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告られ彼女の守り方 ~偽装から始まる、距離感ゼロの恋物語~  作者: 鶴時舞
3章 恋人として。

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第34話 夏休みの計画

 ミニチャイナ服のご褒美からしばらく経った7月半ば、期末テストの最終日の金曜日。

 週明けには成績発表と個別面談が控えており、それが過ぎたら待ちに待った夏休みだ。


 とは言っても、どこかに行く計画は今のところ特にない。羽依も男性恐怖症を完全に克服したとは言い難く、肌を露出するような海やプールには行きたくないらしい。

 羽依の圧倒的なスタイルの良さと整いすぎた美貌は、間違いなくナンパ師が寄ってきて不愉快な思いをしてしまうだろう。


 ただ、どこにも行かないのも味気ないので、どこかしらの楽しい場所に行きたいとは考えている。


「夏休みかあ~。やっぱり勉強かな。お昼はお店の手伝いもやりたいしね。」


 朝の通学中、羽依と夏休みの計画を練っているが、なんとも枯れた内容になってしまう。


 どこか遊びに行きたい気持ちはあるものの、海やプール以外となると、単純に暑すぎる。羽依は二人で居るだけで満足できるので、俺の部屋で勉強という流れが多くなりそうだ。もちろんそれも悪くないが、もう少し華が欲しいのも事実だ。


「そうだなあ、俺もお昼バイトさせてもらえるかな?」


「良いと思うよ。お昼もすごく忙しいけどお母さん一人だから機会損失多いみたい。3人で回せば回転率よくなるからね。儲かっちゃうよ!」


 商売をやる上で、お客さんの取りこぼしが痛いのは分かる気がする。何度足を運んでもらっても入れないようでは、その店には行かなくなりそうだ。


「バイト雇えばもっと楽になりそうだけどね」


「忙しすぎてすぐ辞めちゃうんだ。お母さんも人を使うの苦手みたいでさ、一人でやってるほうが気楽でいいんだって」


「俺はよかったのかな?」


「一目みて気に入ったんだって言ってたでしょ。あれ本当みたい。実際ちゃんと頑張ってるし、お母さん人を見る目あるよね!」


 そういって嬉しそうに溢れる笑顔で俺にしがみついてきた。


「ねえねえ、蒼真は私の水着姿みたい?」


 悪戯な微笑みを向けてくる。見たいか見たくないかで言えばそりゃ見たい。でも、羽依の白磁の肌を夏の日差しに晒すのはもったいない気がする。それに、他の男に見せたくないのが最大の理由だ。水着と下着の露出はほぼ同面積なのに、水着が許されるのは本当に理解できない。


「見たいけど俺だけに見せてほしい」


 思いっきりストレートに言ってしまった。羽依はちょっと呆れつつもニマニマしている。


「私も蒼真だけに見せたいんだけどね。やっぱり海やプール怖いものね……そうだ、プライベートプールとか無いのかな。ハリウッドスターの家みたいなの!」


 なにを馬鹿なことをと思いつつ、プライベートプールか、そんな都合の良いものはあるのかな?

 スマホで検索してみると、プール付きの貸別荘的なものが数件あった。料金はちょっとお高いけど、手が届かないほどでもない。

 羽依はお家のお手伝いの時間はきっちりバイト代が出てる。

 労働の対価はきちんと払うのは美咲さんらしいなと思った。俺のバイト代も相場より少し高かったし、慣れたらさらに時給アップしてくれるとのこと。美咲さんはモチベ上げるのがとても上手だ。

 二人で出し合えば、そこそこの場所に泊まれそうだ。


「羽依、こんなのあるよ。貸別荘プール付き」


 羽依が目をキラキラさせている。


「これいいね! 蒼真、これでプラン考えようよ!」


「うん、都合のいい日を決めて予約しよう。今から取れたら良いけどね」


 よかった。枯れた夏休みにはならずに済みそうだ。羽依の水着姿をこれから先の楽しみとして日々生き抜こう。


 目下の悩みは個別面談だ。基本、親が参加することになっているが、うちは来ないので俺一人での面談となる。色々聞かれると思うと今から憂鬱だ。



「おはよう、羽依、蒼真」


 教室に入る前に、多目的スペースに居る真桜に声をかけられる。


「おはよう真桜~! 早いね、今朝蒼真と夏休みの計画してたんだ」


 楽しそうに真桜に話す羽依、真桜は「はいはい、それより期末テスト最終日よ」と現実に引き戻す。


 羽依の天然感と真桜のリアリスト。全く違うタイプの二人がとても仲良しなのは意外にも感じるし納得もできてしまう。お互いが高め合う理想的な友人関係だ。


 朝の勉強が終わり、HRの後、期末テスト最終日の緊張感が漂う。


「隼、ちょっと聞きたいんだけどさ、貸別荘って知ってる?プライベートプールがあるところ」


「雪代さんと泊まるのか? リア充死ね」


「わおっ! 辛辣~!」


 親友が酷いこと言ってくる。隼はフリーだけど、言い寄ってくる子は結構居るようだ。イケメン高身長高成績でサッカー部期待の新人と、物語の主人公のような王子様属性だ。でも、自分から好きにならないと付き合わないというのが隼の拘りらしい。


「なんか余裕があるのがムカつくな。まあ全く知らないこともない。姉さんと泊まる予定があるからな」


「二人きりで?」


「そうだな。毎年二人で泊まってる。うちは両親忙しいからな。」


「へえ~、ちょっと色々聞かせて!」


 隼から有益な情報を手に入れることができた。隼の家は貸別荘の常連らしいので口利きを期待できそうだ。



 放課後、やっと期末テストが終わった。ついこの前中間テストやったばかりなのに、感覚短すぎないか?


 羽依と真桜が楽しそうに話してる。今朝の夏休みの計画話のようだ。話を終えた真桜が俺に声をかけてきた。


「テストお疲れ様。今回の手応えはどうだった?」


「中間よりもやっぱり難しかったね。でも一応大体できたかな」


 真桜は優しげな微笑みを向けてくれる。


「毎日本当に頑張ってるわよね。明日、またうちでお昼一緒に食べましょう。待ってるわね」


「うん、また明日ね」

「またね、真桜!」


 真桜は手をひらひらさせて教室を出ていった。


「真桜ってやっぱり格好いいよね。体幹が良いのかな。私ももうちょっと鍛えてムキムキになろうかな」


 ムキムキな羽依を想像して思わず吹き出してしまった。


「それにしても期末テスト疲れたね~。なんかテストばっかりに感じちゃうよ。蒼真、今回の目標は何位?」


「前回良すぎたからなあ……50位以内に入れたら十分嬉しいかな。羽依は?」


「私も10位以内に入れたら十分だよ~。前より勉強の時間減ったしね」


 俺と付き合う前の羽依は、バイト以外は大体勉強か読書だったらしい。俺と付き合ってからも、二人でいるときは大抵勉強している。ちょっと勉強しすぎじゃないか? と思っていたけど、進学校で上位の成績を維持するには、やはり勉強の累積時間が必要だ。羽依と付き合う前を思い返すと、全く勉強してなかったような物だったなあ。


「じゃあ今回のご褒美どうしようかな~」


 羽依がニヤニヤしながら俺の様子を伺ってる。


「今回もご褒美ありなのか! じゃあさ、羽依の手料理はどうかな」


「え? そんなのでいいの? エッチなのは?」


 なぜ俺がエッチなご褒美を求めていると思った。いや、思わなくもないけど、あまり度が過ぎると俺が耐えられないの。だってヘタレだし。


「じゃあエッチな手料理でよろしく」


「なんか雑だね……。良いよ。エッチな手料理ね……。エッチな手料理って何?」


「なんだろう? わかんない」


 二人で頭を悩ませるのだった。エッチな手料理とは……。





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