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告られ彼女の守り方 ~偽装から始まる、距離感ゼロの恋物語~  作者: 鶴時舞
5章 貸別荘一泊旅行

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第56話 夏の旅行 その7 男風呂

 BBQも終わり、花火で締めた一泊旅行の夜。燕さんが風呂の順番を決めていた。


「まずは男子が入って次に女子。その後は夜中や朝風呂とかも入るよね。偶数時間は私と隼。奇数時間は3人の時間でどうかな?」


「異議なし!」


 燕さんは仕切るのもとても上手だ。物事がとてもスムーズに進行する。

 燕さんは隼と入りたかったって話だけど、今の話なら後で二人で入るつもりなのだろう。


 羽依がまた3人で入ろうと言わない限り、一先ずは安心かな。あとはさっさと寝て、寝相が悪くならないことを祈るのみだ。手足縛るって話はさすがに冗談だよね?


「じゃあ隼、一緒に入ろうぜ!」


「おう!」


 部屋に戻り、支度を済ませ露天風呂に向かう。

 室内風呂もあるが、露天風呂にはサウナがある。4人ぐらいは入れそうだ。小さいながらも水風呂もあるので整うことができる。ホントなんでもある別荘だな。


 先に頭と体を洗い、身を綺麗にしてから湯船に入る。少々熱いが、広々と快適な風呂だ。夜空を見上げると、無数の光を散りばめたような、満天の星空がとても綺麗だった。都内では見られない景色に息を呑む。

 ホント良い別荘だなあ。


「隼、ここの宿泊代って実際のところいくらぐらいなの?」


 まったりと湯船に浸かりながら隼に聞いてみた。いつか自分でもこのぐらいのところを借りられたらなって思う。


「具体的な金額は聞いてないけど、ウン十万はすると思う」


「……ブクブク……」


 おっと逝きかけた。うん、無理。絶対借りない。まあ、そのぐらいしちゃうよね。セレブ体験をさせてもらったんだな。


「——燕さんってすごいな。スケールが違いすぎる。別の次元の人みたいだ」


「やっぱそう見えるよなあ。俺が言うのも何だけど、姉さんのすごいエピソードを語ったら一晩じゃ足りないぐらいだ。ああいう人が姉ってのは幸せでもあり、——いくらかのしんどさもあるな」


 隼の言っているしんどさとは、姉と比較されることか。きっとたまに口にする両親との軋轢のことなのだろう。


「そっかあ……、隼の親も相当厳しそうだもんな。成績維持が部活の条件って言ってたっけ。文武両道は並大抵じゃできないな」


「うちの親は確かに厳しいな。でも、まだ姉さんに比べたら凡人に感じるよ。出来ない人の身になれない典型だ。そして俺は両親から出来ない側に見えてしまってる。子どもの価値の基準があの姉さんってなったら、そう見えるわな」


「うわっ……そりゃしんどすぎるな……」


「だろ? 多分俺も凡人だからな。凡人なりに限界近くまで頑張ってるよ。蒼真だってそうだろ? バイトしながら成績アップって並大抵じゃないぞ。俺の言ったトレーニングもちゃんとこなしてるみたいだし。そうだよ、お前、結構筋肉ついたよな! 」


 そう言って軽く胸にパンチしてくる隼。マッチョなやつに褒められると自信がつくなあ。


「マジ? そう見えるか! 隼のおかげってのもあるよな。羽依も言ってたよ。俺はみんなに鍛えられてるって。ありがたいよなホント」


「はは、そういうのを実直にこなせるやつなんてそんなにいねえよ。——お前はやっぱ良いわ。羽依ちゃん惚れるのも分かるよ」


 そう言ってから照れたように笑う隼。


「なんだよ、お前まで惚れたか? お尻はあげないぞ?」


「いるかボケ!」


 肩パンチくらった。いてて。

 

 静かな夜だ。虫のさえずりが聞こえてくる以外はとても穏やかな場所だった。月明かりが水面を照らす。キラキラと光ってとても綺麗だ。夜になり、幾分冷えてきたが、露天風呂を楽しむには丁度良い。


 隼が少し間を置いてから、湯に沈めた手をじっと見つめたまま、低く口を開いた。


「なあ、真桜の事はどう思ってるんだ?」


 隼が聞きたいのは恋愛感情って事だろうか。


「好きだよ。親友としてな」


「まあ、そうだよな。いや、すまん!そんな顔するな!」


 全く、俺がどんな顔してるっていうんだ。真桜に関しては恋愛感情にはなり得ない。友情とも確かに違う、もっと尊いこの感情を言い表す言葉が見つからない。だから俺は「親友」と呼びたい。今の俺にとって、それがいちばんしっくり来る言葉だから。


「いや~、いい加減のぼせそうだ。そろそろ女子と交代するかあ。——隼は後で燕さんと露天風呂に入るの?」


「入らないと納得しないだろうからな……。俺も嫌じゃないし。——俺も大概だな。そう、俺は姉さんが好きだ。隠すつもりもない」


 おお、言い切った。俺には世間体とかそういうのはよくわからない。でも隼には堅い決心が見られるような気がした。だったら俺はこの親友の決めたことを応援したい。


「羽依じゃないけど、——隼、頑張れよ」


 俺の言葉に返事はせずにニヤッと笑うだけだった。


 風呂を出て、着替えてリビングに戻ると、女子たちは大変な盛り上がりようだった。お菓子をつまみながら、ジュースとビールでちょっとした酒盛り状態だ。何をそんなに盛り上がってるのかな?


「隼の筋肉がやっぱり至高なのよ! 焼けた肌に引き締まった運動部の筋肉! 特にサッカー部ならではのハムストリング! 蒼真も、あの肌の綺麗さと発展途上の筋肉はこれからの成長が楽しみね!」


「隼くん確かに良い体してましたね~。さらにムキムキになったら、もうボディビルダー枠ですよ! 私は蒼真みたいな発展途上の筋肉が好きだな~。柔らかそうで、ぎゅってしたくなる。それに肌も綺麗だし!」


「蒼真の筋肉は確かに発展途上ね。もう少し負荷をかけてみっちり鍛えてあげるのもいいわね。痛いぐらいで丁度いいのかも。ふふ、筋肉痛でうずくまってる蒼真ってちょっと見てみたいわよね」


 ——女子たちは筋肉談義で盛り上がっていた。あけすけだなあ……。


「みんな、お風呂どうぞ~」


「お、でたね発展途上。じゃあみんな! お風呂入って続きを語ろうじゃないの!」


「さんせ~!」

「ふふ、じゃあね発展途上。タンパク質とったんだから筋トレでもしてなさい」


 俺のあだ名が発展途上になっていた。

 羽依が感化されないと良いなあ……。



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