13 エピローグ
プロポーズから半年ほどが経ち、街の外れにある小さな教会で結婚式を挙げる。
教会はレンガ造りの素朴な外観で、装飾はあまりない。静かで落ち着いた雰囲気だ。
参列者はレベッカとお義母様と貿易会社の社員さん。
「ルシル綺麗よ」
ウエディングドレスに身を包む私に、レベッカが涙声で笑う。
光沢のある上品なAラインのドレスは、ウィルさんが選んでくれた。あれもこれもと5つくらい選び、全部本番で着させられそうになったけれど、1着に絞ってもらった。何着も着たら、着替えだけで疲れてしまいそう。
「レベッカの作ってくれたブーケも素敵よ」
白とピンクで可愛らしいブーケにうっとりとしてしまう。
「よかったわ。あと、ウィルさんとルシルの知り合いかしら? お金を渡されて『これで花を贈りたい』って言われたんだけど」
台車でたくさんの花が運ばれてくる。教会の前に綺麗に配置された。
「こんなに?」
「ええ、花のことに詳しくないみたいで、お金をたくさん置いていったわ。メッセージカードも預かっているの」
レベッカに渡されたメッセージカードには『幸せを願っている』と右肩上がりの文字で綴られていた。
「名前がないからわからないわ。ウィルさんの知り合いかしら?」
私を祝ってくれるのはレベッカしかいないから。
ちょうど教会の中からウィルさんが出てきた。私と視線が交わると、顔を綻ばせる。
「ルシル、すごく綺麗だよ」
「ウィルさんもすごく似合っていてかっこいいわ」
うっとりと見惚れてしまうほど。しばらく見つめ合い、手に持っているメッセージカードを思い出した。
「ウィルさん、お花を頂いたの。心当たりはあるかしら?」
メッセージカードを見せて、教会の前にずらりと並べられた花を指す。
「どんな人でしたか?」
ウィルさんに訊ねられ、レベッカは頬に手を当てて、思い出そうと斜め上に目を向ける。
「そうね、年齢は60はいっていないと思います。背が高くてガッチリしていました。目つきは鋭くて強面なんだけど、口調の穏やかな紳士でした。髪の色は灰色でしたよ」
ウィルさんは微かに口の端を広げる。
「多分僕の義父ですね」
「あら、それならここにいらっしゃるの?」
「忙しい人なので。ここには来ませんよ」
ボスが私たちに花を贈ってくれたの?
私の家のポストに投函されていた白い封筒を思い出した。そこに書かれていたのも、右肩上がりの文字だったような気がする。ボスが書いていたのか。
他に知っているのが教育係だった二人だけだから、そのうちの誰かだとは思っていたけれど。
時間になり、みんなに見守られながら、教会の祭壇の前で私とウィルさんは永遠の愛を誓う。
「ウィルさん、あなたはルシルさんを生涯の伴侶とし、互いに尊敬し、愛し合い、助け合い、共に幸せな家庭を築くことを誓いますか?」
「誓います」
牧師の言葉に、ウィルさんは力強く答えた。
「ルシルさん、あなたはウィルさんを生涯の伴侶とし、互いに尊敬し、愛し合い、助け合い、共に幸せな家庭を築くことを誓いますか?」
「誓います」
私は穏やかな気持ちで答えた。
「参列された皆様を証人とし、お二人が夫婦となったことを宣言いたします」
ベールが上げられて、誓いのキスをした。
結婚証明書に署名する。私とウィルさんの名前が並んでいて頬が緩んだ。
ウィルさんの腕に腕を絡める。みんなに祝福の言葉や拍手をもらいながら教会を出た。
「一緒に幸せになろうね」
「ええ、ウィルさんに出会えて本当に良かった」
「僕もだよ」
ウィルさんに飛びつくと、身体が浮いた。ウィルさんに抱っこされ、唇を重ねた。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。




