


 羽依の胸元から覗く谷間はとても深く、薄桃色に火照る肌にうっすらと汗が滲む。俺は胸元をさらに開き、より一層羽依の魅力を強調させる。

 羽依は恥ずかしがりながらも協力的にポーズを取っていた。


 真桜の魅力はやはり表情だ。切れ長の目が獲物を射抜くような強気の視線。その眼力に負けじと様々なポーズを要求する。浴衣の裾をさらにはだけさせ、綺麗な足を何枚も撮る。

 真桜も不満を言わず、やはり協力的に、より官能的な仕草で撮影に貢献する。


 二人とも下着は下しか付けていなかった。当初は見えないぎりぎりで撮影していたが、次第に二人とも顔を赤らめながらも大胆になっていった。


 真桜の美しい腹筋が彼女のストイックさを物語る。

 その胸は平均的な女子よりもやや大きく、形がとても美しい。


 羽依のお腹も可愛らしくも縦にうっすら割れた腹筋が、美容意識の高さを物語っていた。

 何よりこのはち切れそうな双丘が彼女の魅力を大きく引き立てている。

 きっとこの胸が男を狂わせるのであれば、納得せざるを得ない。


 みんな脱水症状になりそうなほど汗をかいたので、真桜が麦茶を持ってきた。

 キンと冷えた麦茶が喉をすべり落ちていく。その清涼感が、熱に浮かされた頭に冷水を浴びせるようだった。


 クールダウン後にPCで画像を確認する。


「うわー。すっごいエッチ……」


「撮ったのは良いけど、どうするのこれ……」


「もちろん持って帰ってお宝フォルダーに……ってわけにもいかないな……」


 撮る事、撮られる事がどうやら俺たちの目的となってしまっていたようだ。後先考えない行為に3人とも苦笑してしまう。


「蒼真、すっごい楽しそうだったよね。プロのカメラマンみたいだったよ~」


「モデルの経験活かせた気がするね。何でもやってみるもんだなあ」


 本格的なスタジオで照明とか調節できたらきっともっと楽しくなるだろうな。


「でも、結構容赦なく撮ったわね。ひょっとしてさっきの仕返しかしら」


 ジトッとした眼差しを送ってくる真桜。


「そんなつもりないって。でも、こんな可愛い子たちを好きに撮れるチャンスなんて二度とないだろうからさ。遠慮なく撮らせてもらった!」


「遠慮なさすぎよ。この写真なんて、何も隠れてないじゃない……」


 真桜が示した写真は横に寝そべった彼女の写真。完全に開けた胸元、裾から見える下着。すらっとした足。とても美しい一枚だけど、他所では絶対見せられない写真でもある。


 文句を言いながらも、その写真をしっとりとした表情で見つめる真桜。


「その写真、気に入ったの?」


「うん、自分が自分じゃないみたいにすごく良く撮れてる。恥ずかしすぎるんだけど、つい見ちゃうの。私、もしかしたら自己愛が強いのかしらね……」


「真桜のこの写真は本当に綺麗だよね~。うちのPCの壁紙にしようかな!」


「絶対だめ! 美咲さんには恥ずかしくて見せられない!」


 両手で顔を隠して恥ずかしそうにする真桜。それでもちらっとPCのモニターに目が行ってしまう。よっぽど気に入ったんだな。


 羽依が真桜の後ろに忍び寄り、背後から真桜の胸元に手をいれる。


「ひゃん!」


「んふ、いい反応だね。自分の写真で興奮しちゃうなんて真桜は変態さんだね~」


「だめ、羽依、悪戯が過ぎるわ、んんっ」


 悪戯がエスカレートしそうなので、羽依の首根っこを掴んで引き離す。真桜はへなへなとラグの上に倒れ込んだ。

 ぶーっと拗ねた顔は、まるで悪戯を止められた子ども。でもその不満げな表情すらどこか蠱惑的で――羽依のまた違った一面を見た気がした。


 何となく空気が甘ったるくなりすぎている気がする。風呂上がりなのに妙に汗ばんだ3人。彼女たちの甘い香りが正気を失わせるような感覚に陥る。

 いい加減お開きにしよう……。


「そろそろ寝ようか。 俺は毛布1枚あれば良いかな」


「布団二組合わせれば3人で眠れると思うわ。別に初めてじゃないんだし、一緒に寝ましょうよ」


「ん~順番で言えば今日の真ん中は私か……やだ。蒼真が真ん中にきて」


「やだってそんな……。良いよ。じゃあ俺が真ん中ね」


 間に落ちるのが嫌なんだろうな。素直な彼女さんだった。



 布団を敷き終え、寝支度を済ませて寝床に入る。

 やはり真ん中は隙間に落ちる感じだけど、まあ気にならないかな。それより上掛けに隙間が開くほうが気になるものなんだな……。


 真桜の香りに全身が包まれる……。なんて言ったらどんな目に合うんだろうか。言ってみるか? いや、でもなあ……。


「撮影会楽しかったね~。蒼真はカメラマンにもなれるかもね」


「良いねー。カメラって楽しいね。今日は借り物の一眼レフだったけど、いつか自分でも買ってみたいな」


「うちに来たらいつでも使わせてあげるから。……また、私を撮ってね……」


 最後は消え入りそうな声で囁く真桜。ホント撮られるの好きなんだな。


「今夜はどんな寝相の悪さなんだろうね」


 そんな羽依の言葉にビクッとする。あれだけ楽しいことをした後だ。寝相の悪さも心配だし、旅先の朝のことも思い出すと途端に憂鬱な気分になってきた。


「蒼真は今夜も悪い事するんだ……」


 真桜のつぶやきのようなささやき声が耳元でくすぐったく響く。


「ねえ、ホントにわざとじゃないの? 私にしたことも全部覚えてないの?」


「ごめん。覚えてないなんて無責任だよね……」


 不意に俺の手を取り、自分の胸元にそっと手をいれる真桜。

 熱く柔らかい感触に一瞬で頭がパニックに陥る。


 ――何で俺は真桜に触れている……?


「いつもすっきりしないまま寝るからそうなるんだよ」


 羽依の囁きは、はっきりとした意思が込められていた。


()()()()()()()()()()()()――」


 限界が訪れていたのは、結局この場にいる全員だったようだ……。

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