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告られ彼女の守り方 ~偽装から始まる、距離感ゼロの恋物語~  作者: 鶴時舞
6章 夏休み後半

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第98話 のぼせそう

「ん、羽依、くすぐったっ、ひゃん! 」


「んふ、真桜の弱いところはチェック済み~!」


 ……俺は一体何を聞かされてるんだ。

 背後では、美少女二人が全力でスキンシップ中。

 ……なんで俺だけ壁見てるんだ。刺激強すぎるんだけど。


 真桜の家にお泊りして、お風呂を先に頂いたところを、小悪魔二人が乱入してきた。


 多分この二人は俺のこと男と認識してないのかな。特に真桜。羽依は恋人同士だし、何度か一緒にお風呂に入ったことはある。

 真桜とはこれで2度目か。一回目は夏の旅行の時だ。あの時もバスタオルを巻いていたけど、最終的には羽依に外されてたな。


 俺のユニークスキル|“大事なところを見ない鉄の意志”《エターナル・ピュリティ》が発動しなければ、二人とも羞恥で悶え苦しむところだぞ。俺に感謝しろ。


「真桜、ちょっ! そんな、もげる!」


「ふふ、もっと大きくしちゃおうね」


 もげっ!? もげるって何っ! 一体何してんの!?

 ああ、もう気になる! 振り返ればきっと天国のような光景が広がっているんだろうな。

 俺はただ、声を頼りに妄想するしかできない。いや、それだけでも刺激が強すぎるんだけど。


 シャワーの音が聞こえる。ようやく淫欲の宴が終わったようだ。……さすがにそれは言い過ぎか。

 女の子同士ならよくある普通のスキンシップなんだろうな。


「んっ、ちゅ」「んん……」


 ……。

 普通……なんだよな……。


「蒼真、ちょっと目をつぶっててね」


「え、あ、うん。」


 すぐに二人が湯船に浸かるのが分かる。

 ……挟まれてる?


「良いよ~大丈夫」


 右には羽依、左に真桜。二人とも乳白色の湯なのを良いことに、バスタオルを巻いてなかった。


「広いお風呂はいいね~! 泳げそうだよ!」


「小さい頃、この家に泊まりに来たときは泳いでたわね。懐かしいな」


 真桜は明るんだ頬に笑みを浮かべる。

 こうして3人で浸かると、まるで家族で入っているようだ。


「蒼真と羽依って正直どこまで進んでるの?」


 突然真桜がそんな事を聞いてきた。さすがにそれはプライバシーに関わるからな。ちょっと教えられないぞ。


「前に言った時から進展なしだよ。キスとちょっと触れ合うぐらい。蒼真はヘタレだからね~」


 ……羽依がそんな失礼なことを言ってけらけらと笑う。むう、まだヘタレ呼ばわりするか。返上したはずなのに。


「キスして触れ合うなら私のがリードしてるんじゃないの?」


「あ、そうだね! 蒼真、真桜に負けてるよ!」


「ええ!? 触れ合うってどの程度触れ合ってるのさ!?」


「……すみずみまで」


 消え入りそうな真桜の声。顔が真っ赤なのは湯当たりなのか羞恥のせいなのか……。


「すみずみ!? それって全部?」


「お互い頭も体も手で洗ったからね~。そりゃもう全部だよ」


「……仲が良いよねホント」


 全く悪びれない羽依に対して、俺はどう言ったものかと思ったが、別にこれっぽっちもヤキモチ焼く気にはならない。

 それは女の子同士だからと言うよりも、真桜だからなんだろうなとは思う。


 ふと、湯の中で真桜が俺の手を取った。そのまま自分の方に手を引き、太腿にあてがう。柔らかくもハリのある感触に心臓が大きく跳ねた。


 はっとして真桜を見ると、俺と視線を合わせず、口を真一文字に閉じて耐えるような表情をしている。無理してないのかな……。


 そうしてるうちに、今度は反対の手を羽依が掴み、同じように太腿、いや、やや内腿あたりに手をあてがった。


「んっ、ちょっと小指当たった……」


 なんだこの状況……。二人示し合ったのかこれ……。


 家族でお風呂だなんて呑気なこと考えてたのは俺だけだったのか……。

 考えてみれば若い3人、裸で風呂に入り何事もないはずもない……のか?


 だめだ、理性が飛ぶ。俺は試されているのか? いや、もう試すってレベルじゃないだろう。彼女たちが何を求めているのか理解に苦しむ。


「……そろそろお風呂出るね。のぼせそうだ。二人は目を逸らしてくれると嬉しいな」


 そう言って湯船から出て風呂場を後にした。ちなみに彼女たちは一切視線を逸らさなかった。

 風呂場からキャーキャー言う声が聞こえるが、もう知らん。



 ――――――――



「んふ、“蒼真の野生が目覚めるまで悪戯作戦”ミッションコンプリート!」


「あはは……。でも、確かに野生化してたわね。あんなふうになるのね……。旅行のときは布団越しだったけど、実物ってすごいわね……」


「ねー! ちょっと触ってみたいなって思っちゃった」


「旅行の時に悪戯しまくってたじゃない。ビクンビクンして怖くなったけど」


「あれねー。寝起きの蒼真、焦ってて可愛かったな~」


「――羽依は嫌じゃないの? 私がその、見たり触ったりするの」


「真桜なら良いの。他の人なら絶対許さないけどね。それに私も真桜とキスしてるんだし、蒼真としても怒ったりしないよ」


「貴方の彼氏なのよ。さすがに戸惑うわ」


「細かいこと考えずに一緒に愛し合おうよ。多分それが私たちの“正解”なんだから」


「――そんな選択もあるのかしらね」


「他の男も女もいらない。――私は二人とも手放さない」


「――強欲ね。でも羽依らしいのかも。私はそんな羽依が好きなんだろうな」


「のぼせそう! そろそろ出よっか!」


「そうね……私はとっくにのぼせてるわ」

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