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告られ彼女の守り方 ~偽装から始まる、距離感ゼロの恋物語~  作者: 鶴時舞
6章 夏休み後半

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第80話 夏休み最後のお楽しみ

 日曜日。楽しかった夏休みが今日で終わる。色々なことを経験して、勉強して筋トレして、充実した夏休みを過ごせたと思う。さあ明日から二学期だ。


 昼前から羽依と二学期の予習をしようって話になっていた。


 11時を過ぎた頃、鍵をカチャッと回す音が聞こえた。


「蒼真~!」


 ぱたぱたと走って……こない?


「筋肉痛……いだい……」


 玄関でイモムシのようにうねうねしている彼女の姿が!


「えー! 大丈夫? 家でゆっくりしてればよかったのに」


 普段使わない筋肉を使ったからだな。俺のときと一緒だ。

 羽依は新しいことを覚えると夢中になるタイプだった。真桜に教わっていることもあり、楽しそうにずっと練習していた。無理が祟ったんだな。


「だって、会いたかったし……。夏休み最後だから二人きりになりたかったの」


 むくっと起き上がり、何故か得意げな表情になる羽依。――また変なこと考えてるな。


「そこで羽依ちゃんは考えました。水着に着替えてアロマDEエステ大会!」


「アロマDEエステ大会かあ! ……なにそれ?」


 羽依はたまにおかしな事言うよな。


「二人で水着に着替えてアロマオイルでマッサージしあうの。その後にゆっくりお風呂に使って温浴治療。とっておきのバスボムも持ってきたんだ!」


 筋肉痛にマッサージは逆効果になりそうな気もするけど、アロマオイルで優しくマッサージなら理に適っている気がする。

 バスボムが血行促進の効能付きであればなお良しだ。


「おお、何か楽しそうなイベントだね! お昼食べたら始めようか」


「んふ、ノッてくれて嬉しい! でも、勉強もやらないといけないからね。お昼食べて勉強終わってから始めようね」


 そんな楽しいイベントを前に勉強をするのもソワソワして集中できなそうだけど、羽依は勉強を疎かにしない。

 夏休みも結局遊びに行く以外はずっと二人で勉強ばかりしていた。

 基本、真面目な恋人同士だった。おかげでピュアピュアな関係のままだ。


 今日のお昼ごはんはカレーライス。夏休み最後だから、羽依の大好物を用意した。明日から頑張れるようにという気持ちを込めた一皿だ。


「羽依、おまたせ。カレーライスだよ!」


「やったー! あいたたた……。わーい……」


 嬉しさのあまり、手を上げて喜んだら痛かったらしい。難儀だなあ……。


「無理しないでね。食べさせてあげようか?」


「大丈夫だよ~! あ、やっぱり食べさせて」


 単純に甘えたいだけなんだろうけど、カレーなら食べさせやすそうだ。


「ふーふー。はい、どうぞ」


「あーん。ん、――おいひー! もういいや、自分で食べる」


 まどろっこしくなったんだろうな。自由だなあ、俺の彼女。


 やっぱりカレーは大好きなようで、にっこにこでおかわりまで食べてくれた。作り甲斐あるなあ。


 食事が終わり勉強を始める。この時間は羽依の聖域だ。その真剣さには毎度の事ながら模範になると思う。学年2位は伊達じゃない。

 けど、何となく分かるのは羽依は更に上を目指してそうだ。以前より更に集中の度合いが増しているように感じる。二学期はどうなるだろうか。


 小休止。コーヒーを飲みながら、他愛もない会話を楽しむ。


「蒼真、覚えてる? 今度の中間テストのご褒美」


「ああ、白のマイクロビキニでポールダンスしてくれるんだっけ

 」


「見たいの? なら練習するけど。でもポールダンスじゃない。お風呂一緒に入ろうって言ったでしょ。今日のお風呂と被っちゃったな~って思ったの」


 俺のボケを拾って実行を検討してくれるって、なんて懐の深い彼女だろう。


「ああ、でも大丈夫。20位以内ならサポーターなしでお風呂だったものね。全く被ってないよ」


「あう、ちゃんと覚えてるじゃない! 我ながら酷い思いつきだなって思ったけどね。まあ、確かに被ってはいないか……今日のバスボムは乳白色だからね。とても健全」


「健全さが保たれてるなら良かったよ。毎度我慢するの大変なんだからね!」


 俺の悲痛な叫びに、羽依はニヤニヤするだけだった。この小悪魔め。


 3時間ほど勉強し、二学期の準備は大体完了だ。


「では第一回アロマDEエステ大会を開催します! じゃあ私はお風呂場で着替えてくるから、その間に蒼真も着替え終えてね」


「はーい」


 ノリノリだなあ……。実はもう筋肉痛治ってたりして。でも楽しそうだし、俺も羽依の肌に触れるのはもちろん嫌じゃない。

 触れていられるならずっと触れていたい。ただ、それをしてしまうと我慢の限界を超えそうだった。

 羽依にはもうちょっと自分の魅力と、男性の限界を知ってほしいなあ。


「おまたせー!」


 羽依の水着は旅行の時に着ていたピンクのフリルビキニだ。プールと部屋では全く印象が変わってしまう。部屋で見る水着姿はもはや下着と変わらなかった。


「似合ってるね、その水着。めっちゃ可愛いよ」


「ありがとう。部屋で見られる水着って恥ずかしいね……プールより恥ずかしいな。私、白いマイクロビキニなんてホントに着れるのかな……」


 恥ずかしそうに頬を染める羽依が可愛かった。スイッチが入ってないと羞恥心が先に出るんだな。良いこと知った気がする。


 羽依はアロマのお香を炊いた。雰囲気がすごく出てるな。

 ベッドの上にビニールシートを敷き、その上にバスタオルを数枚敷く。そしてアロマオイルを俺に手渡す。


「じゃあ蒼真、よろしくね!」


 そう言って羽依はベッドに上がり、うつ伏せに寝そべった。


「では行きます……」


 アロマオイルを手に取り、冷たくないように体温で温める。


 そっと羽依の肩に手を当てるとビクッとした。初めは肩の辺りから優しく揉みほぐし、二の腕から徐々に下がっていく。

 指先を絡めるようにマッサージし、次は腋の下に手を当てる。


「あひゃひゃひゃ! 蒼真、ちょっとそこだめ!」


 やばい、だめと言われると余計にやりたくなる。

 肩甲骨に一旦離れてから横に伸ばすように腋に触れる。


「ん……、うん……。」


 観念したように押し黙る。続いて腰回りを重点的にマッサージする。


「あぁ……、ん……。」


 艶っぽい声が少し気になるけど、羽依はとても気持ちよさそうにしていた。


 そこから太腿、ふくらはぎとマッサージしていた辺りで羽依はすうすうと寝息を立てていた。


 アロマのお香は燕さんから貰ったものだった。マッサージの気持ちよさとリラックス効果で眠くなったんだろうな。少し眠らせてあげよう。

 今のうちにお風呂にお湯を溜めておこう。


 20分ほどで羽依は目を覚ました。


「寝ちゃった……。あー気持ちよかった! ちょっと楽になったかも」


「それなら良かったよ。お風呂沸かしたから入ろう」


「まって、蒼真もマッサージするから横になって!」


 あまり凝ってないけど、マッサージしないと納得しなそうなので、うつ伏せに寝転がった。


「んふ、蒼真の肌は綺麗だね~。このオイルは美肌効果あるから、一層磨けるよ!」


 羽依も俺と同じように肩からマッサージを始めた。


「ん……羽依、すっごい上手だね」


「お母さんも私も胸大きいからね、肩こるから揉み合ってるんだよ。――でも、やっぱり男の人は……大変だね。かったい!」


 そのまま羽依は俺と同じように全身マッサージしてくれた。


「うわー極楽……」


 くすぐったくも気持ちいい羽依のマッサージに身も心もほぐされた。


「じゃあお風呂はいろっか。二人で入るには相当狭いけどね」


「狭いところに無理やり入る密着感が良いんだよ~」


 二人で湯船に浸かる。乳白色の湯が先日の温泉を思い出させる。


「このバスボム温泉みたいだね。香りもそれっぽいなあ」


「そうだよ、あそこの温泉のお土産。自分用に買っておいたんだ。 使わないでおいてよかった~」


「――夏休みが終わるねえ。楽しかったなあ」


「そうだね~。でも、きっと明日からも楽しいよ! 」


 確かに今は新学期が楽しみになっている自分がいる。

 夏の経験を経て、自分にいくらかの自信もついた気がする。

 羽依も俺と同じように日々成長してるんだろうな。

 

 明日からまた頑張ろう。






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