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告られ彼女の守り方 ~偽装から始まる、距離感ゼロの恋物語~  作者: よるひ
6章 夏休み後半

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第228話 一緒に……。

「はあ、はあ……蒼真くん、もう、無理……」


「……もう少し頑張りましょう」


「いや、意地悪言わないで……」


「もうちょっとだけ、ね、まだまだこれからですよ」


「ああ……だめ、限界よ……だめー!」


 切ない声をあげた後、呼吸を荒げながらぐったりする遥さん。

 ――どうしてこうなった。


「……姉さん、こう言っちゃなんだけど……ちょっと卑猥です」


 俺の言葉に息を切らせながら、きょとんとする遥さん。

 やっぱりこの人には無自覚の色気があるようだ。力を振り絞る響きはまるで喘ぎ声のようで、なんだか妙な気持ちになってくる。危険だ……。


 トレーニングの方法を学んだ俺たち。まずはストレッチをしっかりと行うが、この時点で遥さんは息も絶え絶えだった。

 圧倒的運動不足を感じつつ、まずは一番興味がありそうなパワーラックを使ってみることにした。結果は三回で挫折。負荷が強すぎたのだろうか……。


 呼吸が整った後はバランスボールを試すが、わりと器用に乗りこなしていた。それでもなんだか不満げに口をへの字にしている。


「トレーニングルームは私に向かないようね。蒼真くんが自由に使ってね」


 ――何言ってんだこの人。

 見切りの早さに驚愕する。事実上の引退宣言だ。


「え、もう遥さんはこの部屋使わないんですか?」


「だって向かないんですもの」


 何を分かりきったことを聞くんだろう――そう言いたげに遥さんは呆れ顔を向けてきた。……いやいや、待ってくれ。


「この部屋作るのにいくらかかってるんですか!? パワーラック三回で諦めるとか、そんなの駄目でしょ!」


 不満げに眉を寄せる遥さん。


「あらあら、人をそんな困った人みたいに言わないでくれる? やりもしないで止めたわけじゃないのよ?」


 どうやら彼女の中では結論が出たようだ。

 しかし、どうみても運動不足の遥さん。少しは頑張ってほしい。せっかくのトレーニングルームが非常に勿体ない。

 何か良い知恵はないものか……。

 

 ふと、妙案が浮かぶ。――一度試してみるか。


「……そうですよね。ちょっと言い過ぎました。ごめんなさい。確かに向き不向きはありますね」


「でしょ? 良いのよ蒼真くん。分かってくれれば」


 コロッと機嫌が直る我儘お嬢様。さて、ここからだな……。


「そうですね……確かに、ちょっとだけ安心もしました」


「安心……? あら、なんでそう思ったの?」


 訝しむように遥さんは聞いてきた。


「遥さんの息遣いがあまりにエッチすぎて、あのまま一緒にトレーニングしていたら俺が耐えられなかったかもしれません」


「え、エッチってなにっ!? 私、そんなつもりじゃ……」


 顔を一瞬で真っ赤にする遥さん。想像通りの反応だ。


「そうですよね、遥さんは素の状態で魅力的過ぎるんですよ。まあ本音を言えば、もう少し姉さんの魅力を見ていたかったな……」


「え、あ、そう……なの?」


「お姉ちゃんと一緒にトレーニングしたいなー」


 甘えるように上目遣いで遥さんを射抜く。――どうだ、落ちたか?


「ん~、じゃあ、もう少しだけ……頑張ろうかな」


 どうやら俺には悪い男の才能もあるらしい。そんな自慢にもならない達成感がやたらと俺の気持ちを高揚させる。


「そうこなくちゃ! お姉ちゃん大好き!」


 つい口が滑った。悪ノリが過ぎた。

 途端に遥さんが冷淡な顔に……。


「私を単純で御しやすいと思ったでしょ。下手な策士の真似はやめなさい!」


 腰に手を当て半目でじーっと見つめられ、ピシャっと言い放つ。

 ――うぅ、怖い……。


「あ、あれー!? いやそんなことないっすよっ!」


 しどろもどろした俺を見て遥さんは軽くため息をついた。そして俺の手を取り満足そうに微笑んだ。


「まったく……そんな顔されたら何も言えないわ。じゃあしばらく一緒にトレーニングするから、ちゃんとサポートしてね!」


「はい、もちろん!」


 やはり俺には悪い男の才能は皆無のようだった。



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