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告られ彼女の守り方 ~偽装から始まる、距離感ゼロの恋物語~  作者: 鶴時舞
6章 夏休み後半

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第97話 撮影会

 週末の夜、羽依の思いつきから始まった撮影会。

 俺の写真撮影の腕前を褒めてくれた真桜が、何かを思いついたように部屋を出ていった。

 ほどなくして戻ると、顔には微笑みを浮かべながら、手には高級そうな一眼レフカメラを携えていた。


「お祖父様が買ったものだけど、使い方を覚えるのが面倒で放置していたの。これならさらに綺麗に撮れるんじゃないかしら」


 真桜がウキウキした面持ちでそんな事言ってきた。

 思った以上に撮られることに興味があるのかな。


 真桜からカメラを預かる。しっかりとした重量感。高級そうだな。スマホで値段を調べると……。俺にはとても手が出せない値段だった。さすが理事長。


「こんな良いもの使わないのは勿体ないねえ……」


「普段は節制してるんだけど、たまにこういう散財するのよ」


 呆れた様子の真桜だが、その散財のおかげでさらに楽しくなりそうだった。


 まずはオートモードで撮ってみよう。

 暇そうにぼーっとしている羽依にカメラを向ける。どことなくアンニュイな表情はとても絵になる。


 ピピッ、パシャッ――


「え!? 今私撮ったの? ちょっと見せて!」


 カメラのモニターに写っている自然体の羽依。うん、とても可愛らしい。


「やだー消して!」


「あっと、ごめんごめん、消すね」


 勿体ないけど消しておこう。

 盗撮被害の後で無許可で撮影した思慮の浅さに我ながら呆れてしまった。俺も浮かれてたな……。


「あ、やっぱ消さなくて良いよ。綺麗に撮れてたし、蒼真なら全然オッケーだよ」


 そう敢えて言ってくれるのは、俺は特別だって意思表示なんだろうな。羽依の優しさに少し救われた気がした。


「じゃあ今度はこっち向いてみてポーズとってね」


 カメラを意識した表情とポーズを取る羽依。

 自分の可愛いところを良く理解しているなあ。


 何枚か撮影し、PCで確認する。

 最近のモデルなので、PCに自動転送されるのはとても効率がいい。

 3人でノートPCを確認する。


「可愛く撮れてるわね。最初のカメラ意識してない写真が特に可愛く撮れてる」


「一応可愛い瞬間を狙ったからね。でもごめんね。ちょっと無神経だった」


 羽依が俺を慰めるようにそっと抱きしめる。


「大丈夫、気にしないで。こんなに可愛く撮ってくれてるんだから。蒼真なら私に何しても良いんだよ」


「羽依……。ありがとう」


 見つめ合う俺と羽依。その俺たちをぽーっとした表情で見つめる真桜。あれ? 普段ならツッコミきそうなシチュエーションだけど。


「真桜、ツッコミ不在はちょっと寂しいよ?」


「あ、そうね……わ、私の部屋で何してる……って今更ね」


 くすくすと笑う真桜。少し顔に赤みがさしている。


「良いわね二人とも。そんな仲の良い二人を見るのがとても好き。なんか胸の奥が暖かく感じてくるの」


 何ともくすぐったい感じがする真桜の言葉。

 そんな慈愛の表情を浮かべる真桜にカメラを向けて写真を撮る。

 PCに映し出されたその表情は、とてもいい瞬間を切り取れたように思えた。


「――蒼真は真桜のことも大好きだよね。真桜の良いところをよく知ってる気がする」


 羽依もまた、同じように慈しむような視線を俺と真桜に送ってくる。言葉だけ切り取れば嫉妬にも聞こえそうな言葉だが、その様子は全く無く、純粋に俺の気持ちを代弁しているような気がした。


「うん、そうかも。……大切な、かけがえのない存在だと思ってるよ」


 俺のそんな言葉に真桜がふっと微笑みを浮かべた。


「かけがえのない存在……ね。羽依はギリギリ許してくれそうな表現かしらね」


「うん、言葉選びが上手だね蒼真。国語力上がったのは私との勉強のおかげかな。真桜も蒼真のこと好きだよね」


 真桜は一瞬困ったような顔をしたけど、すぐに俺に向かって優しく微笑んだ。


「貴方の言葉を借りるわね。羽依と蒼真、二人とも私にとって、かけがえのない存在よ」


 羽依は少し溶けたような、ふにゃりとした笑顔を見せる。


「んふ、なんか良いねそれ。親友より……もっと特別な感じがするな~」


 みんなでなんとなく笑いあった。なんだか心がとても暖かく感じる。やっぱりこの3人でいるのは特別な時間だよな。


「そろそろお風呂入りましょう。先に蒼真からどうぞ。着替えはお祖父様の湯上がり用の浴衣を着てね。下着はさっきコンビニで買ってたわね」


「うん、ありがとう。じゃあお風呂いただきます……覗かないでね」


 羽依と真桜は顔を見合わせて頷き合う。


「「いってらっしゃーい」」


 ……絶対覗くつもりじゃないか!


 真桜の家の風呂は驚くほど広かった。道場を営んでいただけあって5~6人ぐらいは一緒に入れそうだった。ちょっとお湯張るのもったいないなって思う俺は貧乏性だ。でも、ここを一人占めできるのは最高だなあ。

 しかも乳白色の入浴剤入りだ。香りがとてもいい。

 やっぱ真桜も結構セレブじゃないのかな。そりゃ理事長宅だものな。


「湯加減どうかしらー」


「ああ、丁度良いよー、ありがとうねー」


「体洗い終わったー?」


「もちろん、先に体洗ってから湯船入ったよー」


 なぜ体を洗ったことを確認する? え、まさか。


 からからっと風呂場の扉が開いた。

 バスタオルを巻いた二人の美少女が風呂場に入ってきた。


「ちょっと! 入るなら入るって言ってくれ!」


「「入る」」


「今じゃなくて! ああもう!」


ああ言えばこう言うがまた始まった。

毎度の事だけど、俺はどれだけこの子達に翻弄されるんだろうか。


「蒼真、少し壁を見ていてくれるかしら。体を洗うわね」


「見たかったら見ても良いって真桜言ってたよ~」


「ちょっと! そうは言ってないでしょ! 見られたら仕方ないって言ったんでしょ!」


「何が違うんだ……見てもいいの?」


「だめよ! 事故なら仕方ないって話よ!」


 そんなに恥ずかしいなら一緒に入らなければ良いのに……。

 きっと羽依に強引に引っ張ってこられたんだろうな。

 お気の毒に……。


  ん? 待てよ。事故なら仕方ないって……それ、見られても文句は言わないって意味じゃないのか?

 ああ、だめだ。思考が追いつかない。またのぼせそう……。

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