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第11話 自撮り

 晩ごはんは手軽に作れるものが良いので丼物にする。


 下ごしらえの間に羽依がお米を研ぎ、炊飯器にセットする。昨日に引き続き手際の良さを見せる。


 朝食の用意も、頼まなくても準備してくれたり。

 とにかく気が利く。

 これで包丁を扱えたら、料理もすぐに覚えそうだ。


 メインディッシュは焼き鳥丼の温玉のせ。これもまた親子丼と言えそうだ。


 鶏もも肉を一口大に切り分け、長ネギと甘辛ダレで焼く。腹ペコ高校生は肉の焼ける匂いに敏感だ。羽依がよだれを垂らしそうな顔をして覗いてくる。


 副菜は小松菜と油揚げをさっと白だしで煮たものをさっと作る。


「こういうの、さっと作れるのすごいね、蒼真。料理が趣味って言ってたけどホントなんだね~」


 羽依が感心して褒めてくれる。料理出来る系男子でよかった~。


 ――親に感謝しておくべきかは悩むところだけど……。


 豆腐となめこの味噌汁を作り終えたところでご飯が炊ける。


 すべての行程が計算通りに終えた。さあご飯をたべよう!


「美味しそう~! いただきまーす!」


 羽依の反応をじっと見る。一口入れた瞬間に蕩け顔になった。ヨシッ!


「美味しいね~! これすごい好きな味! 」


 可愛い子が美味しそうに食べる姿を見ながら食べる晩ごはん。なんて贅沢なんだろう。


 デザートはヨーグルトフルーツ。単純にフルーツ缶を入れただけのシンプルなデザートだけど、羽依はこれまた喜んでくれた。


「私、蒼真のうちの子になるね」


 冗談ぽく、でも目がちょっと真剣な感じでそんなこと言ってくる羽依。


「お母さんの料理だって、美味しいんじゃないの?」


 人気レストランのご飯だったらきっと美味しいもの出してくれるんじゃないかな?

 俺の言葉に羽依は少し俯いて照れたような、諦めたような遠い目をしている。


「美味しいんだけどね。お母さんカロリーとか気にしないで、肉ばかり出すの。体重維持するのすごく大変なんだから……」


 女子にとってデリケートな問題なんだろうな。でも、もうちょっと太っても問題無さそうなぐらいには痩せてるように見えるけど。


「羽依はスタイルもすごく良いよね。何か運動とかしてるの?」


「もちろん! うちのお母さんの影響もあるけどね、運動とか肌のメンテとかは欠かさないよ。私のこと可愛いって思ってくれるなら、影の努力の成果でもあるの」


 女子なら『えー何もしてないよー』とか普通言いそうだけど、羽依は違う。努力してることを隠さずに誇らしく語ってる。そういうところはとても好感がもてる。


「羽依はすごいね、勉強も自分磨きも一生懸命で」


 俺の端的な言葉に、羽依はちょっと照れたように視線をそらした。


 ただ、その努力の結果、変な男どもが言い寄ってくるのは何とも不幸な話だった。


 何とも言えない表情をしていたんだろう。俺の表情を見て、羽依が何か察したらしい。


「綺麗に見せたいって思うのは、知らない男のためじゃないのにね。 ……でも、蒼真が可愛いって思ってくれるなら、頑張ってきてよかったなって思えるかも」


 勉強も、自分磨きも、全力で頑張るんだな。本当、素直に尊敬できると思った。



 お腹いっぱいになったところで羽依が今日買った服を広げ始めた。


「ちょっと蒼真、ジャケット着てみて。私カーディガン着てみるから」


 二人で今日買ったアウターを着てみる。リンクコーデの2ショットをパシャパシャ撮ってる。


「うん、可愛いね! 蒼真もよく似合ってるし、これで出かけるの楽しみ~!」


 写真をみてみると、どうみても仲良しカップルにしか見えない。偽装は完璧だ。


「次はこっちも着てみよう。恥ずかしいからお風呂場で着てみるね」


 ラベンダーカラーのシースルーブラウスをもって風呂場へ行く羽依。


「うわっ! すごいエッチ! 」


 そう言いながらパシャパシャと自撮りの音が聞こえてくる。


 その後、ラインで自撮りが送られてきた。


 2ショットの写真と併せてシースルーを着た羽依が写ってるものを送ってきた。


 素肌の上から着たシースルー。大事なところは隠した状態だけど、たわわな双丘がぐにゃっと腕で押さえられてた。なんとも艶めかしい写真だ。


 やばいって……。心臓が破裂しそうなほどドキドキしてる。


 風呂場から出た羽依は、さっきまで着ていた格好に戻っていた。


 悪戯な顔をして覗き込んだ羽依は、顔を赤らめながら、すっと腕を絡めてきた


「その写真は一人で見てね。他にも撮ったのあるよ。みたい?」


 そう言ってスマホを見せてくる。何枚も撮っていたようで、パパパっと画面を切り替えて「おしまーい」と舌を出す。


 これは……試練だ。試されているのか、俺は……。


 頭が沸騰して心臓がうるさいぐらいに高鳴っている。今夜、何事もなく乗り越えることができるんだろうか――。

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