6ページ目【ドッペルゲンガー】
6ページ目【ドッペルゲンガー】
寒い日の夜に赤い半纏を着た妹のドッペルゲンガーを見た。
また短い日記。
雪の降る寒い夜だった。父が懸賞でみかん箱を当てて、甘ものがすきな妹は、大喜びだった。
みかん箱はファンヒーターで暖まった部屋に置いておくと腐らせてはもったいないので、外気に近い玄関に置いておいた。
みんなみかんが欲しくなると、玄関まで取りに行くのがお決まりだった。
私がトイレに行って玄関の方を見ると、妹が赤い半纏を着た背中が見えた。電気を点けないでみかん箱をゴソゴソしている。
後ろ頭が、肩までの長さの黒髪は毛先が跳ねている癖っ毛の妹。背中を向けていても妹だとわかる。
「暗いところでみえるの?電気を点けたら良いのに〜。」
パチッ
玄関の灯りのスイッチを点けると、妹がこちらを振り返った。
髪型は一緒で顔は…みかん箱?黄色地に赤い文字でみかんとかいてある段ボール箱が透けて見える。
顔がない。髪型は妹なのに顔の部分がぽっかり無かった。
空洞のはずなのに、ニヤリと笑っているように感じる。冬の寒さじゃない凄く嫌な寒気がした。
玄関が冬の風でバンッとガタつく音が聞こえ、そちらの方を見るてから視線を戻すと、妹は消えた。
あんな一瞬で部屋にもどるだろうか?一本道なのに足音もしなかった。
びっくりしてリビングに入ると妹と弟は寝ていた。部屋がポカポカしたから二階には上がらず母の布団で寝ていた。半纏は着ていなかった。脱いだ跡さえなかった。
部屋にはみかんすら無かった。
妹のドッペルゲンガーを見たのだろうか。
本人がドッペルゲンガー見ると死ぬなんて学校で噂になってたけど、鉢合わせしなくて良かったと思う。