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第138話 志保さんとデート 羽依視点前編

「羽依ちゃん、おまたせ~!」


 土曜の午後2時、渋谷の駅前。

 少し早めに着いていたけど、志保さんはきっちり時間通りに現れた。


 ベビーブルーのボウタイ付きブラウスにチャコールグレーのハイウエストワイドパンツ姿。小物も凄くセンスを感じる。学校で見る志保さんも素敵だけど、私服はモデルらしい洗練された着こなしだ。


「ごめんね~。もうちょっと早く来ようと思ったけど、服がなかなか決まらなくて」


 申し訳無さそうにしている志保さんがとっても可愛らしい。


「私も今来たところですよ~。じゃあ行きましょう!」



 ――正直、第一印象は蒼真に近づく悪い虫ってぐらいの印象だった志保さん。


 一ヶ月ぐらい前、FALLOVAの広告で蒼真と一緒に写ってる彼女を見た時の事を思い出す。あまりにお似合いすぎる二人に激しく動揺、嫉妬したんだ……。

 でも、それと同時に彼女の綺麗さに引き込まれた自分がいた。


 透明感のある素肌に可憐な顔立ち、スラッとした肢体。

モデルとしての華やかさだけじゃない、蒼真を見つめるあの瞳に――私は自分の想いを重ねていた。

 ああ、こんな人になりたいな、って初めて思ったんだ。

 嫉妬から憧れに変わるのは早かった。


 元々オシャレは好きだったから、志保さんの出てる広告や雑誌をネットで買い漁った。彼女に少しでも近づけたらなって思ったんだ。

 

 そんな彼女が、まさか私のことを気にかけてくれてるなんて。

 それも私のことを自分よりも可愛いって言ってくれる。


 うん、間違いない。この人はとても良い人だ!


 すっかり意気投合してからは頻繁にLINEでお話したりした。


 それで今日は、志保さんに冬物のお古を譲ってもらうついでに、デパートを見に行こうって話になった。

 

 今日は冬物セール前の下見。大きなフロアにはキラキラした新作が並んでいて、どれも可愛いけど……値札を見るたびに足がすくむ。


「冬物はやっぱり高いね~。コートも欲しいけど、目に付く物はやっぱりそれなりの値段よね」


 ため息混じりに志保さんがつぶやいた。


「新作買おうと思うときついですよね~。でも志保さんだったら、モデルの給料で買えたりするんじゃないですか?」


「ん~、そんなにモデルの給料って、みんなが思うほど高くないんだよね……映画も出たけど、まだその分のお給料もらってないし……」


 落ち込んだ子猫みたいにしょぼんとする志保さん。なんだろう、放っておけないってこういう人のことを言うのかもしれない。


「なんだかリアルな話ですね……でも、綺麗に撮ってもらえるのって良いですよね。志保さんの広告、どれもみんな綺麗だから」


 私の言葉に志保さんは照れたように微笑む。いちいち可愛らしいなあこの人は。


「羽依ちゃんにそう言われるの、すっごく嬉しいの。やっぱとびっきり可愛い子に褒められるのって特別感あるんだよね」


 褒めたと思ったら褒め返された。やるなあ……。


「広告の写真は補正も入ってるからね。生データ持ってるからカフェで一緒に見ようか。 FALLOVAのショップの近くに良いお店あるんだ~」


「いきます! 志保さんのオススメなら間違いなさそう!」


 着いたお店はオシャレな隠れ家的なカフェ。看板とかとても控えめで、知る人ぞ知るって感じのお店。こういうところ知ってるのって大人な感じで格好いいな。


 店内には落ち着いたジャズが流れていて、白いクロスのテーブルには細長いグラスと銀のカトラリー。

 ――うわ、場違いすぎる。


 そんな私の不安なんて、志保さんはまるで感じていない様子で、涼しい顔でメニューをめくっている。

 さすが、生徒会長兼モデル……どこに行っても絵になるってこういう人のことを言うんだ。


 と、そこへ――。


「Shiho, long time no see. You're looking lovely as ever.」


 低くて柔らかい声。ふと見ると、隣の席にいた外国人の紳士が志保さんに声をかけていた。

 品のあるグレーヘアのおじさまで、シガーでも似合いそうな渋さだった。


「Thank you. You’re looking well too, Mr. Martin. I’m glad to see you again.」


 志保さんはネイティブな英語で返事した。

 さすがは燕さんも認める才女。もしかしたら帰国子女なのかな。


「Oh, and this is my friend, Ui Yukishiro.」

「Hi there, Miss Yukishiro. Have a great time, ladies.」


「Thank you. Have a nice day.」


 笑顔で去っていったオジサマ。

 こういうシチュエーションでさらっと言葉を交わせる志保さんはとても恰好良かった。


 (蒼真ってば……志保さんのどこがポンコツなのよ~……)


 「ちょっと気取ったお店だけど、味はばっちりだよ~。お値段もそこそこしちゃうけど、ここはお姉さんにまかせてね!」


 そう言ってウィンクしてくる志保姉さん。頼もしすぎるなあ。


 オーダーも志保さんにオススメをお願いした。

 ほどなくして、注文の品が届いた。


「巨峰のレアチーズ・ヴェリーヌでございます」


 グラス仕立てで層になっていて、下からビスキュイ、レアチーズ、ゼリー、コンポート巨峰にミントが入ってる。

 見た目のオシャレと豪華さがとても映える一品だ。


 とても可愛い志保さんをバックにパシャリ。志保さんも私とスイーツを写真に収めた。これは絶対、真桜と蒼真に見せたいやつだ。


 スイーツを堪能しながら志保さんのスマホで写真を眺める。


 没になった蒼真との秘蔵ショットも見せてもらった。


「蒼真くんすっごい恰好良かったんだ~。羽依ちゃんに怒られちゃうけど、私一目惚れしちゃったの!」


 蒼真の彼女を眼の前にして目をハートマークにさせる志保さん。


 ――やっぱり思った通りの危険な人だ……。


 

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