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告られ彼女の守り方 ~偽装から始まる、距離感ゼロの恋物語~  作者: よるひ
6章 夏休み後半

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第259話 優しい言葉は期待してはいけない

 傷心だろうがなんだろうが、とりあえず自分の仕事を全うする。その方が楽になれるとも思った。


 生徒会室まで姉さんを迎えに行った。

 俺に気づいた姉さんが、驚いたように瞬きをする。


 ――そんなに酷い顔をしてるんだろうか。確かに弱っていた。誰かにぶちまけたかった。事情を知っている姉さんになら――。


「や~い振られ虫」


 そう言って頬をつっつく姉さん。

 慰めの言葉を期待していたわけではないが、姉さんは妙に楽しそうだった。


「そうやって人の不幸を笑ってるといいよ……」


「いいじゃないの。まだかわいい彼女が残ってるんだから」


 呆れたように姉さんは言うが、そういう問題ではない。

 帰り道の足取りは重く、まるで足かせをはめられたような感覚だ。

 もし姉さんを襲う暴漢が現れたらかなりやばい。きっと今の俺は小学生にも負けると思う。

 ――ちびっこ達。うちの姉さんを狙うなら今だ。


 悪者は現れることなく家に着いた。


「ただいま。さあ、振られ虫の蒼真くん。今日も勉強頑張ってね。私がご飯を作るから」


「姉さんさあ、煽るか慰めるか、どっちかにしてよ……」


「じゃあ煽る。振られ虫~」


 姉さんはけらけらと笑ってキッチンに向かった。


 ――まったく、やれやれだ。


 最近姉さんのキャラが変わってきた気もする。明るくなったというか影が取れたというか。

 そんな姉さんに戸惑いつつも、どこか救われた思いもあった。


 姉さんの好意に甘え、勉強に勤しむ。今はとにかく何かに集中していたかった。でないと辛い。



 勉強中、突然スマホの着信音が鳴った。隼からだ。


(何考えてんだあいつ。出たくねえんだけど……)


 放置していてもしつこく続く。切れてもまたすぐにかけてくる。

 ――文句でも言っとくか。


「なんだよ……」


「なんだよじゃねえよ! さっさと出ろよ! 話があるんだよ」


「そっか。俺からはない。切るぞ」


「待てって! 大事な話なんだからよ」


「……手短にな」


「わりいんだけどよ、お前んちに泊めてくれね?」


 一瞬耳を疑った。こいつ何言ってんだ?


「お前さあ……どんだけメンタル強えのよ。――真桜んちでも泊めてもらえば……いいだろ」


 自分で言って自分で傷ついてしまった。情けない……。


「――真桜とはまだ付き合ってねえよ。保留にされちまったからな」


「はあ? 何かあったのか?」


「真桜、あのあとずっと泣いててな。とりあえずうちのマンションに連れてきたんだよ」


 真桜が隼のマンションに行った。その事実が俺をさらに抉る。


「んだよ……早速おのろけかよ。ぶっころすぞ?」


 自分でも驚くほど心がやさぐれていた。


「なんだよおっかねえな……うっかり姉さんと鉢合わせちゃったんだよ」


「え? 燕さんと?」


「ああ、泣きじゃくってる真桜から話を聞いてな。姉さんの怒りがなぜか俺に向いたのよ」


「ほうほう。ちょっと興味わいてきた。続けろ」


「んだお前……人の不幸を笑ってるだろ?」


「うっせ! はよ続き!」


「ったく……真桜と話するから俺は野宿でもしてろって追い出されたんだよ」


「野宿って……このクソ寒い中? 燕さん怒ると怖いんだな……それで隼は外にいるんだ?」


「ああ、今、九条さんちの前だ」


「はあ?」


 窓を開けると隼が手を振ってきた。


「寒いんだよ、二月に野宿って姉さん何考えてんだよ……」


「しらねーよ、ったく……ちょっと待ってろ」


 さすがに家の前で凍死してたら洒落にならない。

 リビングに向かうと、いつの間にか来ていたしーちゃんと姉さんが、英語の勉強をしていた。


「遥さん、あの、大変申し訳ないんだけど、実はご相談が」


「うん? どうしたの? 振られ虫くん?」


 相変わらず煽る姉さん。これがシスハラというやつか。


「そーちゃん、真桜ちゃんに振られちゃったんだって!?」


 二人はキャッキャウフフってノリではしゃいでる。誰も同情なんてしてくれない。

 ああ、もうやだ……。


「それは置いといてください。隼がすぐ外にいて、今晩泊めてほしいと言ってるんですが……」


「え……隼って燕さんの弟の?」


「えー!? そーちゃんの恋敵がなんでまた!?」


「実はー……」


 電話の内容を説明する。

 二人の目は好奇に輝いていた。


「蒼真くん。今日だけよ」


「そーちゃん! 私も泊まるけど、部屋はどうするの?」


「あー……俺の部屋で寝かせます」


 二人はさらに盛り上がった。

 手を繋いでキャーキャー言ってるし……。


 みんなおかしいって。何考えてんだよホント……。



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