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告られ彼女の守り方 ~偽装から始まる、距離感ゼロの恋物語~  作者: 鶴時舞
5章 貸別荘一泊旅行

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第58話 夏の旅行 その9 朝風呂

 ——チュン、チュン


「ん、蒼真——」


 口の中に柔らかな感触。

 甘いような、温かいような、不思議な感覚が意識を引き戻す。

 羽依が俺の上に乗ってキスしている。柔らかい感触は彼女の体だったのか。


 手にも柔らかい感触が……。


 伸びた手の先には真桜の体があった。

 彼女は少しうなされているようだった。


 意識が完全に覚醒し、現状を理解し始めた。


 俺は真桜に触れながら羽依にキスされていた。

 客観的に見たら、俺がとんでもない鬼畜にしか見えない……。

 慌てて手を引っ込めて、羽依の頭を撫でる。


「おはよう羽依、——俺また何かやっちゃってた?」


 羽依は妖しく微笑んで、また顔を近づけてキスをした。


「ん、色々……。でも、今日は全部許してあげる。ぎゅって抱きしめて」


 とろんとした表情で熱っぽくささやいてくる。羽依のベビードールは大きくはだけていた。腿から背中にかけて、優しくゆっくりと撫でる。羽依の体がびくっとしつつも耐えていた。


 ふと気配を感じて横を向くと、真桜と目が合った。

 ……見てたのか。というか、ガン見してた。起きてたのか……。


「ふふ、朝から頑張るのね。あなた達のキス、つい見入っちゃった」


 その表情に嫌悪感などはなく、純粋に良いものを見たという雰囲気だった。ただ、俺の方が妙に恥ずかしくなってしまった。

 羽依は俺から降りて真桜に向き合った。


「おはよう真桜。——見られちゃったね。ちょっと恥ずかしい」


「気にしなくてもいいのよ。私も羽依とのキスを蒼真に見られてるし。お相子ね」


「真桜、その、ごめん。またやっちゃったみたいだね……」


 真桜は俺の言葉に顔を真っ赤にして、でも一呼吸おいてからすぐに落ち着きを取り戻した。


「私、言っちゃったものね。何をしても許すって。私もその……何でもない。——でも、そうね。時間だわ。今すぐみんなでお風呂に行くわよ!」


 部屋は陽の光ですでに明るく、二人のベビードールの透け感が艶めかしすぎた。兎に角、色々リセットしたいんだな。俺もそれには賛成だった。早く着替えたい……。


 ここの別荘はバスタオルの備品が大量にストックされている。いくら使っても大丈夫なようだ。羽依と真桜はバスタオルをしっかり体に巻いて、サウナに入った。俺は一旦身を清めてから後に続いた。着替えを多めにもってきておいて正解だったな……。


「あづいねー……でも気持ちいい……」


「早朝サウナって何か良いわね。色んなものが出てる気がする」


「なんで二人とも平気なんだ。いやーこれホント熱いな……。しゃべると熱い空気が肺に入ってくる。火傷しそうだ……。」


 サウナ10分、水風呂1分、休憩5分——それが1セットらしい。こうすることによって『整う』状態になるらしい。


「——よし、10分。さっさと水風呂に入ろう」


 サウナを出て水風呂に足をつける。キーンと冷える感触に体が硬直する。これ本当に入って良いのか? 冷たすぎて心臓止まりそう。


「づめだい~。でも頑張る!」


 羽依が可愛らしい顔をしかめながら頑張って水風呂に肩まで浸かる。おお、やるなあ。

 真桜は表情を変えずにすぅーっと水風呂に浸かる。やっぱ真桜すごい……。

 気づけば俺だけ浸かっていない。仕方がないので気合をだして肩まで浸かる。


「びゃああああづめだいいいいい!」


 俺一人だけ騒いでた……。

 よし! 1分経過! 即出てベンチでごろっと落ち着く。


「これが『整う』かあ。うん、わかんない」


「蒼真、あと1セットやれば分かるわよ。ほら、入るわよ」


 真桜に手を引かれサウナに連行された。



 2セット目を終えて俺はグロッキー状態だった。ああ、これが整うってことなのか……。楽しいのかこれ?


 羽依と真桜は整ったらしくとても喜んでいた。


「やっぱ良いねサウナ! もう1セットやったら時間きちゃうね。さすがにこの格好は隼くんには見せられないな」


「私だって見せられないわよ。隼とはとっても仲良くなれたけど、さすがにそこまではね」


 隼はしっかりと異性として見られてるんだな。——俺になら見られてもいいのか?

  羽依の大胆さは通常営業だとして、真桜は信頼した人間に対して、大胆っていうより隙ができるのかも。クールビューティーの薄皮の下は、妙にアンバランスで幼いところを感じる事がある。ある意味羽依より危なっかしいかもしれない。


 3人で湯船に浸かる。朝の新鮮な空気はとても清々しい。日差しを浴びた木々の葉が、朝露をまとってキラキラと光っていた。まるでエメラルドの粒に金箔をちりばめたような、緑の海だった。


「あー! これで旅行でやりたいこと全部やりつくした! 悔いはないね!」


 ぐーっと伸びをする羽依。バスタオルが落ちないか、ちょっとハラハラする。


「そうね、旅行前までは、まさか一緒にお風呂はいるとは思ってなかったわ。今この状態だと、なんか自然に思えるわね」


「いや……。意識しちゃうよやっぱり。今でも緊張してるし。やっぱ見られたら……恥ずかしいし」


 俺の言葉に羽依と真桜が向き合う。そして俺の方を見る。


「実を言うとね、蒼真にはちょっと悪い事しちゃったかなって思ってるの。寝てる時に真桜と悪戯しちゃったから……」


「何しても起きないんですもの。ちょっと、その、盛り上がっちゃったわね……」


「え? マジで全然わからなかったよ……。何したのさ?」


 俺の問いに羽依と真桜はこっちを見れなかった。


「……反応良かったんだよね。ビクッビクッて」


「そう、可愛かったわね……こんなふうなんだって」


「ちょっと! ホント何したんだよ!?」


 真桜が湯船で火照った顔で妖しく挑発的に俺を見つめ返す。


「まあ、お返し? 蒼真はやっぱり寝相が悪いのね。赤ちゃんみたいだったわよ」


「真桜も災難だったね~。でも、赤ちゃんは何となく分かる。無邪気なんだよね~。だから怒れないの」


 赤ちゃんって……。俺はそんなに母性をくすぐるキャラだったのか。自分ではワイルドなタフガイだと思ってたのに……。


「気にしないでね蒼真。とっても可愛かったから大丈夫よ。でも、お互い忘れましょうね。」


「真桜がいてよかったよ~。二人いたから分散されたね。おかげで私もいくらか眠れたかな~」


 少しずつ紐解かれる、俺の寝相の悪さ、彼女たちの悪戯の内容がとても怖く、それ以上追求できなかった。二人は妖しく笑うばかりだった。


「あーやっぱりタオル邪魔! 蒼真、後ろに来ててね」


 そう言って羽依はバスタオルをほどいた。背中を向けてるとは言え、全裸になった羽依に、一瞬で脳がショートした。


「真桜も取っちゃおう!」


 そう言って真桜のバスタオルを剥がした。そうしてくることは想定内だったようで、特に抵抗することもなかった。

 お湯の中は日差しの照り返しでキラキラ光っていた。湯の中が見えていたら即死だった……。


「ん~! 開放感がすごいわね! 明るい日の下で肌を晒すのは背徳感がすごいけど、なんだか高揚感も感じるわね」


 とびっきり可愛い異性の同級生二人と一緒に風呂入ったことのある人ならきっとわかるだろうけど、背中だけでも十分死ねる。


「ね、せっかくの混浴だもの、このぐらいしないとね。そうだ、全裸プールもやりたかったけどもう時間がない! 次がもしあったら全裸プールをみんなでやろう!」


「それはさすがにどうかと思う」


「そうね、羽依だけ全裸で、私たちはそれを眺めているわね」


「なにそれ、興奮しちゃう」


 興奮すんな。ホント羽依の性癖わかんない……。


 これ以上は心臓に悪い。交代の時間を理由に、先に風呂をでて身支度を終えた。


 ほどなくして彼女たちもゲストルームに戻ってきた。


「朝食まで時間が結構あるね。もうちょっと寝てたらどうかな?」


「そうね、なんだかんだでゆっくり眠れたとは言えないわ。もうちょっと寝てようかしら」


「そうだね。私ももう少し寝てようっと。蒼真は起きてるの?」


「うん、俺はゆっくり眠れたからね。二人には悪いけど……」


 恨めしそうな二人の目線が怖かった。


 二人はパジャマを着て、再度二人で抱き合って眠りについた。

 可愛らしい寝顔なので写真に残しておいた。


 ——また宝物が増えたな。

 増えまくった宝物を眺めながら、旅の余韻に浸っていた。

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