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第108話 全員集合

 文化祭二日目は一般開放だ。

 父兄や他校の生徒なんかも大勢来ている。

 俺と隼は猫耳尻尾ウェイターとして奮闘していた。


「オプションで俺様ウェイターお願いします」


 隼にそんなオーダーをしてきた他校の女生徒たち。目にはハートマークを浮かべてるように見えた。


「ちっ、いいかお前ら、このコーヒーは俺様が淹れてやったコーヒーだ。ありがたく飲んでおけよ。残したらお仕置きするからな」


 女生徒を見下ろし、指を差す。

 ノリノリでオーダーに応える隼に女生徒たちはキャーキャー騒いでいた。

 ……それ、演技っていうより素だよな。


 智ちゃんは綺麗なお姉さんたちに捕まっている。


「君かわいいねー! 生意気反抗期ウェイターのオプションよろしくね!」


「もう、お姉ちゃんいい加減にしてよ! このコーヒー飲んだらさっさと帰ってね! 焼き菓子も頼んでくれないとお姉ちゃんなんて嫌いになっちゃうんだからね!」


「頼む頼む! どんどん持ってきちゃって!」


 ……たちの悪いショタホストだ。


 というか、オプションなんてあったっけ?

 俺が首を傾げていると、相楽さんが俺に近寄りこっそり教えてくれた。


「SNSでちょっとだけ広めたの。知る人ぞ知るオプションだよ~。藤崎くんにもぴったりのオプション用意してあるよ」


「え、なにそれ。事前説明なしって酷くね?」


 ってことは――みんな、あれアドリブでこなしてるのか。

 適応力やばすぎるな……。


「ちなみに俺にぴったりのオプションってなに?」


「ヘタレ受けだよ~」


 無邪気な笑顔で、なかなかに酷いこと言ってきた。


 しょんぼりと落ち込んでいたところに美咲さんたちが丁度やってきた。先に他を回ってきたのか、結構遅くの来店だ。

 あと1時間ほどで文化祭終了時間だった。


「蒼真、頑張ってるね! その猫耳似合ってるじゃない」


 美咲さんがニヤニヤしながら猫耳をさわってくる。


「ウェイターにはお触り厳禁ですよ、いらっしゃい美咲さん、りっちゃん」


「こんにちは~! 結構並んだね、大盛況だ。って!きゃーー智ちゃん! 猫耳かわいいー!」


 智ちゃんを見つけておおはしゃぎのりっちゃん。そういや智ちゃんのこと好きだったって言ってたもんな。


「里紗姉、いらっしゃい。お隣の綺麗な方は雪代さんのお姉さんでしたっけ。いつも里紗姉がお世話になってます」


 ペコリと頭を下げる智ちゃんに美咲さんはニコニコと笑顔を返す。


「やだねえ、羽依の母親だってば。お姉さんに見えちゃったか~。いやぁ、そっかそっか、だよねえ! ――蒼真は私のこと30後半って言ってたけどね……」


 かなり前の話を引っ張り出してじろっと俺を睨む美咲さん。結構根に持つのね……。


 ちらっとこっちをみて舌をぺろっとだす智ちゃん。女性の扱いをとても良く理解してるんだな。あなどれん……。


「ただいまー! あ、お母さんにりっちゃん! いらっしゃい~」


 羽依と真桜が帰ってきた。二人ともいっぱい楽しんだようでとても良い笑顔だ。

 真桜の手には模擬店で買ってきたであろう食料がいっぱい入った袋を抱えている。

 ……ついさっき、俺ともしっかり食べてたよな?


 早速、奥の支度部屋で猫耳尻尾コスを装着する二人。


「蒼真、似合ってるかしら」


 恥ずかしがりながらも、くるっと回って衣装の確認を促す真桜。その可愛い見た目と仕草に、俺の心拍数は一気に急上昇する。

 さらに羽依もやってきた。やはり俺の彼女の猫耳尻尾姿は無敵に可愛い。

 1-Aが誇るアイドル二人、他にも可愛い子がかなり多いこのクラス。男子もイケメンやらショタやら勢揃いだ。

 今や完全体となったこのクラスに無双感を感じてしまう。


「このクラスの売上は今のところ、学校内でトップだそうよ。このまま頑張りましょうね」


 真桜の言葉は、みんなの心に火をつけたようだった。

 二日目の後半になってかなり疲労が出てきているはずだけど、モチベは最高潮となったようだ。


「なんだか元気なクラスだねえ。――やっぱ高校って良いね」


 しみじみと語る美咲さんにちょっと胸が熱くなる思いがした。


 そんな中、サングラスをかけた若い男のグループが――ふらりと現れた。

 やけに浮いて見えるその姿。胸の奥に、じわりと警戒心が芽生える。


「いらっしゃいませ、ご注文をどうぞ」


 俺の顔をみて、舌打ちをする男。


「おめーなんかに用はねえんだよ! 羽依ちゃん呼んでこいよ!」


「――当店は指名制ではありません。ご注文をどうぞ」


「んだとぉ……」


 一触即発の雰囲気に周囲がシンと静まり返る。何事かと羽依が奥から出てきたのをサングラスの男に見つかってしまった。


「羽依ちゃんいるじゃねえか! おめーは下がってろ! 羽依ちゃん! 会いたかったよ! ほら、俺の顔忘れちゃった?」


 サングラスを取ったその顔は……誰だ?

 でも、羽依の怯えた顔を見る限り、見覚えがあるようだ。


 俺の制止を振り切り、羽依の方に詰め寄ろうとする男。

 俺が慌てて近寄ろうとするも、男の仲間に腕を取られ引き寄せられる。


「おめーはこっちだ。俺の顔忘れたとは言わせねえぞコラ」


 サングラスを取って顔を見せてくる。

 ――こいつ!

 以前羽依に絡んで、俺の腹に膝を入れたこの学校の元生徒だ。

 一体警備はなにしてるんだ……ザルじゃないか……。


 男は四人組で、その内二人は成人のように見える。一体どういう組み合わせなんだ。それよりも、羽依が……。



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