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告られ彼女の守り方 ~偽装から始まる、距離感ゼロの恋物語~  作者: よるひ
6章 夏休み後半

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第245話 おあずけ

「うぅーさむい……死んじゃう……」


 しばらく海岸で遊んでいたが、さすがは二月の海。日差しは幾分暖かかったが風が出た途端に気温がぐっと下がる。

 寒さをものともしない真桜とは対照的に、羽依は辛そうに顔をしかめる。素足で砂浜を歩いたものだから、白い素足が赤くなっていてなんとも可哀想だった。


「ほら、部屋戻ろ。っていうか、羽依タイツ履いてなかったっけ? どうして生足?」


 俺の疑問に対して唇を尖らせて下を向く羽依。


「だって……蒼真がタクシーで……さんざん……」


「あー! ああ……ごめん……」


 ストールで隠れてるのをいいことに、互いの太腿に触れ合ってたのだった。結果はお察しの通りか……。


「なんだかドキドキしたよね……蒼真の手がいたずら過ぎたんだよ……」


「ごめんって。でも、羽依めっちゃ可愛かったな……声を我慢してる顔がなんとも――」


「ばかばか、蒼真のばかー!」


 顔を真っ赤にして俺をぽこぽこ叩く羽依。

 そんな俺たちのやりとりを聞いていた真桜が顔をニヤけて詰め寄った。


「ふうん……道中、二人で楽しいことしてたんだ?」


 その悪戯な眼差しにドキッとする。


「いやあ、ほら、真桜はずっと寝てたからさ……」


「そうよ。あなたのために早起きして、いなり寿司を作ってたからよね。寝不足で辛いわ~」


 不満を口にするが、本心ではないのはすぐにわかる。


「ごめんて……でも、楽しみで眠れなかったって話だよ?」


「――別にいいじゃないの」


 そう言って、真桜はギュッと腕にしがみつく。


「そうよ、楽しみだったのよ……もう随分と触れ合ってないし」


「そうだったね。風邪引いたり、仕事だったりでタイミングが合わなかったから……」


「その分私と真桜は、『なかよし』を何回もしたよね~」


 真桜にぎゅっと抱きつき頬を擦りよせる羽依。堂々とした浮気宣言に心が揺れる。――なんてことはなく。


「な、何回もっ!? そんなの知らない! 俺を差し置いて二人だけで楽しむなんて……」


 とりあえずノッておく。


「ごめんね蒼真。羽依を寝取っちゃって」


 真桜が舌を出して挑発する。謝ってる雰囲気はこれっぽっちもなかった。


「まあ私が真桜を寝取ったのが正解かな? 真桜は大体されるがままだからね~」


 真桜は途端に俺から離れて羽依をギュッと抱きしめる。“仲良し”をたっぷり見せつけてくれる二人に文句の一つでも言いたくなってきた。


「あ~はいはい。脳が破壊される~。――これでいい?」


 俺の冷めた態度に、羽依と真桜が顔を見合わせる。そして頷きあう。嫌な予感しかしない。


「お部屋に戻ったらお風呂に入ろうよ!……蒼真抜きで」


「ふふ、羽依は意地悪ね。でも、そうね。今日の目的は勉強なんだし。悪いわね、蒼真」


 そうして二人で腕を組んですたすたとマンションに戻っていった。

 冷たい北風の中、一人取り残されてしまった。

 ――なんだこの敗北感は……。


 部屋に戻ると、早速風呂に向かう二人の姿が。


「ねえ蒼真。ここの部屋風呂まだ見てないよね……マジやばいよ……」


「ああ、なんか広いらしいね。どうだった?」


「普通のお風呂と露天風呂まであるの! すごくないっ!?」


「うっそ、まじで!? ちょっと見てくる!」


 風呂の入口は普通のドアに見えるが、その向こうがまるで異世界のようだった。室内は立派な檜風呂と、その奥は開放的な露天風呂になっている。


「えー……なんだろう……感覚がバグるな。これが各部屋ついてるって頭おかしいだろ……」


「そこがセレブ御用達ってところなのかなっ! 一泊いくらするんだろうね!」


「あー聞いてないけど……聞くのも怖いかも……」


(成績が悪かったら自腹切れなんて冗談言ってたけど、ちょっと洒落にならないな……マジで頑張らないと怖すぎる)


「真桜っ! 早くお風呂に行こう! 蒼真はお部屋でお勉強しててね!」


「お、おう……いってらっしゃい……」


 ――そりゃ俺は勉強しにきたんだ。何も間違ってはいない。でも、仲間はずれは寂しすぎる……。


「ふふ、じゃあ行ってくるわね蒼真。きっと羽依は楽しいことを考えてるのよ。勉強頑張ってね!」


 そう言って唇に軽く触れるキスをしていく真桜。その不意打ちはとても優しかった。


 勉強の前に冷蔵庫の中を確認する。姉さんの計らいで、買い出しをしなくても十分すぎる食材が用意されていた。

 お陰で安心して勉強に集中できる。――姉さん、ありがとう。


 小一時間ほど経った頃、二人がバスタオルだけを巻いた姿で現れた。湯上がりでほんのり赤みのさした肌が、なんとも艶めかしい。漂うシャンプーの香りに頭がぼーっとしてくるようだった。


「蒼真、マッサージお願いしたいんだけどいいかな?」


 羽依が可愛く手を合わせてお願いしてきた。

 ぎゅっと寄せられた胸の谷間に思わず息を呑むが、表情は変えないように心がける。

 反応したら負け。そんな自分でもよくわからない意地をはってみた。


「うん、かまわないよ。じゃあ寝室に行こうか」


 寝室にはクイーンサイズのダブルベッドが俺たちを待ち構えていた。室内は間接照明のみ点いていて、仄かに明るい程度だ。それがまたやけに妖しい雰囲気を醸し出す。


 ベッドの上でバスタオルを巻いたまま横になる真桜。

 羽依はベッドの上で壁にもたれて膝を立てている。バスタオルの隙間、その奥行きは見えないはずなのに……目が吸い寄せられる。


「足マッサージよろしくね~」


 思わず生唾を飲む。俺にとってご褒美みたいなものだった。羽依の白磁の御御足をたっぷりと愛でることができるのだから。


 柔らかく、すべすべな肌をじっくりと揉んでいく。道中、さんざん触れた柔らかい太腿から、よく引き締まったふくらはぎ、足の裏と、たっぷり揉んだ。

 ほのかに香る甘い匂い。そして甘く切ない声を漏らす羽依がたまらなく愛おしい。

 隣ではその様子を、息を潜めて見つめる真桜。


「じゃあ次は真桜だね。どこをマッサージする?」


「私は……ここと……そのあとは……ここ」


 そう言ってバスタオルを外す真桜。手で隠している場所をマッサージしてほしいようだ。

 その仕草に脳が焼け付きそうになる。

 そんな彼女を羽依も一緒になって見つめる。その視線は俺よりも遠慮がなく、ため息混じりに口を開いた。


「真桜の体ってさ、しっかり鍛えてるからギュッと締まってて、それでいて胸はちゃんと大きくて……ずるいぐらいきれいだよね……」


「羽依にそう言ってもらえると嬉しい……でも、あなたの方こそ羨ましいぐらいきれいなんだけど……」


「んふ、私もマッサージ手伝っていい?」


「そんな……二人がかりだなんて……壊れちゃうわよ……」


 真桜はそういうが、完全に嫌がっているわけじゃない。


 羽依と二人がかりで丹念に真桜をマッサージする。途中、何度も切ない声をあげたが、いつも強い彼女のそんな姿が余計に嗜虐心を煽る。俺たちはその手を止めることはなかった。

 ついには泣き出してしまった真桜。二人で慰めるように口に、頬に、そして体中にキスを落とした。


「ううっ……二人とも酷いわ……やめてって言ったのに……」


「真桜ごめんね。でも、可愛すぎるのがいけないんだよ?」


「うん……ごめん。止まらなかった。本当に可愛すぎる」


 そんな言い訳にもならない俺たちの言い分に、真桜がくすりと笑う。

 ふと、羽依が俺の袖を引っ張る。


「蒼真……私たちだけ裸なの?」

「ひどいわよね……ほら、早く脱いで」


「ええ……二人は風呂上がりだけど……俺だけ入ってないし……」


「んふ、それが作戦だもの」

「蒼真のね……匂いが好きなの……早くきて?」


「ずるくね……? でも、俺ももう我慢できない――」


 リゾートマンションに来て早々、こうなるとは……。

 勉強しなければという葛藤は、この二人の魅力を前にあまりに脆かった。そもそも彼女たちは我慢する気がなかったように思える。

 

 大丈夫、まだ夕方だ――。







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