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8ページ目【二十歳前のカウントダウン】

     8ページ目【二十歳前のカウントダウン】


 家でぼーっとしてたら、耳元で、「あと一ヶ月」っておっさんの声が聞こえた。


 最初はテレビつけてたから雑音でも聞いたのかなって思ってた。


 


 でも次の日「あと二十九日」ってまたおっさんの声が耳元で聞こえてきた。


 次の日も次の日も刻んで来る後何日の声。日中でも夜中でも関係なく耳元で声だけが聞こえてくる。


 丁度聞こえたとき、家族が居合わせることがあったんだけど、自分以外聞こえてないみたい。


 一日、一日とカウントダウンが始まって、とうとう七日前になったら気がおかしくなりそうで、おばあちゃんに相談したら、残りの日は毎日近所の神社かお寺に行ってお参りしてきなさいって言う。

 

 「あと一日」


 無慈悲にも声が聞こえた。

 


 ここ最近わらにもすがる気持ちで、学校が終わって帰りに近所の神社でお参りしたけど、焦燥感は収まらず、明日に何が起こるのかわからない。最悪死ぬのだろうかと考えすぎた結果、怖すぎて外に出られなくなった。


 母にも事情を話したし、様子のおかしい私を見かねて家から出ないほうがいいと最後の一日、日曜日一緒に家に居てくれた。



「今日…」







 声が耳元でぼそりと聞こえた瞬間、息を吸い込んで叫び出しそうになったが、自分の後ろの食器棚の中の重ねてあるお茶碗が、五枚一気にがシャンと音を立てて割れた。びっくりして後ろを振り返った。


 母と私はびっくりして、見つめあった。

 

 落ち着いて、戸棚のガラス引き戸を開けてみると、お茶碗は全て綺麗に真っ二つ。誰も触れてないし、地震でも無い。それ以外のガラス戸も他の食器も無事だった。


 お茶碗は家族全員分だった。


 あの気持ち悪くて重苦しい空気だった数日は、何だったんだろう。それ以降声も聞こえず何も起きなかった。








 あの時はほんとに怖すぎて、眠れなくて目にくまができるほど悩んだ。自分の精神がヤバい病気にかかったのかとも思ったけれど、違ったようだ。


考察してみる。


 謎のおっさんのカウントダウンが始まったのが、二十歳前。


 小学校で流行した、二十歳の時に覚えてるとヤバい言葉集をいたずら好きな友人がメールの一通によくばりセットみたいに詰め詰めに羅列して送ってきたことがあった。


あの子は、不幸の手紙もチェーンメールで平気で送ってくるとんだサディストである。仲は凄くいいのに悪ふざけが過ぎるふしがある。冗談じゃない。


 メールを読んで速攻削除したのがいけなかったのか、それぐらいかな。きっかけになるようなものは思い出せない。


 割れた食器だけれど、もうお祓いも何もせずとにかく新聞紙ぐるぐる巻に包んでガムテープで留めて、ゴミ収集の職員さんが怪我しないように然るべき日に捨てた。


 食器が割れるのは縁起が悪いと聞いてたので、家族全員分割れたのには何か意味があるのではないか。

 私は食器が身代わりに割れたんじゃないかと思う。自分の身に何も起きなかったのはこれのおかげかもしれない。

  

 もちろん次の日近所の神社にお礼に行った。神社の神様は願いを叶える存在じゃなくて、陰日向にそっと見守ってくれるものとおばあちゃんが言ってたので、ご縁ができた事だし、無事だったお礼は必ず言いに行かないとと思い立ってすぐ行った。

 

 二十歳過ぎても、ことあるごとにお参りに行くのが当たり前みたいになった。手付かずの原生林が生えている歴史の古い神社だ。敷地が広いので歩いてていい運動になるし、空気も澄んでいて心地いい。お気に入りの場所だ。


 悪友には何も言わなかった。一言うと十返ってくるから。

今でも仲良く付き合いがあるがほんとにいい性格してる。こっそり探りを入れたが、彼女の身には何も起こってなかった。理不尽である。

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