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仲間は死んだ。呼吸が荒い。視野がぼやけている。
空は焼けた灰のようにどこまでも鈍色に広がっていた。
地面に横たわったまま、鈍い痛みを全身に感じながら瞼をこじ開ける。
手の甲に刻まれた烙印が鈍く脈打ち、何かを呑み込むように力を吸い取っていくのを感じた。
口の中に広がる鉄の味を吐き捨て、ふらつく身体を起こす。
「いってぇな……」
吐き出すように呟いた声が自分のものとは思えなかった。喉が焼けつくように痛み、呼吸をするたびに胸の奥が軋む。
視界の隅に、動かなくなった仲間たちの姿が見える。血の匂いが鼻を突き、焼け焦げた大地から立ち昇る煙が目に沁みる。手を伸ばそうとするが、指先は力なく空を切る。
「……結局、俺だけか……」
声は途切れがちだったが、それでも言葉が空気を切り裂く。五人で最後まで生き延びるはずだった。仲間たちと誓った約束。それが今、無残に砕け散っている。
胸の烙印が再び脈打つ――鈍く、痛みを伴って。まるで自分自身を呪い、地の底へ引きずり込もうとしているかのようだった。力を封じられた虚無感が内側からじわじわと広がり、残ったものは苛立ちと焦燥だけ。
「ちくしょう……」
地面に手をつき、歯を食いしばりながらゆっくりと立ち上がる。足元がふらつき、膝が今にも折れそうになるが、それでも前に進むしかない。
「……お気に入りのコートだったんだけどな……」
もう動かない仲間がくれたコートは焦げ臭く、風通りの良さそうな穴がいくつも空いている。
空の鈍色はどこまでも広がり、逃げ場などどこにもない。この世界は俺にとっての監獄となった。そんな事もうどうでもいい。仲間も意思も野望も失せた。
「街まで歩くか……」
治癒魔法は使えない。使えるやつももういない。
病院を目指し重い足取りで歩き出すーー