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第8話 動物園

 軽くシャワーを浴びて、身支度を済ませて風呂場から出た。

 そのころには羽依の支度も済んでいた。


 今日の羽依は、オフショルの白いニットにタイツとショートパンツのガーリーファッション。可愛くて健康的な羽依にとても似合う装いだ。


 俺は綿のパンツにロングTシャツ、上にジャケットを羽織り簡単に済ませる。


「蒼真の私服姿、良いね~。なかなかかっこいいよ!」


「いや、羽依に言われるとちょっと恥ずかしいな……。よかったら今度服買うの付き合って」


 都内の子はおしゃれに敏感だ。俺なんてマネキン丸ごと買ってるだけだから、一応それっぽくは見えるかもしれないが、おしゃれとは程遠い気がしてる。


「じゃあ、彼ピにおしゃれコーデを着せちゃおう作戦だね!」


 そういって俺の腕に抱きついてくる羽依。もうすっかり偽装体勢オッケーなようだ。まだ家だけど。


 家を出て駅に向かう。

 羽依は俺と指を絡めるような手のつなぎ方をしてきた。昨日からずっとスキンシップ過多な気がしてるけど、それが羽依らしさなのかもしれない。


 相変わらず俺の心臓は全く慣れることなく、触れる度にバックンバックン言ってるが。


 徒歩15分ぐらいで駅に到着する。そこから電車で渋谷で乗り継ぎ30分ほどで目的の駅に到着した。


「土曜日だからそんなに電車は混んでなかったね。動物園はどうだろう?」


「時間はいっぱいあるからね。混んでても全然おっけー!」


 羽依は元気いっぱいに答えてくれる。実際、今日も泊まりだから、時間をきにせずに遊べるのは嬉しいところ。


「なんかすっごいオシャレな街だね……」


 都内に住み始めて1ヶ月程度だけど、あまり繁華街には立ち寄っていなかった。


「うんうん、学生の多い街だからね。オシャレなお店もいっぱいあるよ!帰りに少し見ていこうよ」


 羽依と一緒に歩くと、めっちゃ目立つ。周囲の視線が――集まる、集まる。

 果たして俺は釣り合い取れているのだろうか? いや絶対取れてない。


 羽依の可愛さは正直尋常じゃない。容姿が整いすぎているので、アイドルになっても大成しそうだ。まあ不向きなのもよく分かるけど。


 目立ちたがりではなく、日々穏やかに過ごしたいタイプだ。

 その辺は俺と、とても波長があってる気がする。


 駅からしばらく歩くと、目的地の動物園に到着した。


「今日はいい芝に出会えるかな」


「え? 動物じゃなくて芝? 蒼真、面白いね! 」


 羽依がケラケラ笑うが、芝を愛する俺としては、ちょっと心外だ。

 いつか庭付きの家を買って、芝お手入れおじさんになるのが夢だ。


 ――今日は動物を愛でておくか。


「羽依は目的の動物ってなに?」


「カピバラだよ~! 可愛いんだよ。この動物園、確か赤ちゃん産まれてるはず」


「へえ~! そりゃ見てみたいね!」


 ここの動物園は、猛獣がいないタイプの小規模な動物園だ。入館料がとても安く、学生がちょっとしたデートをするのに最適だと思う。


 小動物コーナーに行くと、カピバラが温泉に浸っていた。


「か~わいい~ね~」


 ゆったりのんびりくつろぐカピバラに、めろめろな表情の羽依。目が完全にハートマーク。よっぽど好きなんだな。


「赤ちゃん抱っこできるって。行こうよ」


「うん! ねえ蒼真、写真撮ってね!」


 羽依がカピバラに頬ずりする姿を、夢中で何枚も撮った。やばい、資産価値が計り知れないお宝が量産されていく!


「一緒に撮ろうよ!」


 羽依と俺の間にカピバラの赤ちゃんをはさんで自撮りでパシャリ。


「家宝ができちゃったよ。額に収めておくね……」


「私との2ショットで家宝になるなら、これから家宝だらけになるよ」


 そう言ってウィンクをする羽依。あざとかわいいが過ぎるって……。


 学校でもとても可愛い彼女だけど、こうしてデートで一緒に過ごす彼女は、可愛さの極地って感じだ。こんなの好きにならないほうが難しい。


 ――俺はもしかして、よっぽど難易度の高い約束をしてしまったんだろうか。


 偽装カップルか……。もし俺が本気で好きになって、羽依に告白したらどうなるだろうか?

 男性不信を拗らせてるのだから、俺のことを他の男と同一視してしまうかもしれない。それだけは嫌だ……。


 もっとも、俺が羽依にお似合いとも思えない。自己肯定をもっと持てるぐらいに強くなりたいな。


「蒼真、モルモット見に行こうよ!」


 俺の手を自然につなぎ、引っ張っていく羽依。その態度は偽装とは思えないような距離感だ。


 ――あれこれ考えずに、今を楽しんだほうが正解かもね。



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