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告られ彼女の守り方 ~偽装から始まる、距離感ゼロの恋物語~  作者: よるひ
6章 夏休み後半

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第234話 濡れ衣

 放課後、教室で羽依と「また明日」と手を振り合う。

 去り際にそっと手を繋ぐ彼女がとても可愛らしく、抱きしめたい気持ちを抑えるのに必死だった。


 生徒会室に向かい、入口の前で立ち止まる。部屋の中から楽しげな笑い声が聞こえてきた。


 ドアをノックして入室する。遥さんは部屋の奥の生徒会長の机に、真桜は補佐役のようにすぐ隣にいた。室内はその二人しかおらず、どことなくドラマのワンシーンのようだった。


「失礼します。遥さん、お迎えに来ました」


「あら、来たわね。今、蒼真くんの話をしていたの」


 遥さんが頬を緩めて俺を見つめる。何やらとても楽しそうな雰囲気だ。


「蒼真、この人を“運動”させるなんてすごいわね……」


 驚きと感心が入り混じったような表情を浮かべる真桜。どうやらトレーニングルームの話のようだが、遥さんの運動嫌いは周知の事実らしい。――よくそんな部屋を作ったものだと少し呆れつつ、ここは一つ発破をかけておくことに。


「いやいや、習慣づかないと意味ないし。これから毎日特訓するんですよね、遥さん」


 俺がそう言うと、ぷいっと横を向く遥さん。そして眉を少し寄せ、姿勢を正して、人差し指をつきつけた。


「私のことを好き勝手できるなんて思わないことね! 蒼真くん!」


 その様子をぽかーんと眺める真桜。そしてすぐに吹き出した。


「ぷっ、あはは、なにそのコント。遥さん、ちょっと貴方雰囲気変わりすぎたんじゃない?」


 むっと口をとがらせる遥さん。でもすぐに眉が下がり、表情が緩んだ。


「そう見えるならそうなのかもね。――真桜は知っているのよね? 私と蒼真くんの関係」


 一瞬、表情に緊張が走る真桜。俺の方をちらっと見つめ、遥さんに向き合う。


「ええ。でも口に出さなくてもいいわ。誰がどこで聞いているかわからないのだから」


「ふふ、やっぱり貴方なら大丈夫って。蒼真くんが言ったとおりかもね」


「はい。真桜は絶対に俺を裏切りません」


 俺の言葉に遥さんは目を大きく見開くが、それも一瞬。すぐに和らいだ表情に戻る。


「その厚い信頼の根拠も知りたいところだけど……まあいいわ。じゃあそろそろ帰りましょうか」


「遥さん、今度私にもトレーニングルーム使わせてね」


 少し口角を上げて挑発的に言う真桜。


「ええ、なんならいつでも泊まりに来てね。空き部屋はまだあるの」


 遥さんの言葉に虚を突かれたようで、一瞬顔が呆けた真桜。


「ふふ、あはは、あははは。遥さん、やっぱり貴方変わったわね。――ええ、是非泊まりに行かせてもらうわね」


 真桜は可笑しそうに目尻に涙をためて俺たちを見送った。


「またね、蒼真」


 帰り際にそっと俺の手を握る真桜。――その小さな温もりに、心臓が跳ねた。


「じゃあお先ね、真桜」



 正門を出たところで、突然男子生徒が立ちはだかる。どうやら遥さんの知り合いのようだ。がっしりした体格に甘いマスク。確かサッカー部のキャプテンの伊達先輩だったか……。


「九条、すまない。話があるんだ。悪いが付き合ってもらえるか?」


「伊達くんごめんなさい。今日はこれから家庭教師が来ることになってるの」


 丁寧な断りの言葉だが、やや冷たさを感じる。伊達先輩はそれでも爽やかな笑顔を絶やさない。


「大丈夫。時間はとらせないさ。――お前もちょっと気を利かせてくれないかな。話があるって言ってるんだからさ……」


 鋭い目つきで俺を射抜く伊達先輩。端的に“消えろ”って話なんだろう。


(はて……俺は先輩と面識がないはずだけど、なんだか嫌われてる?)


 伊達先輩は人柄もよく、隼も認めている人物って話だったと思ったが……。


 遥さんの目がすっと鋭くなる。その眼光に伊達先輩がたじろいだ。


「ああ……すまない。つい感情的になってしまった」


 すぐに遥さんに詫びを入れる伊達先輩。そして俺を指差し睨みつける。


「藤崎、お前と九条が一緒にいるのが気に入らない。最初にはっきり言っておくべきだった」


「は? 俺がなにか先輩に迷惑かけましたか?」


 威圧的な態度に思わず身構えてしまい、うっかり口調が強くなってしまった。


「ちょっと蒼真くん、やめなさい」


 慌てて遥さんが俺を静止する。


「一体どんな手を使って九条をたぶらかしたんだ。お前には雪代さんって彼女もいるし、選挙の時は結城さんの応援してただろう。それで次は九条って、いくらなんでも節操がなさすぎだろう!」


「は? え……あ……」


「ふん、何も言い返せないんだな。――九条! こんな男に近づいちゃだめだ! 俺のことは何度振ってもいい! でもこの男は危険だ!」


 大声で俺を批難する伊達先輩。気がつけば周りに大勢のギャラリーが何事かと興味深げに見つめる。


「また藤崎か……」「羽依ちゃんだけじゃ飽き足らず……」「ちっ! しね!」


 辛辣過ぎるギャラリーのささやきに心が折れそうになる。

 今すぐ誤解を解きたいが、一体何を言えばいいのだろう。うまく頭が回らない。

 

(これは……俺の評判は地に落ちたな……)


 サッカー部のカリスマキャプテンとモブのような俺。皆がどっちの言葉を信じるかは火を見るより明らかだ。


 自分のことを客観的に見ることが出来なかった俺の落ち度なのか。どうにも冷や汗が止まらない……。





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