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第131話 女子は現実を見る

 10月も半ばを過ぎた、月曜の朝。

 今日は中間テストの結果発表がある。

 今回の目標は20位以内だからな。

 やるべきことはやった。後は結果を待つのみだ。


「おはよう蒼真……」


 いつも朝から元気な羽依が、何やらどんよりとした雰囲気だ。一体どうしたんだ……。


「おはよう。あれ、何か元気ない? 体調悪いの?」


 ジトッとした目で俺を睨む羽依。


「……ベッドヤクザ」


 ぼそっとそんな事を呟く羽依。

 何て酷い言われようなんだろうか……。


「えっと、……まだ痛いの?」


「……じんじんする。蒼真があんなにリビドー全開になるなんてね。優しくしてねって言ったのに……もう信用できない……」


 確かに昨日家まで送ったときも、なんだか辛そうだったな……。

 シクシクと泣き真似をする羽依。

 でも、昨日のことを後悔してるのなら少し残念だな……。


「ごめんね羽依。ちょっと励みすぎたね……」


 キッと睨んでツカツカと俺に詰め寄る。


「ちょっと? 晩御飯も食べずに延々と頑張って、ちょっと?」


「あ……はい。すみませんでした……」


 まあ、今まで散々我慢してきたんだ。抑えが効かないのも理解してほしいな……いや、無理か。


「羽依……機嫌直して? 今日、家帰ったら一緒にプリン食べようよ。昨日出しそびれたから」


「プリンかあ。ならゆるす!」


 え? プリンすごくない?

 羽依は途端に嬉しそうに笑みをこぼし、手を繋いできた。

 きっとさっきまでのは照れ隠しだったのかな。そう思っておこう。


 教室に入ると、真桜が小走りによってきた。

  そして突然、俺の懐に入りショートレンジでボディに一撃――!


「ぐほああっ!」


「おはよう蒼真。――昨夜はお楽しみだったみたいね」


「な、なんで……それを……っていうか、何で殴られ……た……」


「とりあえず顔見たら、まず殴っとこうって思ってたの。スッキリしたわ」


「おはよう真桜! ――仕方ないよ、蒼真。私に酷いことしたからだよ~」


 べーっと舌を出して俺を笑う羽依。女心はわかんないなあ……。っていうか、情報筒抜けかよ……。

 まあいつものことか。


 3人で多目的広場のフリースペースへ移動する。

 昨日の弁護士とのやりとりは、すでに羽依から真桜に電話で伝えてもらった。

 その流れで、その後の事も話したんだろうな。


「実に、何とも言えないわね……。待遇が良すぎて逆に怪しいぐらいよ」


「だよねえ……私としては早くうちに来て欲しかったけど、これから大学行くにしてもお金は絶対あったほうが良いもんね……」


「まあ、ね……」


 俺としてはお金なんかよりも反社って不安要素が怖かった。

 でも、彼女たちには眼の前の現金のインパクトが大きすぎたようだった。

 そりゃもちろん俺も驚いた。月収50万って……一体何をすればそんなに高収入を得られるんだろうか。


「ただ、それだけの大変さがあるのかもしれないわね。大きな家は掃除だけでも大変よ……」


 実感のこもってる真桜の意見。あの道場の掃除は大変そうだものな。


「九条先輩って、ものすごいお嬢様だったんだね~。でもさ、蒼真たちと地元は一緒なんだよね。それで今は都内の一軒家に住んでるんだ?」


「九条の本家は千葉にあるの。だからこっちにあるのは別宅なんでしょうね。九条遥一人で住んでるってのは確かに物騒な気もするけど。――あの女は人嫌いなところがあるから使用人をつけないのかも」


「でも、蒼真はお眼鏡にかなったんだ。まあ蒼真なら名門のお嬢様に手を出すなんてことできなそうだしね~」


 後に続く言葉はヘタレだから~だろうな。まあ合ってるけど。


「なんか思ったよりも二人とも肯定的? もっと反対しまくるかと思ったけど」


 羽依と真桜は見つめ合う。そして二人ともため息を一つ。そのシンクロっぷりにちょっと動揺してしまう。


「まあ、そりゃ面白くないよ……でも、条件の破格さがね……」


「ええ……それに、弁護士の方の言う通り、大企業とパイプができるのはかなりのメリットでしょうしね。九条の家は昔からの豪商で、新空港関連で巨万の富を得たの。今では商社、船舶、メディアとか、表と裏に影響力は計り知れないらしいわね」


「んむむ……。」


 女子たちは現実的だなあ……。

 俺も条件の良さは痛いほどわかる。わかるんだけど……。


 キッチン雪代の住み込みバイトを目標に今まで頑張ってきたからな……。

 まあ、まだ時間はある。結論を出すのは早いよな。



 昼休み。中間テストの結果が張り出された。


 1位 結城真桜

 1位 雪代羽依


 4位 高峰隼


 10位 藤崎蒼真


「やった……10位だ……やったー!」


 20位以内が目標だったけど、まさかの大躍進。俺、頑張ったなあ……。

 それにしても、やはりすごいのは羽依と真桜。まさか二人とも満点で首位とは。


「んふ、遂に1位だ! 真桜に追いついた!」


 俺と羽依は手を取り喜んだ。ちょっと周囲の視線が痛いけど、今はその痛みすら心地よく感じてしまう。


 その隣では、真桜と隼が軽くハイタッチで、健闘を称え合っていた。


「隼、おめでとう。順位あがったじゃない」


「ああ! でもなあ……羽依ちゃんと真桜が遠い……遠すぎるなあ……」


 きっと勉強会の成果がでたんだろうな。場所を提供した甲斐があったってもんだ。みんなよかったな、俺のおかげだぞ。


 ああ、愛しい彼女のマイクロビキニ。ご褒美楽しみだな~。





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