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告られ彼女の守り方 ~偽装から始まる、距離感ゼロの恋物語~  作者: 鶴時舞
6章 夏休み後半

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第72話 上手なトラブルの回避方法 

 山の奥の宿。鄙びた雰囲気の温泉街。何もかもがエモい。こういう風景が見たかったんだよなあ。


 俺と羽依と美咲さんの3人は浴衣に着替える。

 宿の草履を履いて温泉街をぶらつくことにした。

 浴衣姿の二人はとても魅力的で、正直言えば何かトラブルが起きてもおかしくないほど。まるで誘蛾灯のようだった。

 夜なら間違いなく問題発生していただろう。昼間ならちょっとは安心かな。でもやっぱり気は抜けないな。


「無料の足湯だって! 浸かっていこうよ!」


 3人で足湯に浸かる。浴衣の裾から伸びる二人のきれいな足に思わず見惚れる。


「前から思ってたんだけどさ、蒼真って脚フェチだよね。目がやらしいもん」


 羽依がジトッとした目で俺を見つめる。俺にそんな性癖があったのか。言われて初めて気づいた。たしかに俺は脚が好きだった。

 美咲さんのスラッとしつつ、筋肉のしっかりついたふくらはぎもとても魅力だ。羽依の細く長い脚もとても艶めかしい。


「蒼真は素直だねえ。そんなもんいつでも見てるだろう。浴衣姿はやっぱ違うのか、じゃあもうちょっとサービスしておこうか」


 そう言って美咲さんは浴衣の裾を少し上に捲くる。大胆な行動に心臓が跳ねた。周辺の客の目線も一斉に釘付けになる。


「ちょっ! 美咲さん! 勘弁してください!」


「あははは! 続きは宿に戻ってからだね」


 そう言って俺の腕にぐっとしがみつく美咲さん。

 ほら、そんなことするものだから、隣で羽依がすごい顔でこっちを睨む……。怖いよう……。


 その時だった。


「あんちゃん両手に花で見せつけてんな! ちょっとこっちにも分けてくれよ!」


 見ると様子の悪そうな二人組の男が絡んできた。ああ、誘蛾灯にかかったようだ……。

 何かしらのトラブルはあるかと思ってたが、いくらなんでも早すぎるだろう。タイムアタック優勝だ。


「なんだい、こっちは親子連れだよ。勘弁しておくれ」


 美咲さんのなだめるような声。まるで何事も無いような実に静かなトーンだった。


「は? 親子? どうみたって友達か姉妹だろう。下手な嘘ついてないで一緒に遊ぼうぜ。こちとらこんな田舎に来て暇すぎるんだよ。一緒にいい思い出作ろうぜ!」


「あはは。褒め言葉として受け取っておくよ。——頼むからそこらへんで引き下がっておくれ」


 実に穏やかな笑顔でやんわりと拒絶する美咲さん。そんな言葉で引き下がってくれたら良いけども……。


「——あ、ああ。そうだな。悪かったな姉さん達。あんちゃんもすまなかった。ほら、行くぞ」


「え? 兄貴? こんな美人放って置くんですかい?」


「ばかっ! 良いから行くぞ!」


 実に何事もなくおだやかに厄介事が済んだ。一体何だったんだ。


「話の分かるタイプで良かったねえ。バカの中でもちょっとは出来るほうのバカだったようだね」


 けらけらと笑う美咲さん。何て言うか。すごい……。


「お母さんと一緒だと守ってくれる安心感はあるんだけどね。でもヒヤヒヤすることも少なくないの」


「美人すぎるってのも困りモンだよねえ」


 そう言いながら笑う美咲さん。羽依はテンションがちょっと下がったようだった。眉毛をハの字にしてしょんぼりしている。

 可哀想なのでそっと手を繋いだら、表情に温度が戻りニコッと微笑んだ。


 引き続き温泉街を散策する。晩は豪華な食事という事なので食べ歩きはなるべく控えめに。射的や輪投げなど、縁日の出店を思わせる遊び場が並んでいた。懐かしさと楽しさが混じり、童心に返って遊びまわった。


 羽依の機嫌もすっかり元通りになり、いつまでも楽しそうにはしゃいでいた。


「宿に戻って温泉浸かろうか」


 温泉街を十分満喫した俺たちは、宿に戻り温泉に浸かった。


 広い露天風呂だ。岩風呂で、周囲は竹の柵で囲まれている。硫黄の香りがたまらない。温泉だといい香りに感じてしまうのは何故なのか。効能は美肌を強調してあった。肌が綺麗って言われることが多い俺にも合ってるのかも。売りの部分は磨いておくべきだろうしな。

 

 とにかく混浴ではなかったので一安心だ。しかし21時から家族風呂を予約してある。

 

 もちろん嫌なはずはない。ただ、ひたすら緊張する。羽依とはなるべく見ないようにしつつも、何度か一緒に風呂に入ったことはある。しかし、美咲さんとは初めてだ。 


 俺としても美咲さんはお母さん的な人だ。でも美人度で言えばテレビで見る女優よりよっぽど綺麗だと思う。緊張しないわけがない。


 無事夜を乗り越えることが出来るんだろうか……。さらに言えば寝相の悪さか。この前3人で寝た時は本当に大丈夫だったんだろうか。ああ、悩みは尽きない。


 湯船でまったり考えていたら、ぼーっとしてしまった。


「蒼真! そっち人いる? こっちはお母さんと二人だよ~」


「こっちも俺一人だよ~」


「ここの露天風呂最高だね~。景色も良いしお肌に良さそうだし。 でもそろそろのぼせそうだから上がるね」


「俺もあがるよ~」


 実に気持ちの良い風呂だった。体を拭き上げ、髪を乾かし部屋に戻る。ほどなくして女子たちも部屋に戻ってきた。


「あ~さっぱりした。蒼真、おまたせ」

「いい湯だったねえ。ホント良いお宿でよかったね」


 ゆったり温泉に浸かって肌がほんのり赤く染まった二人が何とも艶めかしかった。


 お部屋に夕食が運び込まれた。漆器の御膳に所狭しと並べられた豪華な料理

 天ぷら、刺し身、牛すき焼、香の物、茶碗蒸し。見た目からして、どれも期待を裏切らない品々だ。

 美咲さんは明日の運転もあるので、お酒を1合だけ飲むことにした。


「ぷはあ~! やっぱこれだねえ! 温泉に浸かった後の日本酒! 旅ってやっぱり良いねえ! こういうのがあるから明日からまた頑張れるってもんだよ」


 美咲さんは上機嫌でお酒を堪能していた。俺と羽依も旅先の料理に舌鼓を打った。


「こういうところで食べるのって何でこんなに美味しく感じるんだろうね!」


「いや~実際美味しいよこれ。山なのに刺し身って思っちゃうけど、良いの出してくれてるね」


 海沿いの店に負けないレベルの刺し身にはちょっと驚いた。きっと良い仕入れルートがあるのかな。天ぷらは山の幸を活かしたものだった。実に贅沢な組み合わせだと思う。


 それにしても美咲さんはとても美味しそうにお酒を飲む。俺も酒を飲めるようになったらああいう風に美味しく飲むのかな。ちょっとだけ興味わいちゃうよね。


 食事を終え、まったりとした時間が過ぎていく。


「そろそろ家族風呂の時間だね。行こうか」


「んふ、楽しみだね~蒼真!」


 美咲さんの声でみんな支度を始める。

 ああ、とうとうこの時が来たか。——腹をくくろう。


 とにかくのぼせないように。かな。



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