二人だけの世界で
「ん……ああ……う…。」
喉乾いた。
今何時?
よくわからないが、まだ夜は明けていないみたいだ。
しかし…
「……スー…」
僕の上で寝ている彼女は気持ち良さそうに寝ている。
自身にのしかかる彼女の重さは温かく、そして柔らかい。
信じられるか?こんな風に裸で抱き合いながら寝てたにも関わらず、僕たちの間にはなんも間違いが起きなかった事を。
こんな事もあるもんだな。
流石に童貞を拗らせたおっさんでは、間違いを犯す勇気がなかったかーと。
何処か他人事みたいに考えてた。
しかし、いいおっぱいだ。
身体に押し付けるそれをこの手で揉みたい。
少しならバレないか?いや流石にそれはダメだ、彼女への尊重を欠くことになる。
それはダメだ。
僕はこの短時間で彼女への好感度がマックスに近い所まで登った。
故に、彼女にこんな失礼な事をしたくない。
しかし、おっぱいが揉みたい。
「んー…?あ…おはようお兄さん…」
「…おはよう。」
眠気から覚めきれず、何処かうとうとしている彼女だがどうやらなにかを察したらしい。
「なにお兄さん?どうした?」
からかうような笑みだ、しかし不快はないむしろ親近感すら覚えた。
故に、僕は素直に口を開く。
「おっぱいが揉みたい。」
「ぷは!お兄さんホントにスケベだね~…いいよー、少しなら♪」
「マジか、ありがとうございます…!」
では遠慮なく。
「んあ♪もっと優しくしてー~」
「了解です。」
ああ、これは夢中になる。
柔らかいし大きい。
揉むたびに形が変わってて楽しいー、幸せ…
「んん…っ、ちょっと…!つまんでいいなんて言ってないんん…つ!はいダメ!アウトでーす~」
そう言って彼女は起き上がる。
ああ、さらばだ幸せの重さよ。
「もうー、お兄さんたら、ホントに遠慮しないんだから。」
そう言って、彼女は笑顔のままだった。
怒った訳ではないらしい?
とりあえず僕も地面から身体を起こして、胡座の姿勢になったけど。
え、座ってくるの?僕の足に?息子が元気に挨拶しているのに?
流石に大胆過ぎないか君?なんか身体をこちらに預けるように寄りかかってきたんだけど。
おお、背中を向けてくるので、肩越しでおっぱいが見える見える。
「お兄さんおっぱい好きすぎー。」
「はい大好きです。」
「すなおー。」
そのまま少し時間が流れた後、彼女は語り出す。
「終わった世界はね、本当に楽しいとおもったんだー。」
それは酔ってる時も言ってたね。
「このまま自由に生きて、そして死んでいけばいいって思ってた。」
それは僕も思った。
死ぬまでにこの自由な世界を謳歌しようと。
例え僕には終末世界は厳しくて、数日後には死ぬとしても、僕はきっと――
「それで私はきっと――満足で死ねるって。」
そう、だから遠慮を捨てて僕は裸になって走った。
余生と思い、ただ馬鹿みたいに残りの時間を楽しもうと。
そこには、ストレスとか我慢とか要らない。
なんせ誰もいない世界だから。
「でもね、少しだけ、寂しくなった。」
彼女は振り返り、僕を真っ直ぐ見る。
「――ね、お兄さん私と一緒に旅しない?」
真面目な顔だ、でもすぐにいつもの笑顔になった。
「私達気が合うと思うんだー。」
それは、僕もそう思った。
「一緒に来てくれたらおっぱい揉ませてあげてもいいよ♪」
いたずらのように、挑発のように、笑みを浮かべて両手で自分の胸を強調する彼女を見て僕は迷う事なく答えた。
「おっぱいが揉めなくても君と一緒に旅がしたい。」
「急に真面目…」
「でもおっぱいは揉みたい!」
「うわ…やっぱりスケベだ…」
「君も十分スケベな気がするけどな。」
「まあ♪気持ちいい事は嫌いじゃないし~」
やっぱりスケベだ…!
有難や有難や…
「というわけでおっぱいを揉んでもいいですか?」
「はは♪もう好きなだけ揉んどけー♪」
「ありがとうございす!」
「んあ♪」
こうして僕達のこれからが決まった。
□■□■□■
「さて、これから何処に行く?」
「え?予定はないよ~ただ気の向くままに進むだけ。」
「そうか、それはいいね。」
「いいでしょうー♪」
色々と準備を整った僕達はあてもなく終末の世界を行く。
不安はある、でもそれ以上にドキドキと楽しみがある。
明日に期待を持つのはいつぶりだろう、思い出せないや。
でも、今は…
「ん?どうしたの見惚れちゃった?」
「うん、セクシーだなと思って。」
「ふふ♪ありがとう。」
今の彼女は勿論全裸ではなく。
でも肌色はなかなか。
肩出しにへそ出しな上衣に、足を、太ももを晒け出すショートパンツ。
上着も着ているけど、何だか透明感があるデザインで、羽衣みたいで逆にそそる。
何だかオシャレ感が溢れてて、そういうのに疎い僕でもなんかいいなと思った。
僕に至っては、動きやすいジャージを着ているだけという。
ちなみに登山バッグを背負っている。
中に色々と入ってるので重い、僕自身体力がある方ではないけど…
ご褒美におっぱいを揉ませてくれると言われたらおっさんだろうと何だろうと頑張るのが男だ。
「所で、結局他に人はいないでOK?」
「そう、人はいないよ。」
うん?なんかはを強調してたような?
「あ?やはり知らなかった?」
「え?」
「この終末世界は――」
その時に、まるで計ったようなタイミングでそれは現れた。
空の上、その生き物は赤い鱗で覆った巨体を巨大な翼で飛ばしている。
それはファンタジーの代表、鋭い牙と爪を有し、恐らく炎も吐く。
空の上で力強く翼をはたいて、僕達の頭上を過ぎ去るそれは、大きな風圧を引き起こし彼女の長い髪を靡かせた。
…ドラゴンじゃん。
典型なまでのドラゴンじゃん。
「――ご覧の通り、色んな不思議な生き物がちらほら居るよ。」
「色んなか…」
「色んの♪」
「……楽しい旅になりそうだね。」
「でしょうー、ふふ。」
そう言って彼女は僕の手引っ張るというより繋いだ、繋いだまま前を歩く彼女を、彼女の笑顔を見て。
僕は明日が楽しみだと、心から思えた、思えたんだ。
気が向いた時だけ、ショートストーリーを、彼と彼女の日常の一幕を投稿します。